禁断の魔術 ガリレオ8

From Wikipedia, the free encyclopedia

ガリレオシリーズ > 禁断の魔術 ガリレオ8
発行日 2012年10月15日
発行元 文藝春秋
禁断の魔術 ガリレオ8
著者 東野圭吾
発行日 2012年10月15日
発行元 文藝春秋
ジャンル ミステリ推理小説
日本の旗 日本
言語 日本語
形態 四六判並製カバー装
ページ数 328
前作 虚像の道化師 ガリレオ7
次作 沈黙のパレード
公式サイト books.bunshun.jp
コード ISBN 978-4-16-381690-6
ISBN 978-4-16-790377-0文庫判
ウィキポータル 文学
[ ウィキデータ項目を編集 ]
テンプレートを表示

禁断の魔術 ガリレオ8』(きんだんのまじゅつ ガリレオエイト)は、東野圭吾の連作推理小説ガリレオシリーズ第8作。

天才物理学者・湯川学が不可解な事件を科学によって解決していくミステリー[ep 1][ep 2][ep 3][ep 4]

全編書き下ろしの短編集として2012年10月15日に文藝春秋から単行本が刊行された[1]。シリーズ第8作で、短編集としては5作目となる。

収録作の「曲球る」と「念波る」の2編は、2013年にテレビドラマ『ガリレオ』第2シリーズで映像化されている。

文庫化に際し、収録作の「猛射つ」を大幅に改稿して『禁断の魔術』に改題、長編小説として2015年6月10日に文春文庫から刊行された[2]。長編としてはシリーズ4作目となる。

単行本収録の「透視す」「曲球る」「念波る」の3編はシリーズ前作の単行本『虚像の道化師 ガリレオ7』が文庫化される際にそちらに再編され、『虚像の道化師』として刊行されている[2]

長編『禁断の魔術』は2022年9月17日にテレビドラマ『ガリレオ』のスペシャルドラマとして映像化・放送された。

制作背景

制作背景(単行本)

本作は、ガリレオシリーズ初の全編書き下ろし短編集として刊行された。東野は前作『虚像の道化師 ガリレオ7』で短編は終わりと考え5編構成にする予定だったが、湯川や草薙の人生や日常をより深く描こうとした結果、新たな着想が次々と生まれ、さらに4編を書き上げることとなった。こうして完成した原稿は合計で原稿用紙1000枚を超える分量となり、一冊に収めるにはあまりに分厚くなった。そのため、作品は『虚像の道化師』と本作の二冊に分けて刊行されることになった[3]

本作では、従来の殺人事件解決にとどまらない多様な物語が展開され、「透視す」では、透視能力を持つホステスに対する湯川の反応という発想から、殺人に関わらない謎に挑む姿が描かれる。「曲球る」では科学知識を人助けに活かし、「念波る」ではこれまでと異なるアプローチを見せるなど、新たな湯川像が提示された[4]。そして「猛射つ」では、「自分のせいで誰かが殺人犯になりかねないとしたら湯川はどうするのか」という問いのもと、犯罪に手を染めようとする愛弟子に対して、湯川が取る意外な行動が描かれる。本作は、湯川の新たな側面と人間性を浮き彫りにする短編集となった[3][4]

制作背景(文庫本)

『禁断の魔術 ガリレオ8』について東野は会心の一冊と考え、中でも「猛射つ」には最も力を注ぎ、長編化する構想も頭をよぎったが、既刊のシリーズ長編3作が人間ドラマを重視する作風であった一方、短編では科学トリックを前面に出しており、「猛射つ」もその系譜から連作集に収められた[5]

しかし刊行後も、「猛射つ」について「もっと人物を掘り下げられたのではないか」という思いが消えなかったことから、文庫化を最後の機会と考え、担当編集に長編化を相談。当初は驚かれたものの、他の連作3作をシリーズ前作『虚像の道化師』の文庫版に収録し、「猛射つ」を長編化する形で了承を得た[5]。改稿にあたり「猛射つ」を読み返すと、テーマの掘り下げが不十分だったことを痛感。何を描くべきかを問い直しながら書き進めた結果、主人公のみならず脇役や悪役まで人物像が明確になった。こうして生まれた長編『禁断の魔術』の湯川を、東野は文庫刊行当時「シリーズ最高のガリレオ」と断言している[5]

