透明な螺旋

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ガリレオシリーズ > 透明な螺旋
発行日 2021年9月10日
発行元 文藝春秋
透明な螺旋
著者 東野圭吾
発行日 2021年9月10日
発行元 文藝春秋
ジャンル 推理小説
日本の旗 日本
言語 日本語
形態 四六判上製カバー装
ページ数 304
前作 沈黙のパレード
公式サイト books.bunshun.jp
コード ISBN 978-4-16-391424-4
ISBN 978-4-16-792268-9文庫判
ウィキポータル 文学
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透明な螺旋』(とうめいならせん)は、東野圭吾の長編推理小説ガリレオシリーズ第10作でシリーズ6作目の長編作品。

殺人事件の犯人捜しと逃亡を続ける被害者の恋人の追跡を通して、天才物理学者・湯川学の過去が明らかになるミステリー。

2021年9月10日文藝春秋から書き下ろしで単行本が刊行され[1]、2024年9月10日には、巻末に短篇「重命る」を特別収録した文春文庫版が刊行された[2]

制作背景

東野は、これまでシリーズの中でほとんど語られてこなかった湯川学という人物に踏み込み、その過去を描くことを本作執筆の動機とした[3]。しかし、単に主人公の背景だけで長編作品を成立させることはできないため、本筋となる事件を別に設定し、その事件と湯川の過去という二つの軸を結びつける構成を採用した[3]

この手法は、加賀恭一郎シリーズ赤い指』に見られる構造と通じている[3]。同作では殺人事件の捜査の過程で加賀恭一郎の過去や父との関係が明かされ、「家族」という主題が物語と結びついていた[3]。東野はこの構造を踏まえ、本作では「湯川の過去」という主題を物語にリンクさせることで新たな深みを生み出そうと考えた[3]

本筋となる物語は、女児を出産した直後の女性がその娘を手放す場面から始まる。これは、「娘を手放した女性がその後どのような思いを抱えて生きていくのか」という、これまで東野が描きたいと考えていたモチーフであり、東野にとっても挑戦的な題材であった[3]。また、タイトルにある「螺旋」はDNAを意味し、このモチーフもまた湯川自身の過去と巧みに結びつけられている[3]

シリーズでは、湯川や草薙俊平といった人物が年月を経て肩書だけでなく人間としても変化していることから、本作ではガリレオシリーズにおける登場人物の変化も強く意識した[3]。東野は湯川の過去をあえて描かない選択肢も持ちながら、それでは彼が単なるシリーズの「記号」に留まってしまうと考え[3]、本作ではその背景を明らかにし、湯川が血の通った一人の人間であることを示すことに踏み込んでいる[3]

あらすじ

透明な螺旋
南房総沖で銃創のある男性の遺体が発見される。被害者は上辻亮太と判明するが、同じころ、上辻の同居人で行方不明届を提出していた島内園香も失踪していた。
園香の行方を追う警視庁捜査一課の草薙内海は、関係先の捜査から園香の母・千鶴子の友人である絵本作家アサヒ・ナナこと松永奈江の存在を把握する。さらに、園香が所持していたアサヒ・ナナ作の絵本の参考文献に湯川学の名が記載されていたことから、草薙は湯川に接触する。
湯川は横須賀にある両親が暮らすマンションで、認知症が進行した母とその介護にあたる父とともに生活していた。捜査の進展により、園香が上辻からドメスティック・バイオレンスを受けていた事実が判明し、第三者による上辻の殺害の可能性が示唆される。しかし、園香には事件当日のアリバイが確認されており、失踪の動機は不明のままであった。
草薙らの捜査が難航する中、湯川はアサヒ・ナナと独自に連絡をとったことを切っ掛けに、警察とは異なる観点から調査を進め、複数の関係者の事情が交錯する中で、事件の全容が徐々に明かされていく。
重命る(かさなる)
4月13日の朝、隅田川で水死体が発見される。遺体には単純な溺死とは考えにくい裂傷、打撲痕、骨折が認められた。
遺体は肺と肝臓の手術痕の特徴的から、行方不明届が出ていた堂園発彦と特定される。 堂園は数年前から癌を患い全身転移で余命半年と宣告され、残された時間で全国各地の恩人に会うための旅に出ていた。その後の捜査で、新河岸川に架かる橋から血痕が発見され堂園のものと断定される。
堂園は事故死ではなく他殺の可能性が浮上し、草薙たち捜査一課に応援要請が入る。防犯カメラの映像から堂園が轢き逃げされたことが判明し、犯人も逮捕される。しかし、犯人は「闇バイトに応じただけ」と供述し、何者かが堂園殺害を計画したことが判明する。
現場の状況から「轢かれた勢いで川に転落する可能性は低い」と判断され、この不可解な点を解明するのに草薙は湯川に助言を求める。

