雪山シリーズ

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雪山シリーズ』(ゆきやまシリーズ)は、東野圭吾による日本小説で、スキー場を舞台とする小説シリーズの総称[1][注 1]

新月高原スキー場(『白銀ジャック』)、里沢温泉スキー場(『疾風ロンド』と『雪煙チェイス』)などスキー場を舞台とするシリーズ[ep 1][ep 2][ep 3]

月刊J-novel』(実業之日本社)に2008年10月号から2010年9月号まで連載され、2010年10月5日に実業之日本社文庫創刊第1弾の文庫オリジナルとして『白銀ジャック』が刊行され[2][3]、2013年11月15日に実業之日本社文庫から文庫書き下ろしで『疾風ロンド』が刊行された[4][5]。2016年には、実業之日本社文庫から文庫書き下ろしで『雪煙チェイス』が刊行された[6]

東野は『白銀ジャック』と『疾風ロンド』、『雪煙チェイス』の3作品を「雪山三部作」と呼び、『雪煙チェイス』で雪山を舞台とする作品を描き切ったと考え、シリーズに一区切りをつけたと述べている[1]。シリーズごとに事件に対峙する中心人物を変えながら、その周辺人物として、スキー場のパトロール隊員・根津昇平とスノーボード選手・瀬利千晶の二人がシリーズを通して登場する。

『疾風ロンド』と『雪煙チェイス』の舞台である里沢温泉スキー場のモデルは長野県の野沢温泉スキー場である[1]。また、後述の映画『疾風ロンド』、テレビドラマ『雪煙チェイ』はモデルとなった野沢温泉スキー場がロケ地となっている[7][8]

シリーズの累計発行部数は、『白銀ジャック』が発売された翌月の2010年10月時点で100万部[9][注 2]、『疾風ロンド』が発売された2013年11月時点で200万部[10][注 3]を突破している。

2014年に『白銀ジャック』がテレビドラマ化され[11]、2016年には『疾風ロンド』が映画化された[7]。また、2026年には『雪煙チェイス』がテレビドラマ化された[8]

2013年に『白銀ジャック』の、2016年に『疾風ロンド』のコミック版がマンサンコミックス(実業之日本社)から発売されている[12][13]

制作背景

東野が雪山シリーズを執筆するきっかけは、2002年にスノーボード誌『SnowBoarder』(実業之日本社)の編集長からの誘いで初めてスノーボードを体験したことにある[14]。44歳での初挑戦ながら半日で滑れるようになり、その魅力に強く惹かれ、以降はシーズンに30 - 40日も滑るほど熱中した[14]

やがて東野は「この楽しさを小説で表現したい」と考えるようになるが、当時はスキー・スノーボード人気が低迷期にあった。そんな中、スキーを題材にしたある映画が公開され、マナーを無視する主人公像に失望した東野は「人任せにはできない」と感じ、自らゲレンデを舞台にした物語を創作する決意を固めた。こうして誕生したのが、スキー場爆破を脅す犯人と、それに立ち向かうスキー場の裏方たちを描いたサスペンス小説『白銀ジャック』である[14]。映画的な臨場感を重視し、娯楽性を前面に押し出したこの作品には「雪山の魅力を広めたい」という意図が込められている[14]。同じく雪山を舞台としたエンターテインメント小説『疾風ロンド』(2013年)、『雪煙チェイス』(2016年)が刊行され、出版社は「東野圭吾 雪山祭り」といった企画を展開し、雪山三部作としての連動性を強調した[15]

一方で東野は小説執筆のみにとどまらず、スノーボード文化そのものへの恩返しを模索した。国内の競技環境が十分でないことを背景に、2018年には発起人となり「SNOWBOARD MASTERS」を創設[16]。「日本一のスノーボーダーを決める大会」として、運営資金や賞金を私費で支えた[17]。彼は「スノーボードをしたおかげで、僕にはいろいろな出会いがありました。手に入れたものもたくさんあります。今の自分が存在する理由の8割方は、スノーボードがもたらしてくれたものだとすら思っています」と語り、この深い感謝の気持ちが開催の動機であったことを明言している[18]

