疾風ロンド

From Wikipedia, the free encyclopedia

雪山シリーズ > 疾風ロンド
疾風ロンド
著者 東野圭吾
発行日 2013年11月15日
発行元 実業之日本社実業之日本社文庫
ジャンル ミステリサスペンス
日本の旗 日本
言語 日本語
形態 A6判
ページ数 400
前作 白銀ジャック
次作 雪煙チェイス
公式サイト www.j-n.co.jp
コード ISBN 978-4-408-55148-7
ISBN 978-4-408-53660-6四六判
ウィキポータル 文学
[ ウィキデータ項目を編集 ]
テンプレートを表示

疾風ロンド』(しっぷうロンド)は、東野圭吾の長編サスペンス小説雪山シリーズの第2作[1]

極秘に開発された生物兵器「K-55」を巡り、雪山のスキー場で繰り広げられる奪還戦を描くサスペンス小説。

2013年11月15日に実業之日本社文庫から文庫書き下ろしで刊行された[2]。東野の文庫書き下ろしは、1996年10月14日に講談社文庫から刊行された『名探偵の呪縛』以来17年ぶりとなり[3]、発売10日で100万部を突破している[4][5]

2014年12月11日に単行本実業之日本社から刊行され[6]、2023年10月6日には文庫新装版が同社より刊行された[7]

2020年11月6日には、実業之日本社ジュニア文庫からTAKAが装画、挿絵を手がけたジュニア版が刊行されている[8]

2016年に漫画化[9]され、同年に阿部寛主演で映画化された[10]

制作背景

東野は本作の執筆にあたり、舞台設定のために複数のスキー場を取材しており、そのうちの一つとして長野県の野沢温泉スキー場を訪れる[1]

地元ガイドから「写真に写る遠くに見える稜線や木々の生え方、雪の付き方などでスキー場を特定できる」という説明を受けたことで、当時頭の中にぼんやりとあった「何かを捜す」という物語の核となるテーマに結びつき、野沢温泉村をモデルとした架空の「里沢温泉村」を舞台に据えることを決める[1]

作中に描かれる風景や施設、飲食物などの細部は、実在のものを基にしており、例えば劇中に登場する喫茶店「カッコウ」や「野沢菜坦々麺」といった要素は、実在の店舗やメニューに由来する[1]。こうした具体的な場所やモチーフを作品に反映させる手法は、東野の他作品(加賀恭一郎シリーズにおける日本橋の描写など)にも共通して見られる[1]

あらすじ

泰鵬大学医科学研究所の研究員・葛原克也は炭疽菌に遺伝子操作を施した生物兵器「K-55」を培養する。やがてその行為が発覚し解雇されると、葛原は研究所から「K-55」を盗み出し、とある雪山のブナ林に隠す。そして発信機を埋め込んだテディベアを目印に吊るし、所長の東郷雅臣に「K-55」の隠し場所を探すヒントの写真と受信機の対価に3億円を要求する。生物兵器を表沙汰にできない東郷は警察に通報できず、主任研究員の栗林和幸に極秘の奪還を命じるが、直後に葛原が交通事故死したとの一報が入る。遺留品のデジカメと受信機を回収した栗林は、残された雪山の写真を頼りに調査を開始し、スノーボード好きの息子・秀人の協力で、写真のブナ林が長野県の里沢温泉スキー場ではないかとの推測から、親子で現地へ向かう。

スキー場に到着した栗林は受信機を頼りにコース外のブナ林でテディベアを探すが反応はなく、雪に埋もれて動けなくなり、パトロール隊員の根津昇平に救助される。一方で、野次馬根性の強い和田春夫と名乗るスキーヤーに付きまとわれるが、慎重にそれをかわす。秀人は地元の中学生・山崎育美と親しくなり、彼女の同級生・高野裕紀の妹が2か月前にインフルエンザで亡くなり、早期に学級閉鎖をしなかった学校の対応やインフルエンザを感染させたかも知れない学生たちを高野の母親が恨んでいるという噂を知る。

栗林は再びコース外に侵入し捜索を続けるが、足をくじいて動けなくなり、スノーボード選手・瀬理千晶に発見され、再び根津に救助される。不審者として警察に通報されそうになった栗林は「ワクチンが盗まれ、助からない人がいる」と嘘をつき、その話を信じた根津に受信機を託してテディベアの捜索を任せる。根津と千晶はブナ林を中心に捜索するが受信機は反応せず、ゲレンデ上空を移動中のリフトで反応するという混乱が生じる。さらに栗林に絡んでいた和田の尾行も明らかとなり、不穏な空気が漂う。

