ミャンマーの希土類元素
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ミャンマーの希土類元素(ミャンマーのきどるいげんそ)。希土類元素はレアアースとも言う。レアアースには重希土類元素と軽希土類元素があるが、ミャンマーで採掘されるのは重希土類元素で、特にテルビウムとジスプロシウムの世界最大の生産地である。これらの元素は、スマートフォン、風力タービン、電気自動車など、さまざまな技術に使われる永久磁石の製造に不可欠な要素である[1]。
ミャンマーで採掘されたレアアースは、ほとんどが中国へ輸出されている。しかし、これに関する公式登録やデータははなく、中国に輸出されるレアアースのうち、どの程度が公式ルートを経由し(中国の貿易データにも記録される)、どの程度が国境を越えて密輸されているかも不明である[1]。
英国王立国際問題研究所資源貿易局のデータによると、ミャンマーから中国へのレアアースの輸出額は2018年から増え始め、2021年には約8億1,200万ドルに達した。カチン州における紛争の激化と国境封鎖が原因で、2022年には輸入量が3万4,241トン、貿易額が約7億7,300万ドルに減少したものの、2023年には再び増加に転じ、輸入量は4万1,700トン、貿易額は14億ドルに達したとされる。2018年以降の激増の原因は、2016年から中国国内におけるレアアースの違法採掘や環境破壊に対する取り締まりが強化されたことにある。また、2021年ミャンマークーデター後の増加は、鉱区を管理するカチン新民主軍(NDA-K)やカチン独立機構(KIO)/カチン独立軍(KIA)[2]が軍資金を確保するために採掘量を増やしているためである[1]。
中国税関総署が発表した2025年1~4月の貿易統計によると、同期間のレアアース輸入の約48.8%がミャンマーからだった[3]。

ミャンマーにおけるレアアース採掘の大部分は、2024年10月までミャンマー軍(国軍)指揮下のNDA-K(カチン国境警備隊)が支配していた[4][5][6]、カチン州北東部の町チプウィと国境の町パンワを中心とする地域で行われており、ほかに小規模な採掘が、KIO支配地域であるカチン州バモー県の山岳地帯にあるンカウン・パ(Nhkawng Pa)という町で行われている[1]。
1960年代初頭から1980年代後半まで、KIO、国軍、ビルマ共産党(CPB)が三つ巴の戦いを繰り広げており、多くの人々が戦禍を逃れミッチーナーやワインモーなどの都市部へ移住し、残った人々はアヘン栽培に従事した[注釈 1][7]。
しかし、1990年代半ばまでにKIO、NDA-Kと国軍との停戦合意が成立。平穏が戻り、都市部に移住した人々も戻ってきた。カチン州は中国経済と強く結びつけられ、アヘン栽培のほか、チプウィ/パンワではクルミ、マルメロ、黒カルダモン、茶、中国杉などが、バモー県ではサトウキビ、レモングラス、茶、タケノコ、白ショウガ、クルミ、松材などが栽培され、中国へ輸出された[8]。
2011年、KIOと国軍との間の停戦合意が破れ、戦闘が再開、再び人々は都市部に逃れた。そして前述したように、中国の国内事情により、2016年頃からこの地域でレアアース採掘が始まり、2021年クーデター後に急増している。チプウィ/パンワで採掘されたレアアースはパンワとカンパイティにある中緬国境検問所を経由で、ンカウン・パで採掘されたレアアースは、マイジャヤン(Mai Ja Yang)にある国境検問所を経由して中国に輸出されている。後者は2021年からの大量採掘により、多くの鉱床が枯渇寸前になっていると言われている[1]。
採掘方法
1.採掘許可
採掘会社は操業開始前に、NDA-KまたはKIOから採掘許可を得なければならない[注釈 2]。契約期間は通常、鉱区内でレアアースを掘り尽くすのに必要な最長期間とされる3年間で、採掘会社は採掘許可と採掘活動に関するさまざまな保証と引き換えに、前払い一括でロイヤリティを支払う[9]。
契約形態には、採掘会社がKIOまたはNDA-Kと合弁事業を設立して、前払い金のほか、収益の一部をKIO、NDA-Kに支払うケースや、KIOまたはNDA-Kと関係の深い実業家と提携するケースや、小規模な採掘会社が許可を得た大規模な採掘会社に代金を払って、さらに採掘の許可を得るケースなどがある[9]。