あらすじ

第一章・透視す(みとおす)
草薙に連れられて彼の行きつけである銀座のクラブ「ハープ」に来店した湯川は、そこでホステスのアイの接客を受けた。アイは、湯川の名刺を見ることなく彼の名字を言い当てる透視の芸を披露する。湯川は一度、アイがコートの裏側の刺繍を見たのだと推理して納得するが、帰り際に自分の名前や職業まで言い当てられたため、驚愕する。
それから4か月後、アイこと相本美香が殺害される。草薙たちは顔見知りによる犯行として捜査にあたる。美香は、死者への同情を抜きにしても誰からも慕われる女性であり、トラブルといえば遠隔地に住む継母との間に確執があった程度だったため、彼女を殺害する動機を持つ人物の特定に難航する。
やがて草薙たちは、美香の足の指の間に付着していた煙草の葉を手がかりに犯人を突き止め、逮捕する。動機は、例の透視によって美香に横領を見抜かれたことだった。しかし、その透視のからくりが分からずに行き詰まった草薙は、湯川に相談する。草薙から経緯を聞いた湯川は、透視の謎と美香が抱える一つの問題に光を当てていく。
第二章・曲球る(まがる)
プロ野球選手の柳沢忠正の妻・妙子が、スポーツクラブの駐車場で撲殺される。捜査の結果、アイドルグループの追っかけに必要な資金繰りのため、スポーツクラブの元警備員が犯行に及び逮捕される。これにより、事件は解決を迎えたかに見えた。しかし、妙子は殺害される直前にデパートで置時計を購入していた。その購入目的について、柳沢自身も全く心当たりがなく、謎は残されたままとなった。
野球選手としての限界を感じていた柳沢は、遺留品の置時計を返却に訪れた草薙に、話の流れから湯川を紹介される。そして、柳沢は湯川から科学的な監修を受けることになる。その後、柳沢の様子を見に来た湯川は、彼の車に錆が出ているのを発見する。その車が事件当日、妙子が乗っていたものだと知った湯川は、草薙や内海と共に妙子の行動を調べ始める。そして、置時計購入の背景に秘められた妙子の想いが、ついに明らかになる。
第三章・念波る(おくる)
都内に住む女性が帰宅時、何者かに襲われ意識不明の重体となる。この事件を最初に知ったのは、被害者・磯谷若菜の双子の妹、御厨春菜だった。遠く離れた長野の自宅で、姉からのテレパシーによって事件を知り、犯人の顔のイメージまでも受け取ったという。
捜査報告書にテレパシーなどと記述するわけにはいかない草薙と内海は、なんとか論理的な説明をつけようと春菜を湯川の研究室へ連れて行く。ところが、湯川は草薙たちの思惑とは裏腹に、春菜のテレパシー能力の研究に本格的に乗り出す。
第四章・猛射つ(うつ) / 禁断の魔術
ある年の5月、青年・古芝伸吾は理工学部物理学科第十三研究室を訪れた。伸吾は高校時代に湯川に出会い、彼から物理学を学んだことから、その魅力に感銘を受けて帝都大学を受験し、合格を果たした。そして、湯川のもとへ挨拶にやって来たのだ。しかしその日、伸吾の姉・秋穂は都内のホテルで死亡した。
約10か月後の3月、フリーライターが殺害される事件が発生する。容疑者として捜査線に浮上したのは、湯川の教え子である古芝伸吾だった。伸吾は姉が死亡した直後に帝都大学を退学し、金属加工品製造会社「クラサカ工機」へ入社したが、警察が捜査を始めた直後に失踪していた。その後の捜査で、伸吾が殺人を計画していることが判明する。しかもその殺人方法は、かつて湯川に教わった技術を改良したものであり、すべては姉の敵討ちに起因していた。

登場人物

シリーズレギュラー

湯川学
帝都大学物理学准教授。理工学部物理学科第十三研究室に所属。
「科学は使い方を間違えれば、禁断の魔術となる」との考えを持つ[ep 4]
草薙俊平
警視庁捜査一課の刑事。主任。帝都大学社会学部卒で湯川とは同期で友人。
内海薫
草薙の後輩にあたる捜査一課の女性刑事。

警視庁

間宮慎太郎[注 1]
捜査一課係長。警部。草薙、内海たちの上司。
岸谷
草薙の後輩にあたる捜査一課の刑事[ep 1][ep 4]
多々良
管理官[ep 4]。白髪に金縁眼鏡。見た目は上品なインテリ。

第一章・透視す(みとおす)

