動物の同性愛
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同性愛(ホモセクシャル)という用語は1868年にカール=マリア・ケートベニー(Karl-Maria Kertbeny)によって造語されたものであり、本来人間の同性間に見られる性的感情および性行為を記述するためのものであった。動物について同性愛という用語を使用することには主に二つの理由から異論がある。動物の性および動物の性行動の動機となる要因についてはまだ十分には理解されておらず、また同性愛という用語には人間以外の種とは関係のない西洋の文化的含意が多く含まれているためである[3]。それゆえ同性愛的な行動には様々な名称が用いられてきた。動物の同性愛に関しては「ゲイ」や「レズビアン」といった語は使わず、専ら「ホモセクシャル」を用いる。「ゲイ」や「レズビアン」といった単語は人間の性行動に結びついたものと考えられるためである。
動物の選好および動機は常に行動から推測されるものである。したがって、長年にわたって、同性愛という用語は動物の同性愛的行動について用いられている。最近の研究では、同性愛という用語は同性の動物間のあらゆる性行動について使われている[4][5][6][7]。
研究
同性間の性行動は、同性間の性行動に対する社会の態度から生じた観察者の偏見のために、最近まで「公式には」大きな規模で観察されることがなかった。しかし、現在では同性間の性行動は社会性鳥類および哺乳類、特に海洋哺乳類および霊長類において広く観察されている。
同性間の性行動が刑務所内の性行動で見られる優劣関係に類似したオスの社会機構および社会的優位に起源があると考えている研究者もいるが、Joan Roughgarden、Bruce Bagemihl、Paul Vaseyのように、性の社会的機能は個体の優位とは必ずしも関係がなく、群れの中での連携および社会的結びつきを強化するのに役立っていると考える研究者もいる。さらに、機会があるにもかかわらずメスとつがいになるのを拒否し、電気的ショックで分かれさせようとしてもオスと生涯をともにするゲイのペンギンがいることを指摘して、社会機構理論に疑問を投げかける研究者もいる[8][9]。このような同性のつがいに関する報告はまだ裏付けに乏しいものにすぎないが、ヒツジのように単婚ではない種において恒常的なつがいの関係をもった恒常的な同性愛を確認する科学的研究[10] が増加しているのも事実である。
具体例
ニホンザルの場合、同性間の関係は、群れにより割合は異なるが、頻繁に見られるものである。メスは愛情のこもった社会的および性的な活動を特徴とする「求愛」を行う。関係の継続期間は数日から数週間まで様々だが、このような絆がメスの4分の1にまで見られる群れもある。また、このようなペアから強くて長続きする友好関係が生まれることもしばしばである。オスもまた典型的には同年齢の複数のパートナーとともに同性間の関係を持つ。このような関係はじゃれあいの多い愛情のこもった活動をともなう[11]。
ボノボでは、オスもメスも異性愛的および同性愛的行動を行う。特に注目すべきはメスの同性愛である。ボノボの性行動のおよそ60%は2頭以上のメスの間のものだ。ボノボの同性愛的結合システムはいずれの種においても知られている同性愛の中でも最も頻度の高い同性愛を示しているが、同性愛はあらゆる大型の類人猿について報告されていて、ほかの多くの霊長類もまた同様である[12][13][14][15][16][17][18][19][20]。
プエルトリコのサンティアゴ島に生息する野生のアカゲザルを観察した研究では、オスはメスよりもオス同士で多く性行動をおこなっていることが分かった。インペリアル・カレッジ・ロンドンの進化生物学教授であるヴィンセント・サヴォライネン氏らは、サンティアゴ島に生息する1700頭のアカゲザルからなるコロニーを観察し、そのうち236頭のアカゲザルのオスが行った性行動や血統について調査した。2017年、2019年、2020年の合計72日間、1日7時間以上アカゲザルの行動を観察したところ、236頭のオスのうちメスにマウンティングしていたのは46%で、72%がオスへのマウンティングを行なっていたことが分かった。研究者は遠くから観察していたため、実際にオスのペニスが相手のオスの肛門へ挿入されたかを目視で確認することはできなかったが、マウンティングされたオスの一部では肛門から精子を確認することができたという[21]。
アフリカゾウおよびアジアゾウのオスは同性間できずなを結び、マウンティングを行う。このような出会いはしばしば、キス、鼻のからみ合わせ、おたがいの口の中に鼻を入れるといった愛情のこもった相互行為をともなう。この出会いは異性愛の営みに類似したもので、オスはしばしば鼻を相手の背中に伸ばして、マウンティングしたいという意図を示す行為を目立たせる。常につかの間の性格の異性愛の関係と違い、オス同士の関係は1頭の年長の個体と1頭または2頭の年少の個体とで構成される「仲間づきあい」になる。同性間の関係はオス・メスのどちらにおいても広く頻繁に見られ、捕獲されたアジアゾウの場合性的出会いのおよそ45%が同性間の活動に向かっている[22]。
アメリカバイソンは同性愛行動を一般的にしめすウシ亜科の哺乳類である。オス同士の求愛、マウンティング、肛門への交尾器の挿入が記録されている。また、メス同士のマウンティングはウシではよくみられることである。さらに、間性のバイソンも存在する[23]。
キリンの場合、Bruce Bagemihlによると、交尾するつがいのうちの9割はオス同士である[24]。
ヒツジに関する2003年10月のCharles E. Roselli博士ら(オレゴン健康・科学大学)の研究によると、オスの同性愛(雄羊の8%で発見された)は「ヒツジ性的二型核」(oSDN)とよばれる雄羊の脳の領域と関連がある。同性愛を示すオスのヒツジのoSDNは異性愛のオスのそれの半分の大きさである。
「メスを好む雄羊のoSDNはオス指向の雄羊および雌羊のそれよりもかなり大きく、多くのニューロンを含んでいた。さらに、メス指向の雄羊のoSDNではテストステロンをエストラジオール(典型的なオスの性行動を促進すると信じられているエストロゲンの1種)に変換する酵素であるアロマターゼがより高い濃度で作用した。アロマターゼの作用はオス指向の雄羊と雌羊との間では違いがなかった」
「oSDNを構成するニューロンの高密度なクラスターはシトクロムP450にアロマターゼを作用させる。oSDN内のアロマターゼmRNAの濃度は雌羊よりもメス指向の雄羊においてかなり高かった。一方、オス指向の雄羊ではその中間の濃度で作用している」。この結果は「性的パートナーの好みの違いは脳の解剖学的構造およびそのエストロゲン合成能力の違いと関連がある」ことを示している[10]。
ただし、このヒツジ(この研究でサンプルとなったのは27頭)に関する研究では、2頭のオスがつながれていて2頭のメスがつながれていないという状態の檻のなかで、メスと交尾することができないオスで同性愛がみられたとしているが、この点に欠陥があるという見解が存在することは注意されるべきである。というのも、ヒツジの交尾は攻撃的な性格を持つので、オスとメスとで異なった扱いをすると、この研究結果は単にオスはメスと交尾できるほど攻撃的にはなれなかったことを証明しているにすぎないという見方もできるからである。さらに、この研究結果はまだほかの研究によって確認されていない。
シロトキのオスは、水銀の摂取によって同性のつがいを作ることがある[25]。その数は水銀の摂取量が多いほど増え、実験で0.3 ppmの水銀を含んだエサを与えられたグループは、55%のオスが同性とつがいを作った[26]。