KIOは中央集権化されていない組織なので、採掘会社はKIOから許可を得た後、さらに地元有力者に前払い金を支払って推薦状を得たり、村の基金に寄付したり、道路や教会の建設を約束しなければならない。また、NDA-K支配地域およびKIO支配地域のいずれの地域においても、地元の部隊から日常的に金銭を請求されるケースがある[9]。
2.探鉱
許可を得た後、採掘会社は、中国人現場管理者や技術者のための宿泊施設の建設、土地の開墾、道路の改修、現地労働者の雇用など、採掘に必要なインフラを整備する。中国人現場管理者・技術者は、NDA-KまたはKIOの出入域管理事務所に登録しなければならない。その後、作業員チームを派遣して土壌サンプルを採取する。数メートルの深さにある土壌を採取し、化学溶液と混合した簡易試験で溶液が乳白色に変色すれば、土壌に高濃度のレアアースが含まれていると判断される。こうした採取結果にもとづき、鉱区内のどの丘陵斜面で原位置浸出を行うかが決定される[9]。
3.土地の購入
採掘場所を決定すると、採掘会社はその土地を購入する。レアアースの採掘地となっている高地の多くは、形式上は共同所有地とされているが、実際の管理は地域の慣習にもとづいて行われている。その慣習では、土地を開墾して農地にした人が、その土地の所有者とみなされ、その結果、広い共同所有地の中に、個人が事実上所有・利用している土地(私有地)が点在する状態が生じている[9]。
チプウィ/パンワではNDA-Kと関係の深い実業家が、まず、村長などから共同所有地が自らに譲渡されたことを示す書面を取得し、NDA-Kおよび政府の郡区事務所で[注釈 3]、「空閑地・休閑地・未開墾地(Vacant, Fallow and Virgin Land:VFV)」として、個人名義で土地登記をする。つまり、共同所有地内の私有地は「不法占拠」とされて考慮されない。またこの際、実業家が郡区事務所の政府職員に多額の賄賂を支払うケースもある[9]。
その後、実業家は土地を採掘会社などに売却するが、その価格は300~500エーカー当たり200万~500万人民元[注釈 4](27万8,000~69万5,000ドル)とまちまちである。この際、実業家は村委員会に対して教会や学校、道路などの建設費用を提供したり、村内の世帯に金銭を配布したりすることがあるが、その金額はごくわずかであることが多い[9]。
4.原位置浸出法による採掘

カチン州でのレアアース採掘は、すべて原位置浸出法(in situ leaching)という方法で行われる[9]。
- 浸出(リーチング)の開始:丘陵斜面の上部に多数のボーリング孔(浸出液注入孔)を設置し、塩化アンモニウムや硫酸アンモニウムを水に溶かした浸出液を徐々に滴下させ、地下の粘土層にあるレアアースを溶解させる[9]。
- 浸出の促進と水循環:丘陵の中腹から下部にかけてポンプと配管網を設置し、水および浸出液を注入・回収することで、浸出液を粘土層全体に行き渡らせ、レアアースの回収効率を高める[9]。
- 回収・沈殿・回収物の取り出し:斜面下部の回収用坑道および配管から地表へ漏れ出たレアアースを含む溶液を回収槽に集める。そして、薬品を加えてレアアースを沈殿させ、回収槽の中の水を排出した後、レアアースを手作業で回収する[9]。
大規模な丘陵斜面では、回収効率を高めるため、斜面の高さに応じて回収工程を複数の層に分けて実施する。各層ごとに回収用坑道および回収槽を設け、上部から流下する浸出液を段階的に回収・処理する方法が一般的である。レアアースが枯渇すると、他の鉱床へ移動する[9]。
5.レアアース沈殿物の焼成
レアアースを含む沈殿物(湿潤沈殿物)は袋詰めされて焼却施設へ搬送され、大型炉で約48~72時間にわたり加熱処理される。この工程により、沈殿物中の水分や揮発成分が除去され、乾燥したレアアース酸化物(レアアース精鉱)が生成される。一般に、湿潤沈殿物3~4袋から、乾燥した精鉱1袋が得られる[9]。
6.中国への輸出
