ブルネロクチネリ (ブランド)
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種類 | Società per azioni |
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| 市場情報 | BIT: BC |
| ISIN | IT0004764699 |
| 業種 | ファッション |
| 設立 | 1978年 |
| 創業者 | ブルネロ・クチネリ |
| 本社 | 、 |
事業地域 | 全世界 |
主要人物 |
ブルネロ・クチネリ(代表取締役会長) カミッラ・クチネリ(副社長) カロリーナ・クチネリ(副社長) |
| 製品 | 服飾 |
| 売上高 |
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営業利益 |
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利益 |
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従業員数 | 2,623[2] (2023) |
| ウェブサイト | 公式ウェブサイト |
ブルネロ クチネリ(Brunello Cucinelli S.p.A.)は、同名の創業者により1978年に設立され、イタリア・ウンブリア州ペルージャ県ソロメオ村に本拠地を置き世界各国で展開されている、カシミア衣料を中心とした高級ファッションブランドである。女性・男性向け衣料のほか、カシミア製品、アクセサリー、ライフスタイルコレクションの設計、製造および販売を行う[3]。本国における同社の発音は「ブルネッロ クチネッリ」(イタリア語発音: [bruˈnɛllo kutʃiˈnɛlli])[注 1]。
伝統的なクラシックスタイルをベースに、カシミアをはじめとした最高峰の素材とイタリアの誇るアルティジャーニによる高度な職人技、そしてスポーティかつコンテンポラリーな独自の感性を融合した、最高峰の素材を用いながらも上品でリラックスしたイタリアンスタイル、いわゆる「スプレッツァトゥーラ」[4]を体現した製品作りが特徴で、本物の高級感や品格を静かに示す「クワイエット・ラグジュアリー」の代表的なブランドとも目されている[5][6][7]。
同社の製品はその多くが、高級ブランドと呼ばれるなかでも最高価格帯に位置しており[8]、1978年創業と歴史がまだ浅く売上高も比較的小規模ながら、今日ではイタリアンラグジュアリーの頂点と考えられており[9][10]、19世紀前半に設立されたエルメス(フランス)と並び、上位富裕層を主な顧客とする最高級ブランドとして格付けされている[11][12][13]。

1978年、創業者であるブルネロ・クチネリ[14]はイタリア中部ペルージャ近郊の村エッレーラ・ディ・コルチャーノに小さなニット会社を開業[15]。同社はニットの中でもベルベットのような肌触りで長持ちのするカシミア素材に着目し、捨てられることなく代々引き継がれるような高品質なカシミア製品作りを始めた[15]。当時カシミア衣料は紳士向けの地味な色合いの製品が多い中、同社は女性向けのカラフルなセーターを市場に売り出し、当初ドイツを中心にヨーロッパでヒット[14]。高級素材を明るい色合いでモダンに着こなせるアイテムとしてファッション性を高めることで世界中で大ヒットし、その名が知られるようになった[14]。
1985年より、創業者の妻の故郷でもあるペルージャ県ソロメオ村に本社を構えており、工場の建設をはじめ、古城や教会や道路の補修、ブドウ畑作りなど、寂れていたソロメオ村の復興に務めた[16]。現在では、ルネサンス様式を取り入れた小規模劇場や、高級ワインを醸造するワイナリー、職人を育成する工芸学校を設立するなど、村におけるクチネリの運営は多岐にわたり、ソロメオ村全体がクチネリ本社とも言えるその地理的な景観と人道的な#企業理念から、同社は「世界で一番美しい会社」とも称されている[17]。