相本 美香(あいもと みか)
銀座のクラブ「ハープ」のホステス[ep 1]。源氏名は「アイ」。長野県出身。小柄で童顔の女性で、主に和服を着て接客する。明るく、いたずら好きで人を喜ばせるのが好きな性格。
相手の名前や鞄の中身を言い当てる透視のマジックが得意だが、男ウケしにくい容姿のためか、人気はいま一つ。「ハープ」には3年前に入店。以前は六本木のキャバクラにいた。
実の母親を小学生の時に交通事故で亡くしており、高校時代は生物クラブでモモンガの生態を熱心に調べていた。
相本 恵里子(あいもと えりこ)
美香の継母[ep 1]。40歳くらい。以前はホステスをしており、勝茂とは美香が高校2年の時に結婚した。
美香が大切にしていた実母が編んだ手袋を誤って捨ててしまい、美香との間にわだかまりを抱えている。
レイカ
美香と親しくしていた同僚のホステス[ep 1]。長身で細身の体型ながら、大きな胸が特徴。
藤沢 智久(ふじさわ ともひさ)
美香の高校時代の同級生[ep 1]。亀戸の大型ショッピングセンター内にあるペットショップでアルバイトをしている。
高校時代は美香と同じ生物クラブに所属しており、上京後、時々会っていた。
相本 勝茂(あいもと かつしげ)
美香の父親[ep 1]。60歳くらいの痩せた男性。長野県で青果店を経営している。
西畑 卓治(にしはた たくじ)
印刷会社の経理部[ep 1]。50代後半。「ハープ」の常連客で、美香と同伴したときに映画に誘われている。
沼田 雅夫(ぬまた まさお)
「ハープ」の常連客で、西畑と同じ会社の営業部長[ep 1]。ヘビースモーカー。

第二章・曲球る(まがる)

柳沢忠正(やなぎさわ ただまさ)
プロ野球「東京エンジェルス」の投手[ep 2]。38歳。力の衰えから2軍に落ち、最近戦力外通告を受け、合同トライアウトを控える。ボールのコントロールと変化球が武器。
柳沢 妙子(やなぎさわ たえこ)
柳沢の妻[ep 2]。頭部を鈍器で複数回殴られ殺害される。殺害現場となったスポーツクラブのVIP会員だった。
周囲の人に気を遣わせないよう、現役に固執しないことを条件に柳沢と結婚している。
宗田(そうだ)
柳沢のトレーナー[ep 2]。柳沢が個人的に雇ってから5年の付き合いで、良き理解者。
野球に応用できないかと参考にしていたバドミントン専門誌の記事を書いていた湯川を草薙に紹介され、柳沢の復活に向けて共に取り組む。
ヤン
中華料理店を経営する台湾人[ep 2]。50歳前後。妻が日本人。

第三章・念波る(おくる)

磯谷若菜(いそむら わかな)
御厨春菜の双子の姉[ep 3]。 29歳。渋谷区松濤在住。青山でアンティークショップを経営。
御厨春菜(みくりや はるな)
磯谷若菜の双子の妹[ep 3]。29歳。童話作家。長野県在住。叔母の籐子と二人暮らし。
御厨籐子(みくりや とうこ)
若菜と春菜の父方の叔母[ep 3]。50歳代半ば。独身。長野県在住。約20年前に両親を飛行機事故で亡くした若菜と春菜の親代わりとして世話をした。
磯谷和宏(いそむら かずひろ)
若菜の夫[ep 3]。ストリート・スポーツ専門店「クールX」を経営。渋谷区松濤在住。
山下(やました)
磯谷和宏の部下[ep 3]。20歳代半ば。「クールX」のスタッフで一番の古株。
後藤剛志(ごとう つよし)
六本木のバー「バロット」の常連客[ep 3]