焼成後に得られたレアアース精鉱は再び袋詰めされ、ミャンマーの地元運送業者により中緬国境まで輸送される。KIOまたはNDA-K と関係のある民兵組織が国境までの主要道路沿いに複数の検問所を設置し、トラックから少額(通常100~200人民元(14~28ドル))を徴収する。前述したように、チプウィ/パンワで採掘されたレアアースはパンワとカイパティの国境検問所経由で、ンカウン・パで採掘されたレアアースはマイジャヤンの検問所経由で中国に輸出されるが、その際、運送業者はトラックの積載量に応じて関税を支払わなければならない。レアアース精鉱が入った袋は国境で荷降ろしされ、中国のトラックに積み替えられる。レアアースはミャンマー国内では一切加工されず、中国で精製される[9]。
労働条件
労働者の属性
チプウィ/パンワには2024年の時点で約2万人、ンカウン・パには約1,000人の労働者がいるとされる。2021年クーデター以降、レアアースの採掘量が急増したことに伴い、労働者数も増加している。また、中国語がある程度できる人々は通訳や人材派遣会社社員など、より高給な仕事を得られる[8]。
労働者の大半はカチン州内のミッチーナー、ワインモー、パカン、モガウン、バモー、モーマウッなどから来たカチン族とシャン族の15歳~50歳までの男性だが、女性も若干いる。労働者のバックグランドは借金を背負った者、土地を収奪された農民、軍事独裁政権に反対して退職した元公務員、大学を中退した元学生などさまざまだが、大半は国軍とKIOとの戦闘で自宅を失った国内避難民(IDP)である。チプウィとパンワには、他にもザガイン地方域やラカイン州からの移民労働者もおり、これらの人々の中には、パカンの翡翠鉱山での仕事を求めてカチン州に移住し、その後やって来た人々もいる。ただし、NDA-Kが他地域からの移住を制限しているので、その数は少ない[8]。
彼らの大半は農閑期を利用して働く農民など、一時的な雇用で、通常、数か月働いた後、故郷に戻る。採用の際には、人材派遣会社に20万~30万チャット(約95~143ドル)、時には100万チャット(約477ドル)の仲介料を支払うこともあるが、詐欺に遭って泣き寝入りするケースも少なくない。月給は84万~136万チャット(約400~650ドル)で、パカンの翡翠鉱山のように「翡翠を見つけて一攫千金」のような夢はないが、より安定した高給を得られる。ただ、クーデター後は労働力の供給過多により、賃金は低下傾向にある[8]。
労働者の管理
労働者はNDA-Kが発行した労働許可証を常に所持することが義務づけられている。労働者はチプウィまたはパンワにある出入域管理事務所で、ミャンマーの身分証明書を提示し、100~300人民元(約14.5~43.5ドル)の発行代を支払えば、2日~1週間後に許可書を取得できる。有効期間は1か月~1年である。鉱区内の検問所は通る際は必ず提示しなければならない。2021年クーデター後、大量の労働者が流入したため、許可手続きも検問所のチェックも厳格化された。許可書を持っていない労働者は、警備に当たっている民兵に身柄を拘束されたり、罰金を科せられたり、時には暴行を受けることもある[8]。
KIO管理下のバモーでは、労働者のほとんどが近隣の村落の住民なので、労働許可証を取得する必要はない[8]。
労働者の職種
| 職種 | 業務内容 | 雇用形態 | 主な就労者 | 賃金(2023年) |
|---|---|---|---|---|
| 会社幹部 | ミャンマー国内における企業活動全体の管理 | 直接雇用(主に中国国内で雇用後、ミャンマーへ渡航) | 主に江西省出身の中国人[注釈 5]。 | 不明 |
| 技術者 | 探鉱、採掘現場の建設、機械設備(特に水ポンプ)の設置・管理 | 同上 | 同上 | 不明 |
| 現場管理者 | 現場での採掘作業全体の統括、地元当局・労働者との調整、賃金管理 | 地元で募集され企業に直接雇用 | 中国語が話せる地元住民 | 不明(操業成果に応じたボーナス含む) |
| レアアース探鉱作業員 | 鉱区全体での土壌サンプル採取 | 地元で募集され企業に直接雇用。安全だが短期雇用。 | 地元住民および鉱山地域に流入した労働者 | 1日100~200人民元(約14.5~29ドル)[注釈 6] |