ブランドロゴは、イタリアの芸術文化遺産、人間の尊厳、時代を超越した贅沢を象徴しており、力強さや守護や高貴さを象徴する、塔の上に鎮座した「フィロ」(Philo)と呼ばれるグリフォーネの紋章[18]、そしてその下には"Solomei ad MCCCXCI"(ソロメオ村の創設年1391年)と記され、「BRUNELLO CUCINELLI」の社名は、古代ローマの石碑文字であるキャピタル・モニュメンタリスによって綴られている。
世界のセレブリティに多くの愛用者がおり、婚約発表写真で同社のニットを着用した英国王室のウィリアム王子[19][20][21]をはじめ、モナコ公国のシャルレーヌ公妃[22]とその子女のジャック公世子[23][24]やガブリエラ公女[25]、スペンサー伯爵家のレディ・キティ[26]とレディ・アメリア[27]、ヒルトン・ロスチャイルド家のニッキー・ヒルトン・ロスチャイルド[28]など、由緒ある富裕層(オールドマネー)はクチネリを好む重要な顧客として知られている。そのほか、黒のハイネックセーターを愛用した故スティーブ・ジョブズや、グレーのTシャツを愛用したマーク・ザッカーバーグをはじめ、ジェフ・ベゾス、マーク・ベニオフなどといったシリコンバレーの億万長者に代表されるような、静かな高級感を求める新興富裕層(ニューマネー)からも人気を集めている[29][30]。
歴史

創業者であり同社クリエイティブ・ディレクター(デザイナー)を務めるブルネロ・クチネリは1953年、イタリア・ウンブリア州カステルリゴーネに生まれた。貧しい農家で家には電灯もなかったが、豊かな自然の中精神的には充足した環境で育つ。後に父親は農業を辞めて都会の工場で働きはじめたが、劣悪な労働環境と侮辱的な処遇に傷つき家族の前で泣く姿を見て、創業者は後に「人間主義的資本主義」を志すようになる[31]。測量士になる高校を経て大学の工学部に進学するが、交際していた現在の妻フェデリカ・ベンダが洋服店を経営していた影響で服飾産業に興味を持つようになり大学を中退し、1978年会社を設立した[31]。
1982年、フェデリカとの結婚を機に妻の故郷であるペルージャ県ソロメオ村に移住[31]。当時ソロメオ村は人口500人ほどの過疎が進んだ寂れた村だった[32]。1985年、14世紀に建てられた古城を購入し修復して改築し本社もソロメオ村に移転[15]。以降、創業者はソロメオ村の復興に挑み、私財も投入して[33]工場の設立や教会・道路の修復、ブドウ畑を作るなど、ブランドの成長と共に村の経済の活性化にも務めた[14]。
2001年に古代ローマの公共の広場フォルムに倣い、劇場や庭園、図書館を含む複合施設アートフォーラムの建設プロジェクトをスタート、2008年に完成[14][32]。 2010年、創業者の理想を広めることを目的とした「ブルネロ&フェデリカ・クチネリ財団」を設立[14]。同年、創業者はイタリア大統領よりイタリア共和国功労勲章を受章、ペルージャ大学からは「人間関係の哲学と倫理学」の学科で名誉学位が授与される[14]。
2012年、同社はミラノ証券取引所で株式上場を果たした[31]。
2013年、カシミアニット職人の技術を継承させるため、ソロメオ村に職業訓練校である現代高度芸術工芸学校を設立[34]。学費は奨学金で免除され、生徒たちには給与も支給される。さらに卒業後、同社に就職することは入学条件ではないという[32]。
2014年「Project for Beauty(美のプロジェクト)」と題し、ワイナリーや果樹園、サッカー場、モニュメントを併設した広大な公園の復興事業を開始し、2018年に完成[31][32]。
ラグジュアリーブランドにカシミア糸・高級ウール糸を販売するイタリアの紡績メーカー・カリアッジ社(Cariaggi Lanificio s.p.a.)[35]との結びつきは強く、2022年同社株式の43%を取得(カリアッジ家が51%株式を所有)。2023年にはシャネルと協定し、カリアッジ社の49%の株をブルネオクチネリとシャネルで24.5%ずつ保持する共同契約を結んだと発表した[36]。
2023年12月には、同社の好調な業績により、イタリア証券取引所に上場する上位40銘柄で構成されるFTSE MIB指数にCNHインダストリアルと入れ替わりで組み入れられた[37]。また同年には、創業者がフランス・パリでニーマン・マーカス賞を受賞[38]。2024年にはアメリカ・ニューヨークでWWD ジョン B. フェアチャイルド賞を授与された。これらの賞では企業家としての成功だけでなく、同氏のイタリア・ソロメオ村の復興事業はじめ数々の慈善事業への継続的な取り組みも評価された[39]。