第四章・猛射つ(うつ) / 禁断の魔術

主要人物

古芝伸吾(こしば しんご)
「クラサカ工機」の社員[ep 4][ep 5]。19歳。湯川と同じ統和高校の卒業生。帝都大学工学部機械工学科に入学するも退学。
高校時代、サークル「物理研究会」の新入生勧誘のパフォーマンスで電流と磁界を使った実験装置のアイデアを湯川から授かり、廃部を免れる。
古芝秋穂(こしば あきほ)
伸吾の姉[ep 4][ep 5]。28歳。「明生新聞社」政治部。大賀仁策の番記者。
都内のホテルにおいて子宮外妊娠を原因とする卵管破裂で出血多量により急死する。
大賀仁策(おおが じんさく)
代議士[ep 4][ep 5]。元文部科学大臣。地元・光原市の「スーパー・テクノポリス計画(STプロジェクト)」の発案者で推進者。総理候補。
鵜飼和郎(うかい かずお)
大賀仁策の第一秘書[ep 4][ep 5]
倉坂由里奈(くらさか ゆりな)
倉坂達夫の娘[ep 4][ep 5]。高校生。休憩時間に伸吾から数学などを教えてもらっており、彼に好意を抱いているのではと社員たちから噂されている。
長岡修(ながおか おさむ)
フリーライター[ep 4][ep 5]。38歳。向島在住。光原町出身[ep 5]。大賀仁策のスキャンダルを追っている。ST反対派の急先鋒[ep 5]
渡辺清美(わたなべ きよみ)
長岡修の恋人[ep 4][ep 5]。美容整形外科の受付。
勝田幹生(かつた みきお)
料理人[ep 4][ep 5]。40歳代半ば。がっしりとした体格。「スーパー・テクノポリス計画」反対派リーダー。計画による自然破壊を憂いている。
イシハラ / 矢場(やば)[注 2]
建築コンサルタント。STプロジェクトの反対派対策を請け負う。金縁眼鏡に格闘技経験者なのか耳がカリフラワー状に潰れている。
古芝恵介(こしば けいすけ)
秋穂・伸吾の父[ep 4][ep 5]。重機メーカー「暁重工」社員。カンボジアで事故により死亡。「科学を制するものは世界を制する」が口癖だった。

周辺人物

倉坂達夫(くらさか たつお)
「クラサカ工機」社長[ep 4][ep 5]。伸吾が大変仕事熱心で優秀な従業員であったことから、失踪したことを心配している。
トモ
「クラサカ工機」の女性事務員[ep 4][ep 5]。40代半ば。長岡修と思われる男性から伸吾が在職しているか確認する電話がかかってきたと草薙に証言する。
気の良いおばさんだが、子供の体調不良を理由に会社を休みがち。
池上
謎の爆破映像が撮影された倉庫の管理責任者[ep 4][ep 5]
老朽化して使用しておらず、業務に支障がないため倉庫の外壁に穴が空いたことを警察には届けなかった。
サトル、ミカ
交際中のカップル[ep 4][ep 5]。荒川沿いにある工場の敷地内で星空の下、プロポーズしようとしていたところ、乗りつけたバイクのガソリンタンクに直径2センチの穴が空き炎上する。
吉岡
六本木にある一流ホテルのフロントクラーク[ep 4][ep 5]。古芝秋穂が急死したホテルで、彼女が山本春子の偽名でスイートに宿泊したと証言する。
松下
ベルボーイ[ep 4][ep 5]。20代前半。古芝秋穂の遺体の第一発見者。
正午のチェックアウトに現れず連絡が取れないことからスイートを訪れ、シーツを血で真っ赤に染めた出血多量によるショック死を発見している。
姉が亡くなった際の様子を聞かせてほしいと去年の5月に伸吾の訪問を受けている。
谷山
統和高校の国語教師[ep 4][ep 5]。伸吾が高校3年の時の担任。
天野
統和高校の物理教師[ep 4][ep 5]。物理サークルの顧問。前頭部は禿げ上がっているが後ろの髪を肩まで伸ばしている。
石塚、森野
統和高校の2年生[ep 4][ep 5]。物理サークルでの伸吾の後輩。
去年の10月に伸吾が部室に私物(湯川のアイデアで制作した実験装置)を取りに現れたと証言する。
宮本
暁重工海外事業部[ep 4][ep 5]。50歳前後。古芝恵介と一番付き合いが長かった。
恵介のことを正義感が強く、バイタリティの塊だったと湯川に証言し、生前の恵介が残していたカンボジアでのプロジェクトのレポートを提出する。
田村
暁重工総務部[ep 4][ep 5]。30代後半。オブザーバーとして同席する。

その他

池端(いけはた)
大賀仁策の地元・光原市の後援会長[ep 5]
西村
大手不動産会社の社長[ep 5]。STプロジェクトの実質的な責任者。
岡本
STプロジェクトでG棟(高レベル放射性廃棄物処理の研究棟)が建設予定の糸山地区の工事責任者[ep 5]
米村
書店経営者[ep 5]。ST反対派で勝田の補佐。長岡とも面識がある。
二宮
帝国大学教授[ep 4][ep 5]。素粒子論の権威。3年間に米国に渡っったまま。


書誌情報

脚注

外部リンク

Related Articles

Wikiwand AI