ナミヤ雑貨店の奇蹟
日本の小説作品
From Wikipedia, the free encyclopedia
『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(ナミヤざっかてんのきせき)は、東野圭吾の長編小説。第7回中央公論文芸賞受賞作品[1]。
| ナミヤ雑貨店の奇蹟 | ||
|---|---|---|
| 著者 | 東野圭吾 | |
| 発行日 | 2012年3月30日 | |
| 発行元 | 角川書店 | |
| ジャンル | ミステリ、ファンタジー | |
| 国 |
| |
| 言語 | 日本語 | |
| 形態 | 四六判 | |
| ページ数 | 385 | |
| 公式サイト | www.kadokawa.co.jp | |
| コード |
ISBN 978-4-04-110136-0 ISBN 978-4-04-101451-6(文庫) | |
|
| ||
| ||
概要
制作背景
東野はもともとロバート・A・ハインラインのSF小説『夏への扉』や、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』などタイムスリップを題材とした物語に強い関心を抱いており、小説や映画に触れる中で、時空を超えて展開する物語の普遍的な魅力を感じていた[5]。
過去作『時生』では、主人公ではなく未来の息子が時空を越えるという工夫を凝らし、読者と登場人物の認識のズレを活かした構造を試みている[5]。こうした経験を踏まえ、東野は「周辺の人物を軸にしたタイムスリップもの」という新たな発想に至り、さらにこれまでにないタイムスリップを題材とした物語を書きたいという思いを強めていった[5]。
そして構想した作品では、人そのものが時空を移動するのではなく、「手紙」が過去と未来を行き来するという新な仕掛けを採用することにした[5]。過去の人間とやり取りができたなら何を書くかという空想から、「悩み相談」というアイデアが生まれ、未来を知る現代の人間が、過去に生きる人々の悩みに答えるという構図を据えた[5]。ただし、その構図の実現には手紙のやり取りを成立させる仕組みを作り上げる難題が立ちはだかり、試行錯誤の末、一軒家の雑貨店を媒介とし、店のシャッターの小窓や牛乳箱を通じて手紙が行き来する独自の仕組みを考案した[5]。
やがて、この不思議な仕組みが成立する背景として、雑貨店の店主と子どもたちの遊びから始まった「悩み相談」が設定され、「ナミヤ雑貨店」という舞台を形作った[5]。物語は複数のエピソードで構成し、迷いを抱えた未熟な若者たちが過去からの手紙に向き合う第1話、過去の相談者側の視点を描く第2話、店主の過去に迫る第3話、そして手紙が人生に与えた影響を辿る第4・第5話へと展開し、次第に物語の核心と秘密が明らかになっていく構成とした[5]。
このようにして完成した本作は、構想段階では困難を極めたものの、執筆が始まると物語が自然に広がっていったという[5]。東野自身にとっても、人が人生の岐路に立ったときの選択を問い続ける貴重な創作体験となった[5]。そして読者に「こんな小説は読んだことがない」と感じてもらうことこそが、本作に込めた最大の願いとなった[5]。
あらすじ
第一章 回答は牛乳箱に
コソ泥をして逃亡中の敦也、翔太、幸平は、盗んだ車が突然動かなくなり、以前翔太が見つけた廃屋「ナミヤ雑貨店」に仕方なく逃げ込み、夜明けを待つことにした。三人が店を物色していると、突然シャッターの郵便口に手紙が投げ込まれた。手紙を開けると、そこには月のウサギと名乗る者からの悩み相談が書かれていた。店に残っていた雑誌によると、ナミヤ雑貨店はかつて、店主が投函された相談に一生懸命答えてくれることで有名だった。敦也は放っておこうと言うが、翔太と幸平は「こんな機会でないと人の相談に乗れない」と返事を書くことを決意する。三人は手紙の内容に戸惑いながらも、夜の静けさの中でペンを握った。店内には埃をかぶった棚や古い雑貨がひっそりと並び、月明かりが差し込む。手紙を書く手が思わず震える。
第二章 夜更けにハーモニカを
ミュージシャンを目指す克郎は、慰問演奏のため児童養護施設「丸光園」を訪れた。子供たちは演奏を楽しく聞いていたが、その中に一人だけ克郎を見ようとしない女の子がいた。克郎はその子を喜ばせようと様々な曲を演奏したが、全く効果はなかった。音楽に興味がないのだと諦め、演奏会の終わりに必ず演奏する自分のオリジナル曲を演奏すると、突然女の子は興味を示し、克郎に話しかけてきた。克郎は驚きつつも笑顔で応じ、女の子の目を見ながら演奏を続けた。周囲の子供たちも静かに耳を傾ける中、二人だけの小さな時間が流れ、克郎は音楽の力で人の心を動かせることを実感した。
第三章 シビックで朝まで
