魔力の胎動

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発行日 2018年3月23日
発行元 KADOKAWA
魔力の胎動
Laplace's movement
著者 東野圭吾
発行日 2018年3月23日
発行元 KADOKAWA
ジャンル サスペンスミステリ
日本の旗 日本
言語 日本語
形態 四六判並製
ページ数 320
前作 ラプラスの魔女
次作 魔女と過ごした七日間
公式サイト www.kadokawa.co.jp
コード ISBN 978-4-04-106739-0
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魔力の胎動』(まりょくのたいどう)は、東野圭吾連作短編小説「ラプラスの魔女」シリーズの第2作。

謎の少女・羽原円華が「ラプラスの悪魔」の力を駆使し、悩みを抱える人々に救いを与える『ラプラスの魔女』へと繋がる前日譚。
[ep 1][ep 2][ep 3][ep 4][ep 5]

小説 野性時代』(KADOKAWA)2015年6月号から2018年1月号までに掲載された4編に書き下ろしの表題作を加え、2018年3月23日に同社から単行本が刊行され[1]、2021年3月24日に角川文庫版が刊行された[2]

あらすじ

第一章 あの風に向かって翔べ
鍼灸師の工藤ナユタは、長い不調に苦しむ往年の名スキージャンパー坂屋幸広が引退を決意したと知る。坂屋は最後は表彰台に立ち、幼い息子に父の勇姿を見せたいと願っていたが、現実には優勝は奇跡に近く、本人も周囲も望みを諦めかけていた。そんな中、謎の少女・羽原円華が坂屋の不調の原因を言い当て、自分の助言に従えば必ず勝てると告げる。やがて坂屋の引退試合の日が訪れ、運命を懸けた挑戦が始まろうとしていた。
第二章 この手で魔球を
投手・石黒達也は、投げた本人すら変化を予測できない「魔球」ナックルボールをフルタイムで操る唯一無二のプロ野球選手だった。しかし、その球を受け止められるのは捕手・三浦勝夫ただひとりに限られていた。やがて三浦は両膝の故障と身体の限界から引退を考えるに至り、後継者育成を急ぎ若手の山東を選んで指導を始める。ところが山東は公式戦でパスボールを連発したことを契機に「捕球イップス」に陥り、捕手としての自信を失ってしまう。三浦は後継者を育てられなかったことを悔い、石黒も相棒の引退を前に自らの引退を覚悟するが、そのとき謎の少女・円華が現れ、山東を立ち直らせるための計画を二人に持ち掛ける。
第三章 その流れの行方は
ナユタは街で偶然、高校時代の旧友・脇谷に再会し、恩師・石部の息子が川で溺れ植物状態で入院していることを知らされる。ナユタは石部の息子の入院先が円華の父が勤める開明大学病院であることを知り、円華に事情を確認する。石部の妻は息子の現状を受け入れつつある一方、石部自身は事故から1年以上病室を訪れず、毎月事故が起きた日に水難事故が発生したキャンプ場を訪れていた。ナユタと脇谷が現場で石部に会うと、二次災害を恐れて妻を止めた自身の判断が正しかったのか悩み、答えを求めて現場に通っていると語る。この話を知った円華は石部の行動に怒りを抱き、息子や石部を救うための「実験」に踏み出す。
第四章 どの道で迷っていようとも
ナユタは患者である天才ピアニストで作曲家の朝比奈一成から、長い間ピアノを弾いていないと聞かされる。朝比奈の絶望の原因は、パートナーである尾村勇の突然の死にあった。尾村は崖から飛び降り自殺したらしく、その原因を朝比奈は自分の同性愛のカミングアウトによる世間の偏見のせいだと考えていた。朝比奈は視覚障害を持つため、音楽関係者や親しい人々との関わりの中で偏見に直接晒されることはなかったが、健常者の尾村は社会の目に耐えられず自殺に至ったと見ていた。ナユタから朝比奈の状況を聞いた円華は、彼を立ち直らせるために尾村の死の真相を探るが、円華の行動には別の思惑が隠されていた。
第五章 魔力の胎動
泰鵬大学地球科学科の教授・青江修介は、D県警から赤熊温泉で起きた硫化水素中毒事故の原因究明と再発防止策の相談のため、突然連絡を受ける。依頼の背景には、青江が3年前に灰堀温泉で同様の事故に関わり、その際の活躍がJ県警から伝えられていたことがある。青江は警察の期待に応え、科学的知見をもとに調査に着手することを決意する。そんな青江の脳裏には、灰堀温泉での事故に隠されていた予想外の真実が鮮明に蘇る。