| ボーリング孔掘削作業員 | 浸出液を注入する配管網の敷設・掘削 | 企業に直接雇用されず、丘陵の穴に挿入するパイプの長さに応じて賃金が支払われる。出来高払い。2~3か月の短期雇用で、社会保障なし。しかし、かなり割りの良い仕事とされる。 | 同上。ほとんど男性。 | 1日最大300人民元(約43ドル、諸経費自己負担)[注釈 7] |
| 井戸掘削技術者 | 丘陵斜面へのボーリング孔掘削 | 技術者として企業に直接雇用 | 主に江西省出身の中国人 | 不明 |
| 浸出液注入・水管理作業員(ウォーターウォッチャー) | 丘陵斜面で浸出液注入・水循環の監視 | 地元で募集され企業に直接雇用。昼夜交代制の24時間体制。 | 地元住民および流入労働者。集中力が必要とされるので、飲酒の習慣がない女性が多い。 | 月額約3,500~4,000人民元(約506~578ドル) |
| 回収用坑道掘削作業員 | 浸出液の回収用坑道掘削 | 企業に直接雇用されず、出来高払い。トンネル崩落、土砂崩れの危険性が伴うので高給。 | 地元住民および流入労働者 | 月収6,000~7,500人民元(867~1,084ドル、諸経費自己負担) |
| 回収槽建設・沈殿物回収作業員 | 斜面下部での回収槽建設、薬品投入、沈殿物の掘り出し | 地元で募集され企業に直接雇用 | 同上 | 月額約3,500~4,000人民元(約506~578ドル) |
| 焼成炉作業員 | レアアース沈殿物を壺に入れ、48~72時間焼成 | 同上。健康被害があるので、やや高給。 | 同上 | 月額約4,000~4,500人民元(約506~650ドル) |
| 一般労働者 | 寮建設、薪集め、機材運搬など雑務 | 同上 | 同上 | 日給換算約120人民元(約17ドル) |
地域社会に与える影響
環境への影響
環境破壊
採掘会社は、採掘プロセスで使用する大量を水を近隣の河川から汲み上げる。そして、塩化アンモニウムまたは硫酸アンモニウムが混じった浸出液が土壌を通ってその河川に流れ込み、レアアース回収後に残った廃水も河川に戻している。また、レアアースが枯渇した後は、設置した回収槽を放置しており、そこに残った廃水も土壌・河川を汚染している。このように、採掘会社は農業に不可欠な地域の水源を枯渇させ、水、食料、漁業収入源として人々が日常的に利用している水資源を汚染している[7][10][11]。
また、焼成のプロセスでは大量の薪が必要となるため、鉱山周辺の森林破壊が進んでおり、大気汚染も問題となっている[7]。
さらに、鉱区では地滑りが頻繁に発生しており、多くの死傷者を出している。地滑りの危険性は雨期(5月~8月)がもっとも高く、2024年には6月4日と6月19日に、パンワで大規模な地滑りが発生し、1回目の地滑りでは20人以上が死亡し、2回目の地滑りでは50人以上の作業員が行方不明となった[7][12]。
農業不振
鉱山周辺の農地では、水資源の枯渇により収穫量が激減している。稲作を営むある農家は「渓流の水を使って農地を耕作すると、レアアース採掘に使われる化学物質が土壌に浸透する。稲は生き残るが、発育が遅れ、黄色くなり、傷む」と証言している。また、中国人バイヤーが農作物への汚染を懸念して、クルミ、マルメロ、黒カルダモンなどを購入しなくなり、農家は経済的にも大打撃を受けている[7]。
社会への影響
生計への影響
採掘会社に土地を売却することで巨額の利益を得、ゲストハウスなどの地元事業を立ち上げたり、車などの高額商品を購入したり、ミッチーナ、ワインモーなどの都市で土地を購入して家を建てたりする者が現れている。前述したように、そのような土地は私有地を内包する共同所有地である場合が多く、ゆえに所有権をめぐる争いが生じているが、土地の売買から採掘会社、実業家、NDA-Kが利益を得ているので、地元住民が抗議するのは難しい状況にある[7]。
また、レアアース鉱山は、地元住民およびカチン州全体に比較的高賃金の就業機会を提供している。バナナ園などのカチン州の他の産業では、賃金が安く、地元のメディア・市民団体・武装勢力とのつながりのない他地域の労働者が好まれる傾向があるが、レアアース鉱山では、アクセスの容易性と地元の人材派遣会社を通しているという事情から、地元住民がより多く雇用されている。また、前述したように、レアアース鉱山では、翡翠鉱山に比べてより安定した高給を得られるというメリットがある。ただし、レアアース採掘が終焉し、これらの雇用が失われた後、残されたのは汚染された水資源と農地、農産物市場の喪失、大規模な土地移転であり、地域の将来が懸念されている[7]。