登場人物

シリーズレギュラー

湯川学(ゆかわ まなぶ)
帝都大学理工学部物理学科教授。本作では認知症多臓器不全を患う母の介護を持て余す父を応援するため、両親の横須賀のマンションに移り住む。
草薙俊平(くさなぎ しゅんぺい)
警視庁捜査一課係長。警部。
内海薫(うつみ かおる)
警視庁捜査一課の女性刑事で、草薙の部下。巡査部長。

警視庁

間宮慎太郎(まみや しんたろう)
捜査一課管理官[ep 1]
岸谷(きしたに)
捜査一課主任で、草薙の部下。警部補。草薙の後輩で、内海の先輩。
横山
所轄署の生活安全課の刑事[ep 1]。30代を少し過ぎたくらい。
島内園香から上辻亮太の行方不明者届けを受理しており、草薙と内海を「いるかハイツ」に案内する。

透明な螺旋

主要人物

島内園香(しまうち そのか)
上野の生花店に勤務する女性[ep 1]。23歳。最寄りの綾瀬駅から少し距離のある木造アパート「いるかハイツ」で生活する。
二人暮らしだった母・千鶴子の死後、上辻亮太と同棲を始めるが、次第に彼からのDVに苦しめられる。
上辻が死亡したと思われる日に彼の行方不明届を警察に提出し、その3日後、勤務先に休職願を出したのを最後に行方不明となる。
上辻亮太(うえつじ りょうた)
園香の交際相手[ep 1]。フリーランスの映像制作者。33歳。群馬県高崎市出身。面倒見の良さと、パワハラ気質な性格の二面性を併せ持つ男性。
南房総沖で身元不明の漂流遺体として発見され、銃殺された後に海へ投棄されたと推測される。
島内千鶴子(しまうち ちづこ)
園香の母[ep 1]。妻子ある男性との間に生まれた園香と二人暮らしだったが、1年半前にくも膜下出血で急死する。享年48歳。
千葉にある児童養護施設「あさかげ園」出身で、かつては同園で働き、園香の就職を機に都内に転居した後は給食センターで働いていた。
松永奈江(まつなが なえ)
「アサヒ・ナナ」のペンネームで活動する絵本作家[ep 1]。かつて児童施設をまわり子どもたちに紙芝居の読み聞かせを行っていた。
園香や千鶴子からは「ナエさん」と呼ばれ慕われており、彼女も島内親子のことを気にかけ、折に触れて親子と交流していた。
湯川のモノポールに関する著書を参考文献として、「ひとりぼっちのモノポちゃん」という絵本を描いている。
根岸秀美(ねぎし ひでみ)
銀座のクラブ「VOWM」の経営者兼ママ[ep 1]。大病を患い、店に出る機会が減少している。約50年前にある秘密を抱える
上辻の携帯電話に発信履歴があり、園香をホステスにスカウトする際に支度金300万円を準備できるかという確認の電話だったと内海に供述する。

