アドーニス

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ピーテル・パウル・ルーベンスの1635年の絵画『ヴィーナスとアドニス』。メトロポリタン美術館所蔵。

アドーニス古希: Ἄδωνις, ラテン文字表記:Adōnis)は、ギリシア神話に登場する、美と愛の女神アプロディーテーに愛された美少年。ポイニーケーの王キニュラースとその王女であるミュラーの息子[1]

長母音を省略してアドニスとも表記される[1][2]。彼の名は、美しい男性の代名詞としてしばしば用いられる[3]

神話の舞台となる場所がギリシア以外であり、元来は非ギリシア系の神話の人物である[1]。元々アドーニスという名はセム語で「主」を意味するアドーン (Adon) が語源であり、本来はバビュローニアータンムーズ神と同じ神で農耕神だった[4]ビュブロスパポスにおいて信仰されていた[2][5]。アドーニスは収穫の秋に死んで、また春に甦って来る。アプロディーテーが冥府の女王ペルセポネーとアドーニスを頒つのは、植物の栄える春夏と、枯れて死ぬ冬との区別である[6]

神話

ティツィアーノ・ヴェチェッリオの1554年の絵画『ヴィーナスとアドニス』。プラド美術館所蔵。

キニュラースはパポスにおけるアプロディーテー・アスタルテー崇拝の創建者であった[7]。しかし、王女ミュラーはアプロディーテーへの祭を怠ったため女神はミュラーが実の父であるキニュラースに恋するように仕向けた[8]。父親を愛してしまったミュラーは、乳母の仲介で別の女を装い父と12夜にわたって床を共にした[8]。しかし、その後、父に娘だと知られてしまい、怒った父は彼女を殺そうとしたが、神々に祈ってミュラーは没薬(スミュルナー)の木に変身した[8]

やがて、月満ちてその木の幹からアドーニスが生まれた[8]。そして、そのアドーニスがとても可愛かったためアプロディーテーは赤ん坊のアドーニスを箱の中に入れると、神々に秘して冥府の王ハーデースの妻で、冥府の女王のペルセポネーの所に預けた[8]。しかし、ペルセポネーは密かに箱の中を覗き見てしまった[8]。すると、その中には美しい赤ん坊のアドーニスが入れられていて、彼を見たペルセポネーもアドーニスを自分のものにしたくなった[8]。そのためアプロディーテーが迎えにやって来てもペルセポネーはアドーニスを渡そうとしなかった[8]。2柱の女神は争いになり、ゼウス(あるいはゼウスに命じられたカリオペー[4])の審判により、1年の3分の1はアドーニスはアプロディーテーと過ごし、3分の1はペルセポネーと過ごし、残りの3分の1はアドーニス自身の自由にさせるということとなった[8]。しかし、アドーニスは自分の自由になる期間も、アプロディーテーと共に過ごすことを望んだ[8][9]

その後、アドーニスは狩りの際にアルテミスないしアレース(またはヘーパイストスないしアポローン)の怒りに触れてに突かれて死んだとされる[4]

やがてアドーニスの流した血から、アネモーネーの花が咲き、彼の死を悼むアプロディーテーの涙からは薔薇が生まれたとされる[10][4]。また、女神の願いによりアドーニスは毎年4ヶ月間地上に蘇ることをゼウスに許されたともいわれる[11]

脚注

参考文献

関連項目

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