ガリレオの苦悩

From Wikipedia, the free encyclopedia

ガリレオシリーズ > ガリレオの苦悩
著者 東野圭吾
発行日 2008年10月25日
発行元 文藝春秋
ガリレオの苦悩
著者 東野圭吾
発行日 2008年10月25日
発行元 文藝春秋
ジャンル ミステリ推理小説
日本の旗 日本
言語 日本語
形態 四六判上製カバー装
ページ数 344
前作 容疑者Xの献身
次作 聖女の救済
公式サイト books.bunshun.jp
コード ISBN 978-4-16-327620-5
ISBN 978-4-16-711013-0文庫本
ウィキポータル 文学
[ ウィキデータ項目を編集 ]
テンプレートを表示

ガリレオの苦悩』(ガリレオのくのう)は、東野圭吾による連作推理小説[1]ガリレオシリーズ第4作[2]

天才物理学者・湯川学が不可解な事件を科学によって解決していくミステリー[ep 1][ep 2][ep 3][ep 4][ep 5]

オール讀物』(文藝春秋)2006年9月号、『別册文藝春秋』(文藝春秋)第274号、第276号、『GIALLO』(光文社)2008年SUMMER号に掲載された4編に、書下ろし1編を加え、1998年5月30日に単行本が文藝春秋より刊行された[1]。2002年2月10日には文春文庫版が刊行された [2]

本作の単行本の刊行と同日にシリーズ次作の長編『聖女の救済』が同時刊行されている[3]

本作から、テレビドラマ『ガリレオ』を切っ掛けに生まれた登場人物である内海薫が登場する。また本作には湯川の関係者や本人が関わる事件が収められている。

本作の収録作品はテレビドラマ『ガリレオ』の特別編である『ガリレオΦ』と第2シリーズで映像化されている。

制作背景

東野は本作の制作を、かなり苦労したと回想している[4]。本作はシリーズ次作『聖女の救済』との同時刊行が決まっており、両作品の分量のバランスを考慮する必要があった[4]。また、先行する短編集(『探偵ガリレオ』『予知夢』)がそれぞれ5編収録であったのに対し、雑誌掲載作品のストックが4編しかなかったため、テレビドラマの人気から出版を急いだと思われることを避けたいと考え、書き下ろし作品「指標す(しめす)」を収録することにした[4]

しかし「指標す」の執筆は難航し、ダウジングをモチーフとする構想に至るまで約1年間アイデアが出ず、過敏性腸炎を発症するほどだった。編集陣はこの苦労を知らず、体調不良を「飲み過ぎ」と笑っていたが、東野は多忙ながら編集者や読者へのサプライズを意図して努力を重ねた[4]

様々な苦労を経て完成した本作について、東野はその出来に手応えを感じており、各短編で湯川学の人物像が深まる構成になったと自負している。特に、湯川が「常に喜んで謎解きをしているわけではない」側面をよく表現できたと考えている[4]

本作で捜査一課の女性刑事・内海薫が初登場する[5]。これはテレビドラマ『ガリレオ』の企画で「湯川の相棒として女性刑事を登場させたい」との制作チームからの提案を、東野が「先に女性刑事を小説に登場させ、その名前を使う」という条件で受け入れて生まれたもので、シリーズに新たな視点と立体感を加えた[5]

