歪んだ波紋

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発行日 2018年8月7日
発行元 講談社
ジャンル 連作短編集
歪んだ波紋
著者 塩田武士
発行日 2018年8月7日
発行元 講談社
ジャンル 連作短編集
日本の旗 日本
言語 日本語
形態 四六判変型
ページ数 282
公式サイト bookclub.kodansha.co.jp
コード ISBN 978-4-06-512351-5
ISBN 978-4-06-526035-7(A6)
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歪んだ波紋』(ゆがんだはもん)は、塩田武士の連作短編小説集[1]。『小説現代』(講談社2017年5月号から2018年2月号に掲載の4篇に書き下ろし1篇を加え、講談社より単行本が2018年8月9日[2]講談社文庫2021年11月16日に発売された[3]。現役やかつての新聞記者を主人公に誤報にまつわる5つの物語を描いた社会派小説。第40回吉川英治文学新人賞受賞作品[4]

2019年11月にNHK BSプレミアムテレビドラマ化された[1]

本作は誤報を主要テーマとしており、それぞれの短編は誤報ともうひとつのテーマに沿った形で物語が展開されている(「黒い依頼」:誤報と虚報、「共犯者」:誤報と時効、「ゼロの影」:誤報と沈黙、「Dの微笑」:誤報と娯楽、「歪んだ波紋」:誤報と権力)。塩田はインタビューで「この作品を通して描きたかったのは“人間の弱さ”。書き終えた今、誤報を描くことは人間の弱さを描くことと同じことなのではないかと思う。誤報を容認することはできないが、誤報そのものを問題視しなかったことにも人間の弱さがあるように感じる」と語っている[5] 。各短編のタイトルは松本清張作品を意識したものと塩田は述べている[6]

収録作品

  1. 黒い依頼(「ペン先の行方」改題、初出:『小説現代』2017年5月号)
  2. 共犯者(「煙の向こう」改題、初出:『小説現代』2017年9月号)
  3. ゼロの影(初出:『小説現代』2017年11月号)
  4. Dの微笑(初出:『小説現代』2018年2月号)
  5. 歪んだ波紋(書き下ろし)

あらすじ

黒い依頼
沢野政彦はデスクの中島から、ひき逃げ事件の追跡調査を依頼される。元は桐野が犯行車両の写真をスクープしたもので、その車両が被害者宅にあるという情報が寄せられたのだ。被害者の妻・美咲に、沢野は暗に「あなたが夫をひき殺したのか」という疑惑をぶつけるが、亡き夫を偲ぶ姿にネタの信憑性を疑い始める。その後の調査で、メイクニュースというフェイクニュース作成の指南サイトに書かれたテクニックを使い、中島と桐野が共謀して常習的に虚報を作り出していたことがわかる。
中島を問い詰めると、上層部からのプレッシャーと全国紙へのコンプレックスから虚報に手を染めていたと認める。仕事熱心ではない沢村に取材させることで記事自体をうやむやにできるのではないかと考えたという。虚報で被害を受ける人間がいることに無関心な中島に憤りを感じると共に、今までの自分の態度を反省する。虚報問題はその後、ウェブニュース「ファクトジャーナル」にスクープされ、近畿日報は世間からの批判にさらされることとなる。沢村は美咲に謝罪し許しを得るが、自分に悪印象を与えないよう表面的に取り繕っているだけだと気づき、記者という仕事の恐ろしさを痛感する。
共犯者
相賀正和は、自殺した同期の垣内の元妻から遺品整理を頼まれる。資料を持ち帰り調べると、ほとんどが30年前のサラ金の社会問題に関するもので、垣内が閑職に追いやられた際に、起死回生を狙い相賀と共に追い始めたネタだった。自殺する2日前に相賀の留守番電話に「連絡がほしい」と残していたことからも、垣内が死んだ理由がこの中にあるのではと考える。火事で焼死した赤西峰子という女性との関連に気づき調査を進めた結果、峰子は垣内の誤報が原因で教職を追われた末、金に困り犯罪に手を染めて服役していたことがわかる。相賀は、誤報の元となるネタを垣内に渡したのは自分であったことを思い出し、自責の念に苛まれる。
その後、垣内のスマホからは峰子とのメッセージのやりとりがみつかる。峰子は垣内からの謝罪を受け入れたかに見えたが、やがて金を無心し始めた。峰子の後ろで糸を引く人物の存在や、垣内もそれに気づいていながら罪悪感から闇金に借金してまで金を渡していたことがうかがえる。垣内は一体何を伝えようとしたのか、相賀は記者として納得するまで追及しようと決意する。
ゼロの影
野村美沙は女子トイレを盗撮した男が取り押さえられる現場を目撃する。数日後、娘の杏が保育園で仲良くしている男児の父親としてその男が現れる。新聞記者である夫の新一に相談しても、警察には盗撮事案の記録がないと言いあまり深刻に取り合ってもらえない。美沙は自ら調査を始め、新聞社には男が逮捕されたという原稿があるのに、途中で別の記事に差し替えられていたことを突き止める。さらに、男がマスコミ各社が重宝しているネタ元である弁護士・正田則夫の二男であると知り新聞各社が忖度して報道しなかったのだと合点がいくが、対立する立場にある警察にも記録が残っていないことには疑問が残る。
美沙は正田の事務所に乗り込み、事件のもみ消しについて問いただす。正田は警察幹部と記者が飲酒運転で取り締まりにあった際に撮られた映像を入手しており、それと相殺された結果だという。その飲酒運転をした記者は新一だった。だが、美沙は新一に自分が事実を知ったことを告げられない。新一が思い余って会社を辞めたりすれば、生活がたちゆかなくなるからだ。真実を捻じ曲げ隠したままでいることと、何があっても娘だけは守りたいという気持ちの間で葛藤する。
Dの微笑
吾妻裕樹は安田から、日本に潜伏中と噂される安大成の調査を依頼される。最初にその真偽を報じた『よろず屋ジャーナル』について調べる過程で、この番組が特集した俳優・谷垣のセクハラ問題がヤラセだと気づく。その矢先、特集に携わった構成作家・香山が谷垣に刺されたという情報が入る。これをスクープとして報道しようと考えた吾妻は番組ディレクターの和泉に、番組でヤラセが常態化していることを認めさせる。安大成の特集も香山の捏造だった。さらに香山が刺されたというのもガセだと聞かされ、自らもあやうく誤報を出すところだったことに吾妻は肝を冷やす。
その後、過去に安田と香山に繋がりがあったことがわかり、安田を問い詰めると安大成を炙り出すために仕組んだものであることを認める。安の周辺で動いていた巨額の闇の金を狙ったものだった。自分を利用した安田に与するのは癪だが、捏造報道があったことは事実であり記者として報道しなければならない。だが、新聞には載せられない安田の企みや安大成との関係については、以前からスパイとして情報を提供している『ファクトジャーナル』で書けばいい。吾妻はそう考えほくそ笑む。

