探偵ガリレオ
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制作背景
著者である東野は、自身が理系出身[注 1]であることから「エンジニアとしての経験を基にした小説」を構想し、本シリーズを執筆している[3]。
最先端科学や専門知識を必要とするトリックを本作で取り入れたのは、本格ミステリを扱った『名探偵の掟』『名探偵の呪縛』を執筆したことで、「本格向き」のトリックを思いつかなくなったという意識が生じていたためであり、今の自分にどのようなミステリが書けるのか、また何を書きたいのかを吟味したうえでの挑戦であったと東野は振り返っている[4]。
当初、書籍を一冊刊行できればよいと深く考えていなかったことから、後に本格ミステリ大賞を受賞することになるシリーズ第3作『容疑者Xの献身』につながると東野は想像もしていなかった[4]。
主人公・湯川学のモデルとして東野は俳優の佐野史郎を想定していた[5]。これは、映画『夢みるように眠りたい』で佐野が演じた探偵役が印象に残っていたためとされる[5]。この縁から、本作の文庫版では佐野が巻末解説を執筆している[5][注 2]。
あらすじ
- 第一章・燃える(もえる)
- 人通りの少ない「花屋通り」で深夜に局所的な火災が起き、たむろしていた若者の一人が焼死する。現場からは焼けて変形したポリタンクが見つかり、警察は偶発的なガソリンの引火事故として捜査を始めるが、その場に居合わせた被害者の仲間は「被害者の後頭部から突然火が出た」と証言し、火災の原因は不明であった。
- 引火がマスコミの唱えるプラズマ説によるものかを検証するため、刑事の草薙俊平は大学時代からの友人である物理学者・湯川学を訪ねる。調査の中で草薙は現場にいた少女から、事件当日「赤い糸を見た」という証言を得ており、その不可思議な証言に興味を持った湯川は、現場近くのある工場に注目する。
- 第二章・転写る(うつる)
- 草薙は訪れていた中学生の姪の文化祭で、「変なもの博物館」と称する展示の中に石膏のデスマスクを見つけ、強い違和感を覚える。そこに血相を変えてそのマスクを見つめる女性がいて、話を聞くとその顔がこの夏行方不明になった女性の兄にそっくりだという。デスマスクは学校の男子生徒たちが、偶然近くの自然公園の池で拾ったアルミ製のマスクをもとに作ったものだった。ほどなくその池から、マスクと同じ顔立ちの男性の他殺体が見つかるが、現場にマスクがあった理由や由来は不明のままであった。
- 草薙は手がかりを掴むため、人体発火事件を解明した物理学者の友人・湯川に協力を要請する。湯川は遺体が発見された池を調べ、ある自然現象によってマスクが形成された可能性を推察する。一方で捜査は容疑者を絞るが、その人物には被害者が失踪した日に海外にいたという確固たるアリバイがあった。
- 第三章・壊死る(くさる)
- スーパーマーケットの経営者が胸に奇妙な痣を残し、自宅の浴槽で死亡しているのを息子が発見する。胸の痣は解剖でその部分の細胞が完全に壊死したものと判明したが、薬物反応はなく、感電痕でもないため死因が特定できず、捜査一課は捜査に行き詰まる。手掛かりが乏しい中、草薙は湯川に相談し、クラブを訪れて被害者が贔屓にしていたホステスに目を付ける。
- そのホステスは被害者に多額の借金を肩代わりしてもらう見返りに同居を強いられていた。同居を避けたい彼女は、昼間に勤める工場で、好意を寄せられていた同僚男性に冗談半分で被害者を「殺してほしい」と持ちかけていた。当初は戸惑って引き下がった同僚男性であったが、後に電話で仮に他殺でも病死にしか見えず、しかも「世界で前例のない」殺害方法を彼女に提案していた。
- 第四章・爆ぜる(はぜる)
- 三鷹のアパートで男性の撲殺体が見つかり、捜査に当たる草薙は、現場に残された帝都大学の駐車場の写真を手がかりに大学を訪れる。大学では湯川が、湘南海岸で女性が謎の爆死を遂げた未解決事件について学生たちと議論していた。草薙の大学関係者への聞き取りから、被害男性は事件前に駐車場で大学時代の担当教授の車について尋ねていたうえ、勤めていた会社も突然辞めていたことが判明するが、捜査は行き詰まる。
- そんな中、草薙は被害者の部屋から爆死事件当日のある喫茶店のレシートを発見し、二つの事件の関連を疑い始める。湯川も独自に海岸で調査を進めていたが、事態は収束しておらず、新たな犠牲者が出る危険が迫っていた。
- 第五章・離脱る(ぬける)
- マンションで女性の絞殺体が発見される。草薙は現場に残された名刺を手がかりに、被害者が殺害される前に会っていたという男から話を聞く。男は犯行推定時刻には体調不良で河川敷に車を止めていたと主張するが、被害者宅付近の住人が当日、男の車を目撃したと証言し、男は容疑者として任意聴取を受ける。しかし、男のアリバイを証明する目撃証言が集まらない。