あらすじ

第一章・落下る(おちる)
マンションの7階から女性が転落死するが、部屋から被害者の頭部を殴ったと思われる凶器の鍋が見つかる。警察は他殺の可能性を考慮し、捜査を開始する。
後日、被害者の大学の先輩である岡崎光也が事件当日に被害者宅を訪れたと申し出るが、新人刑事の内海薫は玄関に置かれたままの宅配便から岡崎と被害者が恋愛関係だったと睨み、疑念を抱く。しかし、離れた場所にいたアリバイが確認された岡崎がどのように被害者を転落させたか、手口が分からないままであった。
内海は草薙に頼み込み、彼の紹介で物理学者・湯川学に助力を求めるが頑なに拒否される。落胆する内海が自らの仮説を語ると、湯川は「価値のない実験はない」と返す。
その言葉に励まされた内海は、自ら仮説の検証に取り組んでいく。
第二章・操縦る(あやつる)
かつて「メタルの魔術師」と呼ばれた元帝都大学助教授の友永幸正は、教え子たちを東京郊外にある自宅に招き、久しぶりに酒を酌み交わしていた。
幸正が席を外し、教え子たちが談笑していると、離れから炎が上がり、焼け跡からは離れに住んでいた幸正の息子・邦宏の遺体が発見される。火事による焼死かと思われたが、刺殺と判明。しかし離れは密室で、凶器の刃物は発見されなかった。
現場に駆けつけた草薙は、そこに湯川がいることに驚く。彼もまた友永との酒宴に参加する予定であり、火災発生時には居合わせなかったものの、一部始終を目撃していた友永の教え子たちから到着後に確認し、事件の発生状況を把握していた。
偶然事件に関わる形となった湯川だが、事件の真相を追うにつれ、意外な真実を知ることになる。
第三章・密室る(とじる)
湯川はペンションを経営する大学時代の友人・藤村からある事件に関わる謎の解明を依頼され、彼のペンションに招かれる。その謎とは、藤村のペンションの客が峡谷で転落死した事件に関わるものだった。事件当日、藤村が被害者を夕食に呼んだが気配や応答がなく、客室のドアには内側からチェーンが掛かり、外窓にも鍵が掛かっていた。だが二度目に声をかけた際には被害者の気配があったが、しばらくして他の客から外窓が開いていると聞いた時には、被害者はすでに失踪しており、翌日、警察の捜索により転落死していたことが判明する。藤村は最初は無人の密室だった客室に、どうして後になって人がいたのかを気にかけていた。
依頼を受けた湯川は、早速その「密室」の謎を解くための調査を開始し、藤村の妻・久仁子にも事件前後の周辺状況を細かく聞き込み、詳細な情報を集めようとする。
「密室」の謎だけでなく、湯川が周囲の状況を必要以上に探るのを次第に快く思わなくなった藤村は、ついには湯川の調査に断りを入れる。
だがその翌日、湯川は藤村のもとを再び訪れ、密室の謎とともに事件の背景に潜む意外な真実を示唆する。
第四章・指標す(しめす)
家族旅行中に一人で留守番をしていた老女が自宅で殺害され、金の地金10キロと飼い犬が消える事件が発生する。犯行当日に被害者宅を訪れていた真瀬貴美子に疑いがかかるが、決定的な証拠は見つからず捜査は難航する。
内海と同僚の岸谷は、真瀬家を張り込む中で、貴美子の一人娘・葉月が単独で外出する様子を目撃し、内海は彼女を尾行する。葉月が向かったのは不法投棄の現場で、そこに捨てられた洗濯機の中から、被害者の飼い犬の死骸が発見される。
内海が葉月から事情を聞くと、彼女はダウジングによって犬の居場所を突き止めたと語る。にわかには信じられない説明に、内海は真偽の判断がつかず困惑する。
対処に困った内海は湯川に相談を持ちかけると、湯川は事実関係を見極めるため、葉月本人と直接対面できるよう内海に指示する。
第五章・攪乱す(みだす)
警視庁に「悪魔の手」と名乗る人物からの手紙が届く。そこには、人を自在に死に至らしめる力を持ち、近くその実演を行うという犯行予告と、「T大学のY准教授」こと湯川への挑戦状とも受け取れる文言が記されていた。警察が真偽を測りかねる中、湯川のもとにも同様の手紙が届き、正体不明の犯人が動き出す。
ほどなくして「悪魔の手」は、両国の建築現場での転落死と首都高堀切JCTでの交通事故死について犯行声明を警視庁に送付する。さらにテレビ局に怪文書を送りつけ、警視庁は記者会見で「悪魔の手」の存在と事件を公表せざるを得なくなる。
「悪魔の手」は遊園地やイベント、コンサート、マラソン大会に次々と脅迫状を送り、開催中止に追い込むことで自らの力を誇示し、事件を解決できない湯川を公然と挑発する。しかし湯川はインタビューで、脅迫に屈すること自体がナンセンスだと言い切る。
その発言を侮辱と受け取った「悪魔の手」は、ついに湯川本人を標的に命を狙い始める。だが、湯川の冷静な推理と内海の執念が、犯人のトリックに潜むわずかな綻びを突き止め、事件の真相が明らかになっていく。