登場人物

主要人物

倉田玲司(くらた れいじ)
演 - 渡辺謙[11](テレビ朝日)
『白銀ジャック』に登場する新月高原スキー場索道部マネージャーで技術管理者。未婚の40代男性[ep 1]
ゲレンデに爆弾を仕掛け金を要求する「埋葬者」を名乗る犯人と対峙する[ep 1]
栗林和幸(くりばやし かずゆき)
演 - 阿部寛[7](映画)
『疾風ロンド』に登場する泰鵬大学医科学研究所の主任研究員[ep 2]
上司の東郷からの命令で、研究所から盗み出された生物兵器「K-55」の回収を急ぐ[ep 2]
脇坂竜実(わきさか たつみ)
演 - 細田佳央太[8](NHK・NHK BS4K)
『雪煙チェイス』に登場する開明大学経済学部4年生[ep 3]。アウトドアスポーツサークル「マウンテン・モンキーズ」のメンバー。
アルバイトの雇い主を殺害した強盗殺人の容疑をかけられ、アリバイを証明する女性スノーボーダーの行方を追う[ep 3]
小杉敦彦(こすぎ あつひこ)
演 - ムロツヨシ[8](NHK・NHK BS4K)
『雪煙チェイス』に登場する所轄の刑事[ep 3]。40代で独身。強盗殺人事件の捜査にあたる。
上司からの命令で捜査一課を出し抜くため、刑事の身分を伏せて竜実の行方を追う[ep 3]

周辺人物

根津昇平 (ねづ しょうへい)
演 - 岡田将生[11](テレビ朝日)、大倉忠義[7](映画)、前田公輝[8](NHK・NHK BS4K)
『白銀ジャック』に登場する新月高原スキー場のパトロール隊員[ep 1][ep 2][ep 3]。パトロール歴5年の新月高原スキー場のパトロール隊員で、7歳のころからゲレンデで滑っていた[ep 1]
スノーボードクロス選手だが、『白銀ジャック』の物語が始まる1年前に北月エリアでスノーボーダーの接触による死亡事故が発生したのを境に、同じスノーボーダーとして責任を感じ大会への出場を自粛している[ep 1]
事件解決後、知り合いに誘われ、『疾風ロンド』登場時は里沢温泉スキー場のパトロール隊員となっている[ep 2]
オフシーズンは新潟の実家が営む建築会社で働いているが、雪深くなる時期は仕事にならないこともあり、パトロール隊員を務めている[ep 3]
瀬利千晶(せり ちあき)
演 - 山下リオ[11](テレビ朝日)、大島優子[7](映画)、武田玲奈[8](NHK・NHK BS4K)
『白銀ジャック』ではスノーボードクロスに取り組む勝ち気な20歳前後の女性スノーボーダー。[ep 1][ep 2][ep 3]
ゲレンデでトレーニングするため新月高原スキー場近くの居酒屋で住み込みでアルバイトをしており、脅迫事件を偶然知り根津と出会う[ep 1]
その後、『疾風ロンド』では大会出場のため里沢温泉スキー場を訪れ、根津とともに内容を伏せられたまま生物兵器K-55の回収に尽力する[ep 2]。「引退したくないけど、自分の限界を感じる」と根津にアスリートとしての苦悩を打ち明けるが一念発起し、「優勝したらデートしましょ」と根津を誘い、大会で優勝を飾る[ep 2]
その後『雪煙チェイス』登場時は競技生活で結果を残せず、親友の莉央がプロデュースする彼女の姉・葉月のゲレンデ・ウェディングの演出に協力する中で自らの引退を受け入れる決断を下し、実家が経営する保育園の職員になると根津に告げる。しかし新郎新婦の葉月と長岡たちの代理で、根津と一緒にゲレンデ・ウェディングで滑走を務めたことで根津と両想いであることが分かり、婚約に至る[ep 3]

カッコウ

『疾風ロンド』『雪煙チェイス』に登場する里沢温泉スキー場内の山小屋を模した飲食店

高野誠也(たかの せいや)
演 - 志尊淳[19](映画)、中山優馬[8](NHK・NHK BS4K)
裕紀の兄[ep 2][ep 3]。『疾風ロンド』登場時はカッコウのアルバイト店員で、日焼けした肌に歯の白さが際立つ大学生[ep 2]
スキーの大会で何度も優勝したトップアルペンスキーヤーで、村の有名人[ep 2]
『雪煙チェイス』では里沢温泉スキー場でバックカントリーツアーのガイドを務めている[ep 3]
高野裕紀(たかの ゆうき)
演 - 望月歩[19](映画)、蒼井旬[20](NHK・NHK BS4K)
誠也の弟[ep 2][ep 3]。『疾風ロンド』登場時、板山中学2年生。幼なじみの健太と侵入したコース外で、ブナの木に打ち込んだ釘に吊るされたテディベアを発見し、事件に関わる[ep 2]
『雪煙チェイス』ではカッコウのアルバイト店員として登場、背は高いが華奢な体格の高校生と描かれている[ep 3]
川端健太(かわばた けんた)
演 - 前田旺志郎[19](映画)、込江大牙[20](NHK・NHK BS4K)
裕紀の幼なじみ[ep 2][ep 3]。『疾風ロンド』登場時は板山中学2年生。中学生ながらバックフリップ(後方宙返り)を決めるなど、スキーの上級者[ep 2]
『雪煙チェイス』ではひょうきんな雰囲気がある高校生として登場[ep 3]。裕紀とともに竜実たちに貸すウェアを用意し、ある悪戯をしでかす[ep 3]

