悲しい悲しい物語
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スタッフ
- 製作・監督 - ウィリアム・ハンナ、ジョセフ・バーベラ
- 作画 - ケネス・ミューズ、エド・バージ、アーヴン・スペンス、ルイス・マーシャル
- レイアウト - ディック・ビッケンバック
- 背景 - ロバート・ジェントル
- 音楽 - スコット・ブラッドリー
作品内容
とある鉄橋の線路上にて、鉄道自殺を図るボロボロのトムが、絶望の表情で座り込んでいた。それを上から哀れそうに眺めていたジェリーは、トム引き止めることなく諦めの色を浮かべていた。
「可哀想に。もう直ぐ何もかも終わって楽になれる。彼女と知り合ってからというもの、辛い毎日だったねぇ...。すっかり恋に窶れた惨めなその姿。人は何故君を助けなかったと聞くだろう。分かっているさ。でも止めない方が君の為だ。」
そしてジェリーはトムに何があったかを語りだす。
ある日、親友同士のトムとジェリーは仲良くジュースを飲み合っていた。その時、1匹の白い綺麗な雌ネコが現れた。彼女の容姿端麗な姿を見たトムは一目惚れしてしまい、頭が吹っ飛ぶほど変わってしまった。彼女の魅力に引き寄せられるトムをジェリーは必死で止めたが、既に手遅れだった。
それ以来トムは雌ネコの虜になり彼女の良い様にされてしまった。それでも「あんなに幸せそうなトムは見たことがない」とジェリーに言わしめるほどであった。
しかし、そんなトムの前に恋のライバルである金持ちネコのブッチが出現。ブッチも雌ネコに一目惚れし、トムから強引に彼女を奪った。
ライバルの出現にトムは燃えた。勝ち目のない恋愛をジェリーは必死に止めようとするも、トムは全く聞き入れなかった。トムはプレゼントで雌ネコの気を惹こうとするが、1輪の花を渡そうとすれば大量の花束が、小さな香水を渡そうとすればタンクローリー2台分の香水が贈られていた。ブッチから贈られた豪華なプレゼントには全く及ばない。ついには全財産を費し、アリより小さなダイヤを買ったが虚しく光る指輪に対しブッチから渡されたのは比べ物にならないほどの大きさと輝きを放つもの。プレゼント作戦は尽く失敗に終わった。この地点でトムの敗北は決まっていたのだ。
それでも諦めないトム。貯金の次に人生を捨て、「312か月払い」「利率112%」「担保は自らの手足」「奴隷制に20年従事」などあらゆる契約にサインをし、ようやく手に入れたのは今にも壊れそうな中古車。しかし、それもブッチの操る高級オープンカーにトムごと轢き潰される。こうして彼女は益々ブッチ一筋になっていき、トムの努力は全て徒労に終わった。
それ以来、ジェリーの懇願も虚しく、絶望のどん底に落ち、別人になってしまったトムは酒浸りではなく「ミルク浸り」の日々を過ごす。遂には泥酔した状態で水に流され排水溝に落ちていった。そんなトムを放っておけるはずもなく、ジェリーは急いでトムを救出、介抱する。そんな時、2匹を尻目にブッチと雌ネコはオープンカーに乗って通り過ぎていった。
「そして彼女は結婚してしまった。そう、悲しい話さ。打ちのめされた猫の悲しい物語。」
すべてを語り終えたジェリーはトムを憐れみつつも「誰もが僕みたいに彼女がいるわけじゃない」と恋人の写真を眺めて物思いに耽っていた。自身には心から愛す恋人がいるから平気だ。そう思っていた。しかし......。
「結婚しました...だってぇ......!?」
突然通り過ぎた小さい車には、ジェリーの恋人と灰色の雄ネズミが乗っていた。そう、何とジェリーの恋人も別のネズミと結婚してしまったのだ。
変わらず絶望の表情で線路上に座り込むトム。その隣に一緒に座るのは、恋人・親友・生き甲斐を失って窶れたジェリー。惨めな2匹が並んで列車を、そして自殺を待つ姿がそこにあった。
そしてそんな2匹を憐れむかのように、迫り来る列車の汽笛が鳴り響き、その音は徐々に大きくなるのであった。
ここで画面はフェードアウトし、物語は幕を閉じる。