その後、根津はピンクのウェアを着た少女から強い電波反応を受信したと栗林に報告する。栗林は、ゲレンデで出会った家族連れの小学生・ミハルと気づき、彼女が午後から名古屋の自宅に帰る予定だったことを思い出す。根津の尽力により、高速バスで帰宅中だったミハルの家族が発見される。テディベアは育美の同級生・川端健太がコース外のブナ林で偶然見つけて持ち帰り、ゲレンデで接触したミハルにお詫びの品として渡していたことが明らかとなる。その後、川端と連絡を取りブナの木の位置を特定しようとするが、彼は一向に現れない。すると川端とコース外で一緒に滑走していた高野が「場所を知っている」と案内し、根津や千晶たちと容器の回収に向かう。

しかしそこに和田が現れ、川端にナイフを突きつけて脅迫し、隠されていた容器を奪って逃走する。千晶はすぐさま追跡し、ゲレンデを滑走しながらスキーポールを使った激しい格闘の末、容器を取り戻すが、和田を取り逃がす。その後、容器は根津から栗林の手に渡るが、栗林は誤ってガラスケースを床に落としてしまう。ケースが割れ、栗林は「炭疽菌だ!」と叫び中身が生物兵器であることが周囲に知れ渡るが、被害は発生しなかった。実は栗林と東郷のスマートフォンの会話を偶然耳にした高野が「K-55」の存在を知り、隠されていた容器の中身をこっそり胡椒に入れ替え隠し持っていたのだ。母の恨み言を真に受けた高野は母の代わりに学校に復讐するため、「K-55」の殺傷能力を理解しないままスキー教室で振る舞われる豚汁に混入し、食中毒騒ぎを起こそうと企んでいたのである。しかし計画は未遂に終わり、高野は自らの愚行を涙ながら悔い改め、彼の母もまた、息子を誤解させたことを深く謝罪する

栗林は東郷の指示でスキー場に現れた補助研究員の折口真奈美に「K-55」を引き渡す。しかし所長室の盗聴器の発見から、真奈美こそが葛原の計画を手助けし、和田春夫こと弟の折口栄治に「K-55」を横取りさせようと仕向けた黒幕であったことが判明する。「K-55」を奪われた栗林は呆然とするが、秀人によって事前にすり替えられ「K-55」は手元に残されており、栗林は警察に本当のことを報告するよう説得される。後日、千晶が大会で優勝した夜、成田空港から偽装パスポートでの出国を試みた真奈美が拘束され、容器から解凍された冷凍フランクフルトが発見されたという珍妙なニュースが報道される。

登場人物

主要人物

栗林 和幸(くりばやし かずゆき)
泰鵬大学医科学研究所の主任研究員。東郷からの命令で研究所から盗み出された生物兵器「K-55」の回収を急ぐ。
学生時代に経験はあるものの、久しぶりのスキーは板よりも尻で滑る時間が長いほどの腕前。
根津 昇平(ねづ しょうへい)
里沢温泉スキー場のパトロール隊員。元スノーボードクロス選手。
以前は別のスキー場にいたが、2年前に知り合いに誘われ移ってきた。
瀬利 千晶(せり ちあき)
スノーボードクロス選手。大会出場のため里沢温泉スキー場を訪れる。真っ赤なウェア。
根津とは彼が以前いたスキー場で出会ってからの顔馴染み。
栗林 秀人(くりばやし しゅうと)
栗林和幸の息子。中学2年生。スノーボードに熱中している。
写真に写るスキー場の特定や、スキー場での案内を父親の和幸から頼まれる。
和田 春夫(わだ はるお)
長野市内の衣料品問屋の社員。野次馬根性が強く、テディベアに興味を示し栗林につきまとう。どどめ色の変な帽子。

里沢温泉スキー場

板山中学

山崎 育美(やまざき いくみ)
中学2年生。濃紺のウェア。 やや太めの唇にマッチした長い睫に大きな目。
スキー教室の午後の自由行動で滑走中にぶつかった秀人と顔見知りとなり、スキー場を案内する。
川端 健太(かわばた けんた)
中学2年生。茶色のウェア。スキー教室の午後の自由行動でパウダーゾーンを滑走するため、裕紀とともにコース外に侵入する。
中学生ながらバックフリップ(後方宙返り)を決めるなど、スキーの上級者。
高野 裕紀(たかの ゆうき)
中学2年生。緑色のウェア。健太と侵入したコース外で、ブナの木に打ち込んだ釘に吊るされたテディベアを発見する。
妹を2か月前にインフルエンザで亡くしており、学級閉鎖をせず妹を死に追いやった学校や妹の同級生を母親が憎んでいると噂される。