登場人物

シリーズレギュラー

湯川学
帝都大学物理学准教授[注 1]。理工学部物理学科第十三研究室に所属。本作の冒頭では個人的な理由から捜査協力を拒む姿勢を見せる[ep 1]
しかし科学的興味[ep 1][ep 4]、自身や関係者が関わる事件[ep 2][ep 3][ep 5]を通じ、再び捜査に関わるようになる。
草薙俊平
警視庁捜査一課の刑事[ep 1][ep 2][ep 4][ep 5][注 2]。主任[ep 5]。帝都大学社会学部卒で湯川とは同期で友人。
内海薫
草薙の後輩にあたる捜査一課の新人刑事[ep 1][ep 2][ep 4][ep 5]。女性ならではの視点で捜査を進める。

警視庁

間宮
捜査一課係長[ep 1][ep 2][ep 5]。警部。草薙、内海たちの上司。
小井戸(こいど)
離れが火事になった友永邸を管轄する所轄署の刑事[ep 2]
大道
鑑識課の若手[ep 2]。湯川相手に火災にあった友永邸の離れの説明役を務める。
岸谷
草薙の後輩にあたる捜査一課の刑事[ep 4][ep 5]
牧村
草薙たちの班で内海や岸谷の先輩にあたる捜査一課の刑事[ep 4]
多々良
管理官[ep 5]。長年捜査一課一筋で勤め上げ、辣腕刑事として数々の伝説を作り上げる。
眼鏡をかけ穏やかな印象だが、「瞬間湯沸かし器」の渾名が付けられるほどの短気。
木村
捜査一課長[ep 5]。四角い顔で短髪。色黒で額が広い。「悪魔の手」がテレビ局に送った怪文章に対する記者会見を行う。

落下る(おちる)

江島千夏(えじま ちなつ)
マンション転落事件の被害者[ep 1]。30歳の銀行員。事件時、独り暮らしをするマンションの玄関は施錠されていなかった。
岡崎光也(おかざき みつや)
大型家具店の営業[ep 1]。30代半ばの痩せた男。千夏とは大学のテニス同好会で先輩後輩の間柄で、事件前にベッドのカタログを渡すため彼女の部屋を訪れていた。
三井礼治(みつい れいじ)
「ドレミピザ木場店」の配達員[ep 1]。ピザの配達で訪れたマンション駐車場で岡崎とすれ違い、その直後に転落する千夏を目撃している。
前田典子(まえだ のりこ)
日本橋小伝馬町にある銀行の行員[ep 1]。千夏と一番親しかった同僚。千夏は結婚に否定的で、一生独身でも構わないと話していたと内海に証言する。

操縦る(あやつる)

友永幸正(ともなが ゆきまさ)
元帝都大学助教授[ep 2]。湯川に実践の重要性を教えた恩師。かつては「メタルの魔術師」と呼ばれていた。
被害者である実子の邦宏と妻、10年前に亡くなった内縁の妻とその連れ子の奈美恵との間に複雑な家庭環境を抱えていた。
6年前に脳梗塞で倒れ麻痺が残り、現在は車椅子での生活を送っている。
新藤奈美恵(しんどう なみえ)
幸正の内縁の妻だった女性・育江の連れ子[ep 2]。20代。出版社に勤務していたが退職し、体の不自由な幸正の身の回りの世話をしている。
友永邦宏(ともなが くにひろ)
幸正と彼の別居中の妻・和代の息子[ep 2]。事件の被害者。30歳手前。残酷な性格で、幸正や奈美恵、近隣住民からも敬遠されていた。
高校卒業後は職を転々として定職に就かず、ギャンブルや風俗店通いにハマり、多額の借金を抱えていた。
紺野宗介(こんの そうすけ)
奈美恵の交際相手[ep 2]。自動車ディーラー勤務。奈美恵の家庭環境が原因で、結婚に踏み切れないでいる。
火災発生時、事務所で残業をしていたと証言するが一人であったためアリバイを証明できず容疑者としてマークされる。
安田、井村、岡部
研究室は違うが、幸正が気に入っていた帝都大学の教え子たち[ep 2]。幸正とは数年に一度の頻度で都内で会食をする間柄。
事件当時は幸正の自宅に酒宴に招かれており、破裂音と共に離れで火災が発生する一部始終を目撃する。
柏原良子
友永邸から100メートルほど行ったところに住む主婦[ep 2]。65歳。友永家の事情に精通している。
邦宏が夜中に騒ぎ池に勝手にカヌーを浮かべて遊ぶなど迷惑をかけ、借金取りが出入りしていたと内海に証言する。

