殺人の門
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| 殺人の門 | ||
|---|---|---|
| 著者 | 東野圭吾 | |
| 発行日 | 2003年8月25日 | |
| 発行元 | 角川書店 | |
| ジャンル |
ミステリ 心理小説 | |
| 国 |
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| 言語 | 日本語 | |
| 形態 | 四六判 | |
| ページ数 | 448 | |
| 公式サイト | www.kadokawa.co.jp | |
| コード |
ISBN 978-4-04-873487-5 ISBN 978-4-04-371804-7(文庫本) | |
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『殺人の門』(さつじんのもん)は、東野圭吾による日本の小説。人間の心の奥底に潜む「殺意」をテーマに描かれた心理ミステリー。
制作背景
本作の発想は、『白夜行』のアイディアを練り上げていた時期に、並行して別案として生まれたものである[7]。『白夜行』と同様に、主人公の子供時代から大人になるまでの長い時間を描いたが、『白夜行』が主人公の内面を一切描かない方法をとったのに対し、本作では逆に「主人公の内面だけを描く」という手法が選ばれた[7]。その結果、物語には客観的な視点がほとんど存在せず、主人公の思い込みを含めた主観が物語の中心となっている[7]。
物語の核にあるのは、主人公が抱く「殺人への興味」で、理屈ではなく子供が「人を殺すとはどういうことなのか」と考えるような素朴な疑問から出発している[7]。東野は、現代ではこのような疑問がある程度受け入れられやすいものではないかと考え、主人公は臆病な性格でありながら「人は人を殺すものだ」と思いながら成長し、人を殺す人間にどこか憧れのような感情を抱く[7]。東野はこのような感覚は現実にもあり得るものだと考え、その心理を持つ少年像を描こうとした[7]。
物語の中で主人公は、倉持という人物を通じてさまざまなトラブルに巻き込まれていく。倉持は主人公に「世の中とはこういうものだ」と教える存在であり、その経験の中で主人公は「この相手なら殺してもよいのではないか」という感情を育てようとする[7]。一方で同時に、実際には踏み切らずに済む理由も無意識に探している[7]。人間とはそうした矛盾した感情を抱えるものではないか、という考えが作品の背景にある[7]。
単行本化の際、作品を読み返した東野は粗削りな部分が多いと感じたが、その粗削りな部分こそが本作の持つ力であると考え、あえて手を加えずに残すことにした[7]。
あらすじ
田島和幸は、歯科医院を営む家庭に生まれ、比較的裕福な環境で育った少年だった。小学5年のころ、彼は同級生の倉持修と出会う。倉持は豆腐屋の一人息子で、貧しい家庭環境に育ちながらも強い野心と行動力を持つ人物であった。
二人は友人関係を築くが、その出会いを境に和幸の人生は徐々に暗転していく。祖母の死をきっかけに家庭は不和に陥り、両親は離婚。裕福だった生活は崩れ去り、転校先ではいじめにも遭うようになる。こうした人生の転落の節目ごとに、倉持の存在が関わっていた。
和幸が成長して社会に出た後も、倉持は彼の前に現れ続ける。倉持の誘いで就職した会社は実態の怪しい事業を行っており、やがて破綻。和幸は職も信用も失うことになる。さらに倉持は、金銭や人間関係の問題でも和幸を巻き込み、彼の人生を繰り返し破滅へ導いていく。 和幸は次第に倉持への憎悪を募らせ、「この男を殺したい」という強い殺意を抱くようになる。しかし実際に殺人を実行することはできない。
「なぜ自分はこの男を殺すことができないのか」和幸はその疑問に苦しみながら、自分の人生を狂わせ続けた倉持との関係に決着をつけようとする。物語は、殺意を抱きながらも殺人に踏み切れない人間の心理と、憎悪と依存が入り混じった二人の歪んだ関係を描き出していく。
登場人物
主要人物
- 田島和幸(たじま かずゆき)
- 本作の主人公で視点人物。歯科医院を営む裕福な家庭に生まれたが、倉持との出会いをきっかけに人生が大きく狂い始める。
- 倉持に対して強い憎悪を抱きながらも、彼との関係を断ち切れずに苦しむ。
- 倉持修(くらもち おさむ)
- 和幸の幼なじみ。豆腐屋の一人息子で、成り上がることを夢見る野心家。和幸の人生に長年影響を与え続ける。
- 人を惹きつける魅力を持つ一方で、周囲の人間を利用して破滅へ導く危険な人物。
主人公の家族
- 健介
- 和幸の父親。田島歯科医院を営む開業医。愛人問題で離婚後、銀座のホステス・志摩子にのめり込む。
- 志摩子の恋人に襲われた後遺症で歯科医を続けられなくなり、アパート経営にも失敗し、失踪する。
- 峰子
- 和幸の母親。活動的で勝気な女性。歯科医院の経理を担当している。
- 姑をヒ素で毒殺したという噂が広まり家庭が崩壊、夫の愛人問題も重なり離婚する。
- 祖母
- 和幸の父方の祖母。寝たきりで茶室を改造した四畳半程度の離れに暮らす。
- ある日突然亡くなるが毒殺の噂が広まり、田島家に不和を招く。
主人公の周辺人物
小学時代
- トミ