喫茶店カッコウ

高野 誠也(たかの せいや)
大学に入ったばかりの裕紀の兄。アルバイト店員。日焼けした肌に歯の白さが際立つ。
スキーの大会で何度も優勝しており、村の有名人。
望美(のぞみ)
誠也、裕紀の妹。心臓が弱く病弱で、インフルエンザに感染したことで2か月前に亡くなっている。

スキー客

ワタナベ ミハル
小学生の女の子。ピンクのウェア。幼いがスキーを上手に滑る。
ワタナベ カズシゲ
ミハルの父親。青いウェア。30代半ば。よく日に焼けた、なかなかの二枚目。栗林たちと同じ宿に宿泊している。
ミハルの母親
親子3人で家族旅行で名古屋から遊びに来ている。 黄色のウェア。

パトロール班

牧田(まきた)
班長。パトロール歴30年のベテラン。山岳スキーの腕前は根津でも足元にも及ばない。

泰鵬大学医科学研究所

東郷 雅臣(とうごう まさおみ)
所長。生物学部長。葛原がよからぬ動きをしていることを薄々知りつつ放置していた節がある。
折口 真奈美(おりぐち まなみ)
補助研究員。周囲からは鈍臭く真面目だけが取り柄と思われているが、鈍感な女性を演じている。好きな言葉は「能ある鷹は爪を隠す」。
葛原 克也(くずはら かつや)
元研究員。自身が開発した生物兵器「K-55」を研究所から盗み出し、東郷に脅迫メールを送信した犯人。
ブナの木の根元の雪を掘り返し「K-55」を埋め、目印に発信器を埋め込んだテディベアをブナの木に打ち込んだ釘に吊るす。
しかし脅迫メールを送信後、高速道路の路側帯でファンベルトの切れた自動車を整備中にトラックに轢かれる交通事故で亡くなる。

その他

鈴木(すずき)
秀人の同級生。スノーボード仲間。秀人から写真のスキー場探しを相談される。
父がスキー好きで、秀人や佐藤たちをスキー場に連れていってくれた。
佐藤(さとう)
秀人の同級生。スノーボード仲間。秀人から写真のスキー場探しを相談される。
田中(たなか)
神田にある老舗ショップの店員。スノーボードフロアの責任者。秀人から写真のスキー場探しを相談される。
山野(やまの)
老舗ショップの店長。白髪頭の男性。スキー歴40年のベテラン。秀人に山岳写真家を紹介する。
道代(みちよ)
栗林の妻。平日に秀人を連れてスキー場に行く栗林を不審がるが、折角だから楽しんでくるようにと二人を送り出す。
吉田 桃華(よしだ ももか)
板山中学2年生。川端が密かに想いを寄せる。

用語

K-55
葛原が遺伝子操作を施したバイオセーフティーレベル4の新型炭疽菌。ペニシリンなどの抗生物質が一切効かない。
エボナイト製の栓で蓋をされたガラス製の円筒に封入されており、摂氏10度以上になるとエボナイトの膨張でガラスケースが破損する。
テディベア
K-55が根元に埋められたブナの木に目印で吊るされた、発信機が埋め込まれている人形。
受信電波の強さに応じて光る数が変わる8つの発光ダイオードが並ぶ方向探知受信機で捜索する。
泰鵬大学医科学研究所
主に感染症に関する研究が行われる施設で、バイオセーフティレベル4の実験室が密かに稼働されている。
里沢温泉スキー場
長野駅からバスで1時間の禿鷹山にある日本有数の広さを誇るスキー場。
板山中学
里沢温泉スキー場から車で20分ほどの隣村の中学校。里沢温泉スキー場でのスキー授業が恒例行事。
喫茶店カッコウ
裕紀の両親が経営する里沢温泉スキー場内の山小屋を模した喫茶店[注 1]
臥竜岳
里沢温泉スキー場から眺望できる山岳。

書誌情報

書誌情報(ジュニア文庫)

漫画

2016年、実業之日本社のWeb漫画サイトCOMICリュエルにて菊地昭夫の作画で連載され[9]、同年10月27日にマンサンコミックス(実業之日本社)から、コミック版が発売された。

書誌情報(漫画)

東野圭吾(原作) / 菊地昭夫(作画) 『疾風ロンド』、〈マンサンコミックス〉全1巻

映画

脚注

外部リンク

Related Articles

Wikiwand AI