用語

新月高原スキー場
『白銀ジャック』に登場する新月高原ホテルアンドリゾートが経営する新潟のスキー場[注 4]
里沢温泉スキー場
『疾風ロンド』と『雪煙チェイス』に登場する、長野駅からバスで1時間の禿鷹山にある日本有数の広さを誇るスキー場。
K-55
遺伝子操作を施したバイオセーフティーレベル4の新型炭疽菌。ペニシリンなどの抗生物質が一切効かない。『疾風ロンド』のキーアイテム。
エボナイト製の栓で蓋をされたガラス製の円筒に封入されており、摂氏10度以上になるとエボナイトの膨張でガラスケースが破損する。
カッコウ
高野誠也・裕紀兄弟の両親が経営する里沢温泉スキー場内の山小屋を模した飲食店[注 5]
広世観光株式会社
『白銀ジャック』の倉田玲司の出向元である観光事業を手掛ける企業。新月高原ホテルアンドリゾートは子会社。
泰鵬大学医科学研究所
『疾風ロンド』に登場する栗林和幸が所属する、主に感染症に関する研究が行われる施設。バイオセーフティレベル4の実験室が密かに稼働されている。
開明大学
『雪煙チェイス』に登場する脇坂竜実が学ぶ都内の大学。「ラプラスの魔女」シリーズの羽原全太朗が脳神経外科医を務める病院が付属する大学としても登場する。

シリーズ一覧

白銀ジャック

  • シリーズ第1作。文庫オリジナル。ゲレンデを爆破すると脅迫する犯人と、対するスキー場の裏方たちの姿を描く。
  • 文庫本:実業之日本社文庫、2010年10月5日発売[3] / (新装版)実業之日本社文庫、2023年10月6日発売[21]
  • 単行本:実業之日本社、2011年11月17日発売[22]

疾風ロンド

  • シリーズ第2作。文庫書下ろし。極秘に開発された生物兵器を巡り、雪山のスキー場で奪還戦が繰り広げられる。
  • 文庫本:実業之日本社文庫、2013年11月15日発売[5] / (新装版)実業之日本社文庫、2023年10月6日発売[23]
  • 単行本:実業之日本社、2014年12月11日発売[24]
  • 実業之日本社ジュニア文庫からジュニア版が刊行されている。新書:実業之日本社ジュニア文庫、2020年11月6日発売[25]

雪煙チェイス

  • シリーズ第3作。文庫書下ろし。殺人容疑をかけられた男子大学生がアリバイのために女性スノーボーダーを探す。
  • 文庫本:実業之日本社文庫、2016年11月29日発売[26] / 文庫新装版:実業之日本社文庫、2023年10月6日発売[27]

メディアミックス

漫画

白銀ジャック(漫画)

東野圭吾(原作) / 高柳衣良(作画) 『白銀ジャック』、〈マンサンコミックス〉全1巻

  • 2013年12月16日発売[12]ISBN 978-4-408-17473-0

疾風ロンド(漫画)

東野圭吾(原作) / 菊地昭夫(作画) 『疾風ロンド』、〈マンサンコミックス〉全1巻

テレビドラマ

白銀ジャック(テレビドラマ)

2013年に『白銀ジャック』がテレビ朝日系で放送された[11]。主演は渡辺謙

雪煙チェイス(テレビドラマ)

2026年に『雪煙チェイス』がNHK総合およびNHK BSプレミアム4Kで放送された[8]。主演は細田佳央太ムロツヨシ

映画

2016年に『疾風ロンド』が公開された[7]。主演は阿部寛[7]

SNOWBOARD MASTERS

東野圭吾が創設した日本一のスノーボーダーを決める大会[16]。スノーボードへの恩返しと次世代選手への支援を目的に東野の私費で運営され、実業之日本社が後援。2018年の初開催以来、オリンピアンや有力ライダーも参加する高レベルな大会として注目され[16]、大会に合わせて雪山シリーズを始めとする東野作品のプロモーションなども行われている。

関連項目

脚注

外部リンク

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