純粋なビスマスは半金属であり、小さなバンドギャップを持つため相対的に高い導電性を示す。(20 °Cで7.7×105 S/m)ビスマスにアンチモンを添加すると、伝導帯のエネルギーが低下し、価電子帯のエネルギーが増加する。アンチモンの濃度が4%のとき、二つのバンドは交差し、ディラック点(伝導帯と価電子帯の交差する点)を形成する[2]。アンチモンの濃度がさらに高くなると、バンドの反転を引き起こし、特定の運動量では価電子帯のエネルギーが伝導帯のエネルギーを上回る。アンチモンの濃度が7%から22%の間では、バンドは交差せず、Bi1−xSbxは反転したバンドを持つ絶縁体となる[6]。このようにアンチモンの濃度が高い場合、表面のバンドギャップが消失し、その結果表面において導電性を示す[2]。
Bi0.4Sb0.6の薄さ150-1350 Åの薄膜が、超伝導性を示す最高温度(臨界温度Tc)は、およそ2 Kである[3]。Bi0.935Sb0.065の単結晶はわずかに高い温度で超伝導性を示し、4.2 Kでは臨界磁場Bc(超伝導体が排除できる最大の磁場)は1.6 Tである[7]。
電子移動度は、電子が半導体中を移動できる速度を表し、半導体についての重要な指標となる。40 Kにおいて、電子移動度は、アンチモンの濃度が0のとき4.9×105 cm2/V·s、7.2%のとき2.4×105 cm2/V·sであり[1]、これは常温で1400 cm2/V·sのケイ素のような他の一般的な半導体と比べて、はるかに高い電子移動度である[8]。
さらに、Bi1−xSbxの重要な指標として、電子に働く力に対する加速度の比である電子の有効質量(EEM)が挙げられる。その値はx = 0.11のとき2×10−3 meであり、x = 0.06.のとき9×10−4 meであり[2]、これは他の一般的な半導体(200 KのSiは1.09、Geは0.55、Gaは0.067)と比べてはるかに低い。低いEEMは、熱光起電力的な応用において有利である。
アンチモン化ビスマスは、常温で様々な熱電素子のn型脚として用いられている。熱電効率は、その性能指数zT = σS2T/λ(Sはゼーベック係数、λは熱伝導率、σは電気伝導率)で表され、素子が吸収する熱に対する熱電効果によって提供されるエネルギーの比を表す。80 Kにおいて、Bi1−xSbxの性能指数はx = 0.15のとき最大で6.5×10−3 K−1に達する[4]。また、80 KにおけるBi0.9Sb0.1のゼーベック係数(側面の温度差に対する両端の電位差の比)は、−140 μV/Kであり、これは純粋のビスマスのゼーベック係数(−50 μV/K)よりもはるかに低い[9]。