登場人物

黒い依頼
沢村政彦さわむら まさひこ
近畿新報記者。過重労働や旧態依然とした新聞社の社風に嫌気がさし、最低限の仕事だけを行うようになった。
桐野弘きりの ひろし
5年前全国紙「大日新聞」から近畿新報へ移籍してきた。移籍後もスクープ記事を連発。ウェブ・メディアにも精通している。近畿新報が他紙との差別化を図るため立ち上げた「プロジェクトIJ[7]」という調査報道チームのメンバー。
中島有一郎なかじま ゆういちろう
近畿新報社会部デスク。プロジェクトIJメンバー。
森本美咲もりもと みさき〈32〉
ひき逃げ事故で死亡した被害者の妻。
共犯者
相賀正和あいが まさかず〈65〉
元・大日新聞記者。定年退職後は、悠々自適の一人暮らしをしている。
垣内智成かきうち ともなり
相賀の大日新聞時代の同期。
ゼロの影
野村美沙のむら みさ
朝鮮語の語学学校の講師。元大日新聞記者。父の仕事の関係で韓国で小学生時代の4年間を過ごし、ソウルへの留学経験もあるため朝鮮語が話せる。保育園に通う娘がいる。
野村新一のむら しんいち〈37〉
美沙の夫。大日新聞経済担当記者。
正田則夫しょうだ のりお〈66〉
弁護士。数々の事件でマスコミに便宜を図ってきたことからネタ元として重宝されている。
Dの微笑
吾妻裕樹あづま ゆうき〈42〉
近畿新報上岡総局デスク。中島有一郎とは同期。
安田隆やすだ たかし
近畿新報東京支社長。吾妻が記者として尊敬する恩人。在日2世で、安大成とは親戚関係にある。
香山久男かやま ひさお
『よろず屋ジャーナル』構成作家。元劇団員。同じ劇団の後輩で人気俳優の谷垣に嫉妬し嫌がらせをしたり、劇団女優へセクハラをしたことなどから孤立し劇団を去った過去がある。
安大成アンデソン
在日韓国人。「闇社会の帝王」の異名を持つ大物事件師。裁判中に韓国で謎の失踪を遂げた。

書誌情報

テレビドラマ

脚注

外部リンク

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