- 真犯人が男だと見られ始めたころ、捜査一課に一通の手紙が届く。そこには、差出人の息子が事件当日、幽体離脱によって河原に停められた男の車を見たという不可解な証言と、その時に描いたという車の絵を写した写真が同封されていた。少年は体調を崩し自室で休んでいた際、外の見えないはずの景色を描いており、その真偽に捜査は混乱する。事態を受け、草薙は真相解明のため湯川を訪ねることになる。
登場人物
→シリーズレギュラー、警視庁捜査一課の刑事の詳細は「ガリレオシリーズ#登場人物」を参照
シリーズレギュラー
- 湯川学
- 帝都大学物理学助教授。理工学部物理学科第十三研究室に所属。帝都大学物理学部卒。
- 長身で色白、白衣をまとい黒縁眼鏡をかけた知的な顔つき。大学時代はバドミントン部のエースだった。
- 草薙俊平
- 警視庁捜査一課の刑事。34歳[注 3]。帝都大学社会学部卒で湯川とは同期であり、バドミントン部で知り合って以来の友人。
警視庁
- 間宮
- 捜査一課係長[ep 1][ep 5]。警部。草薙の上司。
- 小塚
- 草薙の後輩にあたる捜査一課の刑事[ep 2]。競馬ファン。
- 根岸
- 草薙の後輩にあたる捜査一課の刑事[ep 4]。
- 弓削(ゆげ)
- 草薙の一年先輩に当たる捜査一課の刑事[ep 5]。思いつきを喋る癖がある。
燃える(もえる)
- 前島一之
- 町工場・時田製作所の従業員[ep 1]。引火事故が起こった現場近くのアパート、205号室の住人。
- 発話障害で話すことができない、読書と音楽鑑賞を趣味とする青年。
- 金森龍男
- 前島の親友で、同じアパートの105号室の住人[ep 1]。騒がしい上にゴミをまき散らす少年グループを、心底から嫌っていた。
- 山下良介
- 事件の被害者[ep 1]。向井たちの証言によると突然後頭部から炎が上がり、瞬く間に頭部全体を覆い焼死している。
- 向井和彦
- 3カ月前に塗装会社を退職した無職の若者[ep 1]。19歳。山下と同じく、事件現場で騒いでいた5人の少年のひとり。
- 事件当時、煙草を吸っていたものの、ガソリンに火をつけたのは自分ではないと供述している。
転写る(うつる)
- 柿本進一
- 事件の被害者[ep 2]。歯科医。ゴルフに出かけたまま行方不明となっていた。
- デスマスクが発見された池を警察が捜索し、頭蓋骨側頭部が陥没した腐乱死体が発見される。
- 柿本昌代
- 進一の妻[ep 2]。30歳半ばくらい。
- 柿本良子
- 進一の実妹[ep 2]。保険会社に勤務。
- 小野田宏美
- 中学校の音楽教師[ep 2]。良子の学生時代からの親友。
- 展示された石膏のデスマスクが進一の顔に酷似していると、誰よりも早く気づいた。
- 林田
- 中学校の理科クラブの顧問教師[ep 2]。「変なもの博物館」の展示物を生徒たちの自主性に任せていた。
- 山辺昭彦
- 中学校の生徒[ep 2]。1年の時の同級生・斉藤に「鯉が釣れる」と騙され、池で釣りをしていた際、偶然アルミ製のデスマスクを見つけた。
- 藤本孝夫
- 中学校の生徒[ep 2]。山辺に誘われ、池に釣りに来ていた。
- 笹岡寛久
- パソコンの棚卸業務を行う男性[ep 2]。40代前半。被害者である進一に、競走馬の共同購入を持ちかけていた。
- 森下百合
- 草薙の実姉[ep 2]。夫が急遽出張となり、学園祭で娘が発表するダンスの撮影にビデオカメラ係を草薙に頼んだ。
- 美砂
- 百合の娘(草薙の姪)[ep 2]。中学校の学園祭でダンスを発表する。
壊死る(くさる)
- 内藤聡美
- クラブ「キュリアス」のホステス[ep 3]。二十代前半。夜の顔とは別に、昼間は東西電機埼玉工場で事務の仕事をしている。
- 高校卒業後に新潟から上京し、ブランド品に心を奪われクレジットカードの支払いに窮する。高崎邦夫からも借金を抱えていた。
- 田上昇一
- 聡美の東西電機での同僚[ep 3]。25歳。彼女の夜の顔も知る人物。聡美に異常なほど執着し、新潟に連れて帰り結婚しようと迫る。
- 聡美のためなら手段を選ばない。今回の事件に使われたある物を管理している。
- 高崎邦夫
- 事件の被害者[ep 3]。スーパーマーケットの経営者。一代で店を築き上げたが、その過程で金銭にまつわる裏の顔も持ち、恨みを買うことも多かった。
- 倹約家で家族には厳しい一方、聡美には惜しみなく金を与えて同居を迫っていた。
- 高崎紀之
- 邦夫の息子で、父親の遺体の第一発見者[ep 3]。大学生。父に対して強い憎しみを抱いており、遺体発見時も「これで都合が良くなる」と冷淡に考えていた。
- 河合亜佐美