経営
企業理念
ブルネロクチネリは、長く使い続けられることが少ないトレンドや流行品を生み出すことには関心を払わず、製品が末永く愛用されるために、創業以来美しさと品質を追求してきた[40]。品質の高さは普遍的な価値であり、美しさは時流と一線を画す、人間の本能に訴えかけるものだからである[40]。
また同社では、労働者の「人間の尊厳を保つこと」、創業者曰く「人間主義的資本主義」をブランドポリシーとして掲げる[13][33]。そのポリシーや製品のクオリティを左右する職人を大切にするため、同社の賃金はイタリアの平均賃金よりも高い[32]。高い給与をもらうことで職人がより良いメンタリティーで仕事をすることができるのだという[41]。職人のみならず、同社社員はホワイトカラーとブルーカラー問わず世界水準を上回る賃金が支給され、創業者の理念により労働者の残業や働きすぎを否定し、従業員に家族と過ごす時間を大切にすることを推奨している[42]。そのため同社はイタリアの若者の希望する就職先企業でナンバーワンに選ばれたこともある[43]。
家族経営
同社はLVMHやケリングのような巨大ラグジュアリーグループ(コングロマリット)に属さず、家族経営による独立企業を貫いている。創業者ブルネロ・クチネリには妻フェデリカ・ベンダのほか、長女カミッラと次女カロリーナという二人の娘がおり、二人ともソロメオ村に住み同社で働いている[31]。2020年以降、カロリーナは父親とともにブルネロクチネリの共同クリエイティブディレクター兼共同プレジデントを務め、カミッラはウィメンズコレクションのデザインを共同指揮している[44][45]。2024年の取締役会で、カミッラとカロリーナは副社長に就任した[46]。また2026年現在、カミッラの夫であるリッカルド・ステファネッリは同社のCEOを務め、カロリーナの夫であるアレッシオ・ピアストレッリは同社メンズコレクションのチーフディレクターを務めている[47]。
2014年6月に創業者は娘たちへの確実な財産の継承と同社の慈善事業の継続のために信託を設立、創業者が持株会社を通じて所有する全ての自社株式を信託会社エスペリア・トラスト・カンパニーに譲渡することを発表[48][49][50]。2018年のインタビューで創業者は「これからも家族経営を維持したい。経営や管理は必ずしも家族で行う必要はないが、ブランドが築いてきた資産は家族で受け継ぐべきだ」と話した[51]。
グローバル市場展開
ブルネロクチネリの2023年売上高は11億3942万ユーロ(約1738億円)を超え、売上の約8割は海外市場から生み出されている[52]。同社は世界中にブティックを展開し、2023年12月末現在で同ブランドの直営店・専売店は152店舗ある[53]。直営店はヨーロッパ諸国、北アメリカを中心に、アジアでは中国本土・香港・マカオ・台湾などの中華圏、日本、韓国、中東諸国、ブラジルなど世界各国に存在する[54]。
同社は海外市場展開に伴い着実に売上を伸ばしてきた。2019年に設定した「売上高を5億5500万ユーロ(約882億円)から2028年までに倍増させる」という10か年計画は、2023年の売上高は11億ユーロ(約1738億円)を超えたことで5年前倒しで達成し、低迷しているといわれるラグジュアリーブランド業界で注目される存在となった[55]。これは、中産階級や下位富裕層からの支出が世界的に鈍化するなかでも、同社のメインターゲットである超富裕層からの支出が引き続き堅調であることに起因すると見られている[12]。
同社の地域別売上比率は、株式市場に上場した2012年末はイタリア含むヨーロッパが約57%、北アメリカが約32%で、中華圏と日本を含むその他地域は合わせて約10%と圧倒的に欧米諸国の比重が高かった[56]。しかし海外展開の成功と売上金額の増加に伴い、2023年末にはイタリア含むヨーロッパは約37%と全体に占める売上比率は相対的に下がり、中華圏と日本を含むアジア地域が全体に占める割合は約26%と大幅に上がっており、今後のアジア市場の伸びに注目が集まっている[53]。特に中国では、2023年に創業者がGQ Chinaのデザイナー・オブ・ザ・イヤーを受賞するなど[57]本ブランドの注目度は高まっており、専門家によれば、同国における超富裕層のステータスシンボルにさえなっているという[58]。