密室る(とじる)

藤村伸一(ふじむら しんいち)
湯川と草薙の友人で、ペンションの経営者[ep 3]。元商社マン。湯川や草薙とは大学で同じバドミントン部だった。
草薙から湯川の活躍を聞き、ペンションの1階客室で発生した「密室」の謎の解明を湯川に依頼する。
藤村久仁子(ふじむら くにこ)
藤村の妻[ep 3]。27歳。以前は上野のクラブのホステスで、3年前に藤村と親密になり結婚した。
両親は土砂崩れに巻き込まれて亡くなっており、八王子の施設で弟と育った。
祐介(ゆうすけ)
久仁子の弟[ep 3]。都内でアルバイト暮らしをしていたが藤村に誘われペンションのある町に移り住み、観光協会に勤務している。
事件当日ペンションに宿泊しており、藤村と一緒に原口の客室が密室状態であったことを確認している。
原口清武(はらぐち きよたけ)
藤村のペンションの宿泊客[ep 3]。45歳。1階の客室から謎の失踪を遂げた後、ペンションから離れた峡谷で転落死しているのが発見される。
警察の調べで多額の借金を抱えていたことが判明し、転落死は自殺として片づけられる。
長沢幸大(ながさわ こうだい)
藤村のペンションの宿泊客[ep 3]。小学4年生。父親と渓流釣りで訪れており、原口と同じ日に宿泊していた。
ペンション備え付けのノートに、宿泊当日の宿の感想を書き残している。

指標す(しめす)

真瀬葉月
中学生[ep 4]。代々伝わる未来を示すという水晶の振り子を使い、自身の進路を決めている。
真瀬貴美子
保険の外交員で、葉月の母親[ep 4]。41歳。3年前に夫を自殺で亡くして以来、借金を抱えながら一人で葉月を育てている。
事件当日に被害者宅を訪問し、仏壇の隠し箱に金の地金が保管されていると知っていたことから、被害者殺害の嫌疑をかけられる。
碓井俊和
貴美子の上司[ep 4]。仕事の面で貴美子を支援しており、恋人関係でもある。離婚経験者で子供はいない。
野平加世子
事件の被害者である老女[ep 4]。75歳。夫が遺した金の地金を仏壇の隠し箱に保管していたが絞殺され、盗難に遭う。
野平
加世子の息子[ep 4]。葉月がダウジングで不法投棄された洗濯機の中から見つけた犬の死骸が、飼い犬のクロに間違いないと断言する。
堀部浩介
葉月の1年先輩の男子高校生[ep 4]。中学時代はサッカー部で、マネージャーの葉月に交際を申し込むが、葉月がダウジングで出した答えに従い断られる。

攪乱す(みだす)

悪魔の手
ネット上に犯行予告を書き込み、警視庁と湯川へ犯行声明を送りつけて勝負を挑む正体不明の人物[ep 5]
上田重之
塗装工[ep 5]。ベテランの高所作業員であったが両国で建築中のビルから転落死し、「悪魔の手」は、デモンストレーションで彼を葬ったと宣言する。
上田涼子
重之の一人娘[ep 5]。被害者遺族。
石塚清司
首都高速を軽自動車で走行していた老人[ep 5]。堀切JCTを過ぎると突然蛇行運転をして車線をはみ出し、後方からトラックに追突され壁に激突する。
意識不明の状態で病院に搬送されたが死亡し、その後「悪魔の手」から犯行声明が届く。
天辺恭子
インテリアデザイナー[ep 5]。石塚の事故より以前に、首都高速四号新宿線上り車線を走行中、突然めまいに襲われ壁に接触する軽微な事故を起こしていた。
高藤英治
企業の研究部門に勤務していたが、人事異動で研究部門から外され、納得できずに会社を退職している[ep 5]
河田由真
高藤の交際相手[ep 5]。3年前に役者を目指し山形から上京し、バイトなどで食いつないでいた。

書誌情報

タイトル初出
落下る(おちる)オール讀物』2006年9月号
操縦る(あやつる)別册文藝春秋』第274号(2008年3月号)
密室る(とじる)GIALLO』(光文社)2008年SUMMER号
指標す(しめす)書き下ろし
攪乱す(みだす)『別册文藝春秋』第276号(2008年7月号)

テレビドラマ

脚注

外部リンク

Related Articles

Wikiwand AI