- 聡美が働くクラブの先輩ホステス[ep 3]。ロシアンブルーの猫を可愛がっている。
- 小野寺
- 聡美の昼間の仕事での同僚[ep 3]。試作部試作一課の班長。40半ばくらいの背の低い男性。
- 伊勢
- 聡美の昼間の仕事での上司[ep 3]。試作部試作一課の課長。
- 橋本妙子
- 聡美の昼間の仕事仲間[ep 3]。試作二課の所属。聡美に関する様々な噂を耳にしているが、彼女が水商売をしていることは知らない。
- 松山文彦
- 東西電機本社・生産技術部に籍を置く男性社員[ep 3]。東西電機の下請け会社・松山製作所の跡取り息子。
- 修行のために籍を置く東西電機で聡美のことを見初め、部長経由で彼女との交際を申し込んでいる。
爆ぜる(はぜる)
- 藤川雄一
- アパート「坂上ハイツ」で撲殺体が発見された被害者[ep 4]。25歳。帝都大学理工学部エネルギー工学科・第五研究室の出身で、熱交換システムを研究していた。
- 「ニシナ・エンジニアリング」で熱工学の研究に没頭していたが、4月に別の部署へ異動すると、7月に退職している。在学中は、松田の研究を手伝っていた。
- 松田武久
- 帝都大学理工学部エネルギー工学科・第五研究室の助手[ep 4]。もともとは理工学部物理学科出身で、湯川と同期。
- 梅里律子
- 湘南海岸で発生した爆発事件の被害者[ep 4]。29歳。
- 梅里尚彦
- 律子の夫[ep 4]。会社員として働いている。
- 長江秀樹
- 湘南海岸の土産物店の店主[ep 4]。爆発事件の際、突然海中から火が出て、細かい黄色の火の玉が海面を滑りながら広がったのを目撃している。
- 加藤敏夫
- 「坂上ハイツ」を管理する「加藤不動産」の主人[ep 4]。藤川雄一の遺体の第一発見者。
- 横森
- 帝都大学理工学部エネルギー工学科・第五研究室の教授[ep 4]。
- 就職担当教官で「ニシナ・エンジニアリング」の技術顧問も務めており、藤川を同社に推薦した人物。
- 木島文夫
- 帝都大学理工学部の教授[ep 4]。60歳くらい。学部内で強い影響力を持つ重鎮であり、向学心のある学生たちがこぞって彼の講義を受けようとする。
- かつて受講プログラムの申請を忘れた藤川から受講させてほしいと頼まれたが、それを認めなかった。
離脱る(ぬける)
- 長塚多恵子
- 事件の被害者[ep 5]。28歳。扼殺された遺体の司法解剖から、22日の午後1時から4時までが犯行推定時刻とされる。
- 栗田とは職場の上司の紹介で見合を通じて知り合ったが、結局は破談に。その縁で、栗田のところの保険に加入していた。
- 栗田信彦
- 保険会社の外交員[ep 5]。気が弱い一面を持つ。愛車は赤のミニクーパー。
- 容疑者とされるが、22日の犯行推定時刻には前日の深酒で体調がすぐれず、河川敷に車を止め休んでいたと主張する。
- 上村宏
- フリーライター[ep 5]。妻とは離婚し、一人息子の忠広と暮らしている。
- 忠広の幽体離脱の体験記事をマスコミに発表することを狙っている。感情的になりやすい性格。
- 上村忠広
- 宏の息子[ep 5]。小学2年生。生まれつき病弱で、学校を休みがち。絵を描くことが得意。
- 熱をだし自室で休んでいた際に幽体離脱を経験し、自宅から見えないはずの河原に停められた栗田の赤いミニクーパーを見て、その絵を描いたとされている。
- 竹田幸恵
- 忠広のクラスメート・亮太の母親[ep 5]。自宅でパン屋を経営している。夫は事故で亡くなり、息子と二人暮らし。
- 宏に好意を抱いているが、彼が忠広の幽体離脱を記事にして有名になろうとしていることに引っかかりを持つ。
- 中上
- 上村の住むアパートの窓から正面に見える食品工場の工場長[ep 5]。50歳くらいの太った男性。
- 草薙から事件当日、工場の大扉を全開放していないか確認される。
- 吉岡
- 長塚の元上司[ep 5]。長塚に栗田を紹介しているが、3年前に退職している。
書誌情報
- 単行本:1998年5月30日・文藝春秋 ISBN 4-16-317720-5
- 文庫版:2002年2月10日・文春文庫 ISBN 4-16-711007-5 (解説:佐野史郎)
| タイトル | 初出 |
|---|---|
| 燃える(もえる) | 『オール讀物』1996年11月号 |
| 転写る(うつる) | 『オール讀物』1997年3月号 |
| 壊死る(くさる) | 『オール讀物』1997年6月号 |
| 爆ぜる(はぜる) | 『オール讀物』1997年10月号 |
| 離脱る(ぬける) | 『オール讀物』1998年3月号 |
テレビドラマ
→詳細は「ガリレオ (テレビドラマ) § 登場人物」、および「ガリレオ (テレビドラマ) § 連続ドラマ(概要)」を参照