登場人物

主要人物

羽原 円華(うはら まどか)
「ラプラスの悪魔」の力を手に入れた謎の少女[ep 1][ep 2][ep 3][ep 4][注 1]
ナユタ / 工藤 那由多(くどう なゆた)
スポーツ選手や著名な音楽家などを顧客に持つ鍼灸師[ep 1][ep 2][ep 3][ep 4]。坊主頭で髭を生やしている。
高校時代は不登校ながら恩師・石部の尽力で卒業し、医大に進学するも後に師匠となる鍼灸師と出会い中退、鍼灸師の道を歩む。
現在は東京を拠点に、80歳を超え高齢で動けなくなった師匠の顧客を引き継ぎ、依頼があれば日本全国を出張し施術をおこなっている。
本名は工藤京太(くどう けいた)だが、中学時代のある出来事を通して那由多と名乗るようになる。

円華の関係者

羽原 全太朗(うはら ぜんたろう)
円華の父親[ep 1][ep 3][ep 4]。開明大学病院の脳神経外科医。脳神経細胞再生研究の第一人者。
羽原 美奈(うはら みな)
円華の母親[ep 1]。故人。7年前、帰省先である北海道で竜巻に遭遇し、円華の目前で命を落とす。
桐宮 玲(きりみや れい)
円華を監視する女性[ep 1][ep 2][ep 3]。やや面長で、鼻筋が綺麗に通った美人。
開明大学病院心理学研究室のスタッフと名乗る[ep 2]
武尾 徹(たけお とおる)
円華を護衛する男性[ep 3][ep 4]。40代後半。首の太さが屈強さを語る。

第一章 あの風に向かって翔べ

坂屋 幸広(さかや ゆきひろ)
往年の名スキージャンパー[ep 1]。数々の栄冠を手にしたが、近年は不調に苦しみ、優勝から遠ざかっている。
引退を決意し、妻や幼い息子の前で有終の美を飾ろうと長野県で開催される試合に挑む。
筒井 利之(つつい としゆき)
北稜大学流体工学研究室の准教授[ep 1][ep 2]。ゴルフで真っ黒に日焼けした四角い顔。
スポーツと流体力学の関係をライフワークの研究とし、スキージャンプやナックルボールについて調査している。
7年前、北海道で発生した竜巻の被害の調査団に参加し、流体力学の観点から被害状況を分析している。
キョウコ
坂屋の妻[ep 1]。在住する小樽から息子を連れ長野へ渡り、夫の試合を応援する。
シュウタ
坂屋の一人息子[ep 1]。4歳になったばかり。父親の仕事を空飛ぶピザ屋と聞かされ信じている。

第二章 この手で魔球を

石黒 達也(いしぐろ たつや)
フルタイムでナックルボールを操ることのできる唯一無二の投手[ep 2]
球団の大黒柱であるが、捕球できる捕手が限られるために野球人生の行方が制約を受けている。
三浦 勝夫(みうら かつお)
石黒のナックルボールを捕球できるただ一人の捕手[ep 2]
身体の限界に直面しながらも、球界に不可欠な技術を後輩の山東に託そうと努力している。
山東(さんとう)
三浦が後継者として目をかける若き捕手[ep 2]
ナックルボールの捕球に連続して失敗したことで「捕球イップス」となり、選手生命が危ぶまれる不調に追い込まれる。

第三章 その流れの行方は

脇谷 正樹(わきたに まさき)
ナユタの旧友[ep 3]。イタリアンの料理人。高校時代の恩師・石部に救われた過去を持つ。
石部 憲明(いしべ のりあき)
教育者としてナユタと脇谷を導いた恩師[ep 3][ep 4]。水難事故で植物状態となった息子を抱える父。
事故の件で妻との間に生じた心の溝に苦しみ答えを求めて休職し、毎月事故が発生したのと同じ日に、事故現場に通い続ける。
石部 湊斗(いしべ みなと)
石部の息子[ep 3][ep 4]。重度の発達障害。キャンプ場で川遊び中に流され救助されるが植物状態となる。
1年以上回復することなく、脳神経外科の権威・羽原医師のいる開明大学に転院する。
石部の妻
発達障害で目を離すことができない息子の世話をしていたが、現在は植物状態の息子の現状を受け入れつつある[ep 3]
仁美(ひとみ)
脇谷の妻[ep 3]。脇谷より4歳年上。妊娠中の子どもにダウン症の疑いがある。
松下 七恵(まつした ななえ)
ナユタ、脇谷の高校時代の同級生[ep 3]。母校の国語教師になり、同じ職場となった石部の近況に詳しい。