貴之は、父親の雄治が運営するナミヤ雑貨店を訪れ、店を畳んで二世帯同居しようと持ちかけた。しかし雄治は、悩み相談に答えることを生きがいにしており、いつもその話に耳を傾けようとしなかった。だが突然、雄治が潮時だと言い、店を畳んで貴之と同居すると言い出した。
第四章 黙祷はビートルズで
浩介は、事故で急死した従兄の遺品であるビートルズのレコードを譲り受け、それをきっかけにビートルズのファンになった。裕福な家庭だったため、部屋には最新型のアンプやスピーカーが置かれ、友人たちにビートルズを聞かせたりしていた。そんなある日、友人からビートルズの解散の話を聞かされた。
第五章 空の上から祈りを
夜明けまであと一時間となった時、新たに手紙が投函された。迷える子犬と名乗る19歳の女性から、OLを辞めて水商売に専念したいが、どうすれば良いかという相談だった。敦也、翔太、幸平の三人は、軽い気持ちの女性だと決めつけて返信するが、その後の返信で迷える子犬が詳しい事情を告げると、三人の考えは一変する。
登場人物
- 敦也(あつや)
- 三人組のリーダー格。
- 翔太(しょうた)
- 小柄で、顔にはまだ少年のような面影を残す。
- 幸平(こうへい)
- 大柄だが、気が弱い一面を持つ。
- 月のウサギ
- 第一章に登場する相談者。ある競技でオリンピック代表候補となるも、恋人の癌が発覚し、今後の身の振り方に苦悩し雑貨店に手紙を送る。
- 松岡 克郎(まつおか かつろう)
- 第二章に登場する相談者。ミュージシャンとして活動するも成果が出ず、夢を追い続けるか実家の魚屋を継ぐべきか迷い、「魚屋ミュージシャン」と名乗って雑貨店に手紙を送る。
- 和久 浩介(わく こうすけ)
- 第四章に登場する相談者。ビートルズのファンであり、ある悩みを相談するため「ポール・レノン」という偽名で雑貨店に手紙を送る。
- 武藤 晴美(むとう はるみ)
- 第五章に登場する相談者。昼はOLとして働き、夜は水商売に従事している。自立した生活を志しており、穏便な形で会社を辞める方法を「迷える子犬」という名で雑貨店に手紙を送る。
- 浪矢 雄治(なみや ゆうじ)
- ナミヤ雑貨店の店主。妻の死をきっかけに意気消沈していたが、悪戯から始まった悩み相談に真摯に向き合うことを生きがいとする。
- 浪矢 貴之(なみや たかゆき)
- 浪矢雄治の息子。店の経営状況を案じ、雄治に同居を勧める。
書誌情報
- 単行本:2012年3月28日発売[6]、角川書店、ISBN 978-4-04-110136-0
- 文庫本:2014年11月22日発売[1]、角川文庫、ISBN 978-4-04-101451-6
- 文庫本:2017年9月15日発売[7]、角川つばさ文庫、ISBN 978-4-04-631744-5
舞台
演劇
演劇集団キャラメルボックス版
2013年に演劇集団キャラメルボックスにより東京・サンシャイン劇場(5月11日 - 6月2日、26公演)、神戸・新神戸オリエンタル劇場(6月9日 - 16日、9公演)の2会場で上演された[8][9]。脚本・演出は成井豊。一部ダブルキャスト。
上演されたのは「夜明けにハーモニカ」「シビックで朝まで」「空の上から祈りを」の3編で、時間の都合上「回答は牛乳箱に」と「黙禱はビートルズで」はカットされた[10]。それに伴い、本来その編では出てこないはずの人物が出てきたりなどの変更がある。また、翔太が翔子、皆月良和が皆月良子と性別が変更された。
キャスト(演劇2013年)
- 桐生 敦也 - 多田直人
- 太田 翔子 - 渡邊安理
- 伊勢崎 幸平 - 筒井俊作
- 松岡 克郎 / 浪矢 敏則(貴之の息子) / 小塚 繁和 - 畑中智行
- 松岡 健夫 / 安中 玄太(百点小僧) / 外嶋 英輔(リトルドッグ専務) - 左東広之
- 松岡 加奈子 / 浪矢 頼子 / 武藤 晴美 - 岡田さつき
- 松岡 栄美子 / 川辺 若菜(川辺ミドリの娘) / 小塚 公子 - 林貴子
- 松岡 重造(克郎の叔父) / 浪矢 駿吾 / 富岡 信二 - 鈴木秀明 / 毛塚陽介
- 皆月 良子 / 川辺 ミドリ - 前田綾
- 水原 セリ / 皆月 暁子 - 原田樹里
- 館林 寛子(皆月家女中) / 水原 タツユキ / 田村 秀代 - 笹川亜矢奈 / 小林春世
- 沼田 静人(皆月家使者) / 浪矢 貴之 / 苅谷 創一(副館長) - 阿部丈二
- 浪矢 雄治 - 西川浩幸
ネビュラプロジェクト版
2016年に「ネビュラプロジェクト・ぴあ・シアターBRAVA!presents」と冠して東京・Zeppブルーシアター六本木(2016年4月21日 - 5月1日、12公演)、大阪・シアターBRAVA!(5月6日 - 8日、4公演)の2会場で上演された[11][12]。2013年の演劇集団キャラメルボックスの公演と同じく脚本・演出は成井豊だが、今回はプロデュース公演である[13]。
