油棒
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オスーナ公爵夫人は、1783年に「ラ・アルメダ・デ・オスーナ (La Almeda de Osuna) 」として知られたマドリード郊外の地域に「エル・カプリチョ (El Capricho)」というカントリーハウスを建てた[1]。その屋敷の美術品展示用居室 (キャビネット) を装飾するために、夫人はゴヤに7点の連作絵画を依頼したが、それらは田園風景を表すものであった[1][2]。その7点の中には、本作以外に『ブランコ』、『切り石の運搬』[3]、『落馬』、『駅馬車乗っ取り』、『村の行列』、そして『牡牛集め』が含まれていた[1]。ゴヤは、これらの作品の風景の中に「上昇と墜落」の主題を主題を忍ばせている[2]。この連作は田舎の光景を表している点で、エル・パルド王宮内のアストゥリアス公 (後のカルロス4世) 夫妻の食堂を装飾するタピストリー連作のためにゴヤが制作した下絵 (カルトン) と類似している[1]。
連作のほかの作品 (『牡牛集め』以外は個人蔵)
- 『ブランコ』
- 『切り石の運搬』
- 『落馬』
- 『駅馬車乗っ取り』
- 『村の行列』
- 『牡牛集め』 (現在、行方不明)
作品
連作中で、村の広場で行われる棒登り競争の光景を描いた『油棒』は、「上昇と墜落」の主題を暗示的に扱っている一例である。画中で、真ん中あたりまで登った (上昇した) 少年は自分のいる高さに怖気づいており、墜落する危険が示されている[2]。ゴヤは、作品について以下のように記している。
6番。五月柱を表した絵画。村の広場のようなところで、何人かの少年たちが鶏肉とロスカ (リング型のケーキ) の賞品を得るために、その賞品が結わえられている五月柱のてっぺんを目指して登っている。何人かの人々が見ている。対応する風景[1]。
本作は連作中で最も縦長の作品で、五月柱の垂直性に支配されている構図は、縦長の形式に完璧に合致している[1]。柱は画面下部左側から上部右側へと伸び、賞品をめがけて登っている少年たちの重みでしなっている。頂点にある賞品には、赤いリボンが結わえられている。安全な下の地面では、人々が成り行きを見守っている。勇気ある少年たちの棒登りを助けている男たちもいる一方で、農婦の女は心配そうな仕草をして不安を表している。男たちの集団の後ろに半ば隠れて、青い胴着と金色のスカートを纏っている上流階級の婦人の姿も見える。背景の右側には農家が、左側には屋敷があるが、木々の豊かな葉の間にあるその屋敷は、オスーナ公爵夫妻の新古典主義様式の小さなカントリーハウスである[1]。
ゴヤは各人物に個性的なポーズを与えており、それが場面の現実的な雰囲気に貢献している。この場面の余興的な主題にもかかわらず、ゴヤは農民たちの貧困と競合を仄めかしていると提起されてきた。そうした農民の状況は、農家の前にある空っぽの干草車と、農民が食料にありつくために画面に表されているような危険を冒さなけらばならないという事実に反映されている[1]。