製品


ブルネロクチネリは、「ジェントル・ラグジュアリー」(Gentle Luxury)という製品コンセプトを提案しており、これは「節度のある美」を意味し、「過剰になることなく、敬意、美しさ、創造性を表現する普遍的な価値観」であり、「内面の調和が『節度』を生み、『美』は英知によって削ぎ落とされた簡潔なものであり、勇気や強靭さと一体のもの」と考えている[6][59]。また、イタリアでの生産(メイド・イン・イタリー)を信条とする[60]。
カシミアなど原毛の糸から職人によって編みたてられたニットが主力商品である。繊細なモニーレ(真鍮に金属メッキを施したボールチェーン)と呼ばれる装飾、スパンコールの装飾や手刺繍など、高度な職人技が施されているのが特色[61]。最高品質のカシミアの原毛を選別するため、創業者はイタリアの紡績会社のカリアッジと年に1度、カシミアの産地であるモンゴルと中国を訪れている[14][62]。
主力商品であるニットウェアのほか、コート、ジャケット、レザー衣料、スーツ、ドレス、シャツ、ブラウス、ズボン、アクセサリー、その他の革製品などを製作・販売している[3]。2014年にはホームアクセサリーを扱うライフスタイルコレクションを発表[63]。2021年にはオリバーピープルズと提携してコラボレーションアイウェアの販売を開始し[64]、翌年にはその延長として親会社のエシロールルックスオティカと再提携して[8]、2024年にブランド単独でのアイウェア販売を本格始動させた[65]。2023年にはユーロイタリア社と提携してフレグランスの販売を開始した[66]。
ブルネロクチネリはすべての製品において最高品質を追求しており[67][68]、主力のカシミア製品やプレタポルテだけにとどまらず、例えばアイウェアでは、メイド・イン・イタリーにこだわりながらもアセテートやチタンなどの素材には高品質で名高い日本製が使用されており[69]、フレグランスは、オリヴィエ・クレスプやアルベルト・モリヤスといった一流のパフューマーによって調香されている[70]。
日本での販売
日本への本格上陸は今世紀に入ってからとごく近年のことであり、2011年に日本での流通販売を行うブルネロクチネリジャパン株式会社が設立された[14]。2015年より同社代表取締役社長に就任した宮川ダビデは父親が日本人[注 2]、母親がイタリア人のハーフである[71]。
日本の販売店
- 2003年、伊藤忠商事が独占輸入契約を結び、全国の大手百貨店・専門店を中心に流通を始める[72]。
- 2009年、東京青山に日本初の直営店をオープン[14]。
- 2011年3月、神戸市に関西初の直営店をオープン[73]。
- 同年11月、伊藤忠商事との合同出資により日本での流通販売を行うブルネロクチネリジャパン株式会社を設立[14]。
- 2013年、三号店となる玉川店を玉川髙島屋SC西館にオープン[74]。
- 2015年、東京銀座6丁目にフラッグシップショップをオープン[75]。
- 2021年、表参道店をオープン。地上2階地下2階の4層からなる国内最大級の店舗となった[76]。
アウトレットモールでの販売
ブルネロクチネリの製品は非常に高価なことで知られているが、エルメスとは異なり、アウトレットモールへの出店は許可されている。日本国内におけるアウトレットモールへの出店は以下の通り。
- 三井アウトレットパーク 木更津(千葉県木更津市)
- 御殿場プレミアム・アウトレット(静岡県御殿場市)
- 軽井沢・プリンスショッピングプラザ(長野県軽井沢町)
- 三井アウトレットパーク ジャズドリーム長島(三重県桑名市)
- 神戸三田プレミアム・アウトレット(兵庫県神戸市)
日本での慈善事業
創業者のクチネリは、「イタリア以外で最初に知るべき国があるとすれば、それは日本だといつも言っています。生まれた国以外で住むとしたら日本しかない。本当に、ほかに例がない国だと思うからです」[77]と述べるほどの親日家で、相互尊重の精神性[78][79]など「日本文化から多くの影響を受けてきた」[注 3]と公言しており、その「お礼」として日本で度々慈善事業を行っている[80]。