- 田島家の家政婦。出戻り女性で、祖母の介護を目的に雇われている。
- 健介の愛人で、田島家へ出入りしている税理士とも関係を持つ。
- ガンさん
- 川のそばにあるトタン屋根を載せた小さな家に住む、薄汚い半纏に作業着姿の男。
- 賭け五目並べで和幸をカモにして小遣いをつぎ込ませ、金に困らせる。
- 西山
- 田島家の近所に住む医師。健介の麻雀仲間。和幸の祖母の死を確認する。
- ハル
- トミの後に雇われた田島家の家政婦。50歳過ぎ。きちんと仕事をこなすが、給料以上の仕事はしない。
- 志摩子
- 和幸の両親が離婚後、父・健介が入れ込んで金を貢いだ銀座の高級クラブのホステス。
中学時代
- 木原雅輝(きはら まさき)
- 和幸が中学に入って最初にできた友達。隣町の住人で、田島家の忌まわしい噂を知らない。
- 小柄で線が細く、色白で女子と間違われそうな容姿。
- ヤマモト
- 和幸の両親が離婚後、母・節子がアパートで一緒に暮らしていた男性。
- 加藤
- 和幸が転校した中学で、和幸に暴力をふるい執拗にいじめる同級生。
高校時代
- 江尻陽子(えじり ようこ)
- 和幸が想いを寄せる、夏休みの間に公営プールの売店で働く同僚アルバイト。商業高校生の女生徒。
- 小学生の時に父親を胃癌で亡くし、母子家庭育ち。
- 前田
- パチンコ屋の店員。健介の飲み仲間。
- 松戸の叔母
- 健介の親戚。嫁いだ娘が使っていた部屋に、和幸を高校3年から卒業するまで寝泊まりさせる。
重機メーカー勤務時
- 小杉
- 和幸が就職した重機メーカーで、府中にある独身寮で相部屋になった同期。
- ツッパリあがりの男で、何かにケチをつけないと気が済まない性格。ナオコを独身寮に連れ込む。
- 藤田
- 和幸が就職した重機メーカーで同じ班の3つ年上の先輩。和幸に陰湿な嫌がらせをする。
- ナオコ
- 小杉の交際相手。同じ重機メーカーの別工場の同期。江尻陽子とは商業高校のクラスメイトだった。
- 保住浩太朗
- ホズミ・インターナショナル会長。40歳前後。セミナーで宝石の販売ビジネスの会員を募る。
- 津村香苗(つむら かなえ)
- 家事手伝いの女性。役者志望。小杉に誘われた合コンで和幸と出会う。
- 江尻陽子とは商業高校のクラスメイトだった。
- 芝山
- 和幸と同じ独身寮に住む3つ年上の先輩。小杉に誘われた合コンに参加していた。
東西商事勤務時
- 山下
- 東西商事の販売担当部長。30歳くらい。ウェーブのかかった髪をオールバックにする彫りの深い顔立ちの男。
- 「カネが欲しければ、あらゆる無駄を排除して金を売れ」と和幸をセールスマンに採用する。
- 川本房江(かわもと ふさえ)
- 白髪をパーマでまとめた老婦人。独り暮らしのさみしさを倉持につけこまれ、泣き落としに引っ掛かり金を買わされる。
- 宮内公恵(みやうち きみえ)
- 老婦人。73歳。倉持にくじの当選を餌に呼び出す当選商法で騙され、東西商事に連れ出され金を買わされる。
- 牧場喜久夫(まきば きくお)
- 70歳前後の老人。資産があると倉持に見抜かれ、当選商法で東西商事に連れ出され金を買わされる。
- 上原由希子(うえはら ゆきこ)
- 20歳前後の綺麗な顔立ちの女性。ご近所の牧場老人のため、彼の出資金を取り返そうと東西商事に現れる。
- 和幸は彼女に心惹かれるが、牧場老人の出資金を取り返した倉持と交際するようになり、のちに彼の妻となる。
- 石原
- 東西商事のセールスマン。表情の乏しい男性。耳の遠い老婆を騙し印鑑と保険証書を奪い、強引に金を買わせる。
- 黒沢
- 東西商事のセールスレディ。50歳過ぎくらい。変装して耳の遠い老婆になりすまし、生命保険を解約して解約金を金の購入資金に回す。
家具店勤務時
- 関口美晴(せきぐち みはる)
- 上原由希子の高校時代の同級生。目と口の大きい派手な顔立ちの女性。デパートの外商部に勤務。
- 由希子の紹介で和幸は彼女と交際し結婚するが、浪費を重ね和幸の貯金を使いつくし借金まみれにする。
- 寺岡理栄子(てらおか りえこ)
- 水商売をしていると思われる30歳前後の女性。家具店に来店し、照明のアドバイスがほしいと和幸を自宅マンションに招き誘惑する。
- 本田
- 寺岡理栄子の自宅マンションに以前から住んでいた女性。和幸に理栄子という女性は知らないという。
- 中上(なかがみ)
- 倉持が起業した証券コンサルタント会社「チャンスメイク」の幹部。倉持が前職から引き連れてきた男性。
- 新人研修で、会員から預かった投資金は絶対に返さないようにと指導する。
- 松村葉月(まつむら はづき)
- 六本木のクラブ「キュリアス」のホステス。寺岡理栄子こと村岡公子の同僚。
- 関口義正(せきぐち よしまさ)
- 美晴の兄。札幌在住。美晴の浪費癖に家族も苦しめられていたことを和幸に明かす。
- 佐倉洋平(さくら ようへい)
- 経営コンサルタントを名乗る50歳前後の男性。倉持の過去を知る男。
書誌情報
- 単行本:2003年8月25日[1]、角川書店 ISBN 978-4-04-873487-5
- 文庫本:2006年6月24日[2]、角川文庫 ISBN 978-4-04-371804-7
- 新装版:2026年2月25日[3][4]、角川文庫 ISBN 978-4-04-116873-8 (上)、ISBN 978-4-04-116875-2(下)