犯罪の増加
レアアース鉱山の労働は過酷な肉体労働であり、また労働者たちが比較的多額の現金を所有していることもあり、アヘン、ヘロイン、メタンフェタミンなどの麻薬が蔓延し、彼らを標的とした小規模な賭博場が開かれ、身を持ち崩す労働者が少なくない。また、数少ない女性労働者が性暴力の被害に遭うことがあり、人材派遣会社や採掘会社の中国人上司から仕事の紹介と引き換えに肉体関係を要求されることもある。さらに、これらの上司たちは、地元のカチン族の少女たちに売春の相手をさせている。このような事情から、レアアース鉱山で働く女性たちは「鉱山で働く女性とは結婚してはいけない」という偏見に晒され、地元住民の反中感情を助長している[7]。
地域社会の緊張
レアアース採掘をめぐる賛否で、地元の世論が二分されている。また、地域社会と武装組織との緊張も高まっており、KIO支配地域では、レアアース、翡翠、金、木材などの天然資源採掘を通じてKIO幹部と関係する実業家が巨額の利益を上げている一方、利益が地元に還元されず、環境・生活基盤の破壊になんら対策を取っていないという批判がなされている[13]。また、NDA-K支配地域では、レアアース採掘を通じて、NDA-Kが巨額の利益を得、警察力を担うなど、地元支配を強化している[7]。
2021年クーデター後の動き
カチン州
前述したように、2021年クーデター以降、カチン州ではレアアースの採掘量が激増し、それに伴う環境・生活基盤の破壊の問題も深刻化した[14]。2022年末から2023年にかけて、KIOが中国人実業家にバモー県の他の地域でのレアアース採掘を許可したことに対して、地元ではカチン・バプテスト連盟(KBC)とローマ・カトリック教会主導で、採掘中止を求める抗議運動が巻き起こった。KIOは国軍に対抗するための携帯式防空ミサイルシステムなどの対空兵器を購入するために必要な措置だと住民に説明したが、抗議運動は収まらず、2023年4月15日、KIO議長ン・バンラは、1,600人が参加したマイジャヤンでの集会で、レアアース採掘を中止する旨を発表した[7][15]。
2024年10月、KIOはチプウィ/パンワ地域を掌握。国軍との戦闘停止を求める中国との関係が悪化し、中緬国境貿易がたびたび停止されている事態を鑑みて、KIOは新たなレアアース供給先を模索しており。また、アメリカがカチン州のレアアースに関心を示しているとも伝えられている[16][17][18]。2025年12月、KIOがインドと秘密協定を締結し、インドがアルナーチャル・プラデーシュ州ビジャヤナガル(Vijaynagar)からカチン州チプウィのレアアース鉱山までの365キロメートルの道路を建設していると報じられた。インドがレアアースにアクセスできる見返りとして、KIOに兵器、医薬品、その他の兵站支援を提供することになっているとされる[19]。一方、レアアースはインドを経由してアメリカへ輸出される可能性があるとも指摘され、カチン州のレアアースをめぐって米中の対立が生じる可能性も示唆されている[20][18]。
ワ州
2019年頃からワ州連合軍(UWSA)が支配するワ州と、民族民主同盟軍(NDAA)が支配するシャン州第4特区でもレアアースの採掘が行われており、2025年の時点で前者に31箇所、後者に26箇所のレアアース鉱山があるとされる[21][22][23]。2024年10月にKIOがチプウィ/パンワ地域を掌握し、この地域での戦闘が激化したことにより、中国がレアアースの供給源を良好な関係にあるUWSAとNDAAの支配地域に移動したものと考えられている[3][24]。しかし、これらの地域のレアアース採掘は、現地および下流地域で、地下水汚染、河川汚染、土壌劣化、生態系破壊などの深刻な環境破壊の問題を生じさせており、タイのチェンラーイ県では観光業と農業が大きな打撃を受けているのだという[23]。