第四章 どの道で迷っていようとも

朝比奈 一成(あさひな かずなり)
作曲家であり天才的なピアニスト[ep 4]。ファンからは一成(イッセイ)と呼ばれている。
視覚障害(網膜色素変性症)ながらも音楽に生きてきたが、最愛のパートナーの死により深い失意に沈み、演奏から遠ざかっている。
尾村 勇(おむら いさむ)
朝比奈のパートナー[ep 4]。故人。大学の非常勤講師。朝比奈から名前の下二つを取ってサムと呼ばれる。
朝比奈と互いを支え合う関係を築いていたが、朝比奈のカミングアウトで世間の偏見に苦しみ、崖から飛び降り自ら命を絶ったとされる。
西岡 英里子(にしおか えりこ)
朝比奈の妹[ep 4]。30代半ば。数キロ離れたところに夫や一人娘と暮らしているが、2、3日に1度のペースで兄の世話に来ている。
綾子(あやこ)
ナユタの母親[ep 4]。目立ちたがりで屋で有名人好き。
甘粕 才生(あまかす さいせい)
映画「凍える唇」を監督する映像作家[ep 4]
水城(みずき)
甘粕が監督する映画「凍える唇」のプロデューサー[ep 4]

第五章 魔力の胎動

青江 修介(あおえ しゅうすけ)
泰鵬大学で地球科学を専門とする研究者[ep 5]。3年前にJ県の灰堀温泉で起きた硫化水素事故の真相を解明した実績を持つ。
D県の赤熊温泉で同様の硫化水素事故が発生したことから、再び警察から現地調査を依頼される。
奥西 哲子(おくにし てつこ)
泰鵬大学での青江の助手[ep 5]。堅物で几帳面な性格の持ち主。黒縁眼鏡。
摂津(せっつ)
J県の自然保護課に属する男性職員[ep 5]。40過ぎの、顔の丸い太った人物。
吉岡(よしおか)
3年前にJ県の灰堀温泉で起きた硫化水素事故の被害者[ep 5]
妻と小学生の一人息子ともども硫化水素ガスの犠牲となり、命を落とす。
山田 一雄(やまだ かずお)
吉岡家が宿泊した「山田旅館」の主人[ep 5]。50歳ぐらいの男性。
桑原(くわばら)
「山田旅館」に夫婦で宿泊に訪れた白髪で恰幅のいい男性[ep 5]。横浜で会社経営をしている。
野次馬根性が強い上に、お節介な性格。
女性客
グレーのコートを羽織り、マフラーを巻いた女性[ep 5]。30代半ばくらい。奥西曰く「美人」。
J県で硫化水素事故が発生後した直後、予約なしで「山田旅館」に飛び込みで宿泊に訪れる。
田村(たむら)
J県警地域課の警察官[ep 5]
吉岡の姉夫婦
弟夫婦と甥の遺体を引き取りに灰堀温泉を訪れ、遺体発見現場に花束を手向ける[ep 5]
弟が会社の金を使い込んだと疑われ誤解であったが会社を辞めてしまい、人生を悲観して自殺したかもしれないと証言する。
サトウ
J県での硫化水素事故当日に吉岡の妻と息子を目撃した地元の女性[ep 5]。ややぽっちゃりした体形で丸顔。
青江からの質問に、吉岡親子とすれ違った際に「鳥居」という言葉を聞き、息子が広げた紙を両手に持ちながら歩いていたことを思い出す。
室田(むろた)
D県警生活環境家の刑事[ep 5]。四角い顔に太い眉で、下駄を連想させる人物。火山ガス事故の調査に青江の協力を求める。
登山用ジャケット姿の若者
駅舎で青江が室田の到着を待ってる間に目にした若い男性[ep 5]
駅舎で女の子が遊んでいた紙風船が風に舞い上がるも、事もなげに受け止める。

用語

北稜大学(ほくりょうだいがく)
長野県にある筒井利之が流体工学研究室で准教授を務める大学。
ナックルボール
野球における球種の1つで、ほぼ無回転で放たれ左右へ揺れるように不規則に変化しながら落下する変化球。
凍える唇(こごえるくちびる)
甘粕才生が20年ほど前に監督し海外の映画祭でグランプリを取った映画。
裕福な名家で生まれ育った少年が、美しい娼婦と知り合ったことで、徐々にセックスと薬に溺れていく物語。

書誌情報

脚注

外部リンク

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