湯川の家族

湯川晋一郎(ゆかわ しんいちろう)
学の父[ep 1]。帝都大学出身。医師の引退を機に自宅を売り払い、横須賀のマンションで妻と余生を送っていたが、現在は認知症が進行した妻を介護している。

園香の関係者

青山(あおやま)
園香の勤め先である上野の生花店の女性店長[ep 1]。40歳前後。
田村
「いるかハイツ」のオーナー[ep 1]。60代半ばくらいの太った男性。
野口(のぐち)
千葉県にある園香の出身高校で担任だった男性教師[ep 1]。園香の親しい友人として岡谷の名を挙げる。
岡谷真紀(おかたに まき)
園香の高校時代からの親友[ep 1]。高校の同級生で同じ美術部だった。上辻が死亡したと思われる日には、園香と1泊2日の京都旅行中だった。
事情聴取に訪れた内海に、上辻による園香へのDV疑惑を打ち明ける。

あさかげ園

関根(せきね)
女性職員[ep 1]。15年前に保育園から転職しており、あさかげ園では千鶴子と10年近く同僚だった。
金井
園長[ep 1]。60歳くらいの男性。4年前に赴任しており千鶴子と面識がないことから、彼女と親しかった関根を内海と湯川に紹介する。

奈江の関係者

藤崎(ふじざき)
アサヒ・ナナ(松永奈江)を担当する世報社の女性編集者[ep 1]。奈江は他の絵本作家が手を出さない題材を扱うのが得意と草薙に教える。
松永吾郎(まつなが ごろう)
奈江の夫[ep 1]。奈江より20歳以上年上で、複数の飲食店を経営する実業家であった。約20年前に肺癌で死去している。
児島(こじま)
松永夫妻が新座市在住時に親交があった隣家の婦人[ep 1]。吾郎の大学時代のスキー部仲間が所有するリゾートマンションを奈江が自由に使えた、という話を思い出す。

プロローグの登場人物

根岸秀美(ねぎし ひでみ)
終戦から3年後、秋田県の小さな村で生まれた女性[ep 1]。高校卒業後、千葉の紡績工場に就職するが、交際相手の矢野の子を妊娠したため退職する。
その事実を両親に告げられぬまま矢野が急死すると、出産直後の娘を育てることができず、「あさかげ園」の門前に置き去りにした。
矢野弘司(やの ひろし)
銀座のバーで働くバーテンダー[ep 1]。ひったくりから秀美のハンドバッグを取り返したことをきっかけに彼女と交際を始める。
同棲する秀美が妊娠すると新聞配達のアルバイトを掛け持ちするが、無理がたたり配達中に脳出血で急死する。

重命る(かさなる)

堂園発彦(どうぞの はつひこ)
実業家[ep 2]。58歳。末期癌を患っており、全国各地の恩人を訪ねる旅に出ていたが、隅田川で水死体として発見される。
堂園頼子(どうぞの よりこ)
発彦の後妻[ep 2]。40歳。夫が行方不明となっていた4月8日、クリニックを訪れたのち、行方不明届けを提出している。
戸波(となみ)
発彦の知人[ep 2]。80歳。かつてパチンコ店経営など、娯楽産業を手がけていた。堂園が旅の最後に都内で対面した人物。
津坂(つさか)
発彦の轢き逃げ実行犯[ep 2]。48歳。生活苦から「闇バイト」に応募し、指示された依頼を実行しただけだと供述している。
鈴岡佐枝(すずおか さえ)
発彦が25年前に別れた前妻[ep 2]。協議離婚のかたちになっているが、彼女の不貞が離婚理由。現在は新宿で小さなバーを経営している。
雄也(ゆうや)
佐枝の息子[ep 2]。発彦ではなく、母の浮気相手との子どもである可能性が高い。高校卒業後は飲食店の仕事を転々とし長続きせず、現在は母のバーを手伝いその日暮らし。

書誌情報

脚注

外部リンク

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