キャスト(演劇2016年)
NAPPOS PRODUCE版
2022年に「NAPPOS PRODUCE」版として東京・サンシャイン劇場(2月26日 - 3月6日、9公演)にて上演された。脚本・演出はこれまでのストレートプレイ版と同様に成井豊[14]。
キャスト(演劇2022年)
東野圭吾シアター版
2026年に「東野圭吾シアターVol.2」として東京・サンシャイン劇場(5月16日 - 24日、8公演)、大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール(6月6日 - 7日、3公演)の2会場で上演された。脚本・演出はこれまでのストレートプレイ版と同様に成井豊[15]。
キャスト(演劇2026年)
ミュージカル
イッツフォーリーズ(2017年公演)
2017年にミュージカルカンパニー イッツフォーリーズにより東京・ポケットスクエア ザ・ポケット(5月17日 - 21日、8公演)で上演された[16][17][18]。
キャスト(ミュージカル2017年)
- 敦也 - 加藤木風舞
- 翔太 - 吉村健洋
- 幸平 - 井原和哉
- 浪矢雄治 - 森隆二
- 皆月暁子 - 水谷圭見
- 浪矢貴之 - 大塚庸介 / 吉田雄
- 北沢静子 - 宮田佳奈 / 矢野叶梨
- 静子の恋人 - 前田龍佑
- 松岡克郎 - 吉田雄 / 大塚庸介
- 松岡加奈子 - 茂木沙月
- 松岡栄美子 - 富松真子 / 刀根友香
- 水原セリ - 田中愛実 / 滝川華子
- 武藤晴美 - 鈴木彩子 / 池田和
- 皆月和枝 - 中山圭 / 新井あゆ美
- 外島真里 - 山脇明日香 / 近藤美亜
- マヤ - 福間美里 / 大川永
- 百点娘 子供 - 三谷千季
- 百点娘 大人 - 大川永
- ガメラの友達 子供 - 福間美里
- ガメラの友達 大人 - 田中由衣
- ライトで八番 子供 - 東城由依
- ライトで八番 大人 - 向谷地愛
スタッフ(ミュージカル2017年)
- 脚本・作詞:大谷美智浩
- 演出:河本章宏
- 音楽:小澤時史
- 美術:根来美咲
- 照明:千田実 (CHIDA OFFICE)
- 音響:返町吉保(キャンビット)
- 舞台監督:上田実
- 衣裳:茂木沙月(イッツフォーリーズ)
- 振付:池田和(イッツフォーリーズ)
- 歌唱指導:中山圭(イッツフォーリーズ)
- 宣伝写真:花田龍之介
- 協力:株式会社KADOKAWA
- プロデューサー:明羽美姫(イッツフォーリーズ)、𡈽屋友紀子(オールスタッフ)
- 主催:株式会社オールスタッフ
- 主催・企画・制作:ミュージカルカンパニー イッツフォーリーズ
イッツフォーリーズ(2020年公演)
2020年にミュージカルカンパニー イッツフォーリーズにより東京・俳優座劇場(3月26日 - 31日、8公演)で再演された[19][20][21][22]。
キャスト(ミュージカル2020年)
スタッフ(ミュージカル2020年)
イッツフォーリーズ(2025年公演)
2025年にミュージカルカンパニー イッツフォーリーズにより東京・こくみん共済 coop ホール / スペース・ゼロ(3月19日 - 23日、6公演)で3度目の上演が行われた[23][24]。
キャスト(ミュージカル2025年)
スタッフ(ミュージカル2025年)
- 脚本・作詞:大谷美智浩
- 音楽:小澤時史
- 演出:磯村純(青年座)
- 美術:根来美咲(青年座)
- 振付:明羽美姫(イッツフォーリーズ)
- 編曲:田中和音
- 照明:鷲崎淳一郎(ライティングユニオン)
- 音響:返町吉保(キャンビット)
- 衣裳:柿野彩
- 歌唱指導:佳田亜樹
- 舞台監督:岩戸堅一(アートシーン)
- 宣伝写真:金井恵蓮
- 宣伝ヘアメイク:中原雅子
- 宣伝衣裳:藤村陽子
- 協力:株式会社KADOKAWA、ABP、株式会社ウォークゼロ、有限会社オーチャード、有限会社ジャンクション、劇団昴、劇団青年座、東宝芸能株式会社、特定非営利活動法人あそびと文化のNPO新宿子ども劇場
- 主催:こくみん共済 coop <全労済>
- プロデューサー:𡈽屋友紀子、松本崚汰
- 主催・企画・制作:株式会社オールスタッフ、ミュージカルカンパニー イッツフォーリーズ
映画
日本版
2017年9月23日に公開[25]。主演はHey! Say! JUMPの山田涼介[2]。
中国版
香港・中国・日本合作映画。中国で2017年12月29日に公開[3]。メインキャラクターが男性3人から男性2人と女性1人に変更されており[3]、時代背景は1993年と2017年になっている[26]。日本では2018年10月13日公開[27]。