ランダム効用モデル
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ランダム効用モデル(ランダムこうようモデル、英: Random utility model, RUM)は、個人の選好を数理的に表現したものであり、選択が決定論的ではなく、確率的な状態変数に依存する場合を考慮した効用を記述するモデルのこと[1][2]。確率効用モデル(英: Stochastic utility model)とも呼ばれる[3]。
古典的経済学における基本的な仮定は、合理的な個人の選択は選好関係によって導かれるというものであり、通常は効用関数によって記述できるとされる。複数の選択肢が提示されたとき、合理的な個人は効用が最大となるものを選ぶ。効用関数自体は観測できないが、その人が実際に行った選択を観察することで「逆算」できると考えられる。これが顕示選好理論の目的である[要出典]。
しかし現実には、人々の行動は必ずしも合理的ではない。同じ選択肢集合に直面しても、異なる選択を行うことが多くの実証研究で示されている[4][5][6][7][8]。外部の観察者からすると、選択はランダムに見えるかもしれない。
この行動をモデル化する方法の1つが「確率的合理性(stochastic rationality)」である。各主体には観測されない「状態」があり、それは確率変数と考えられる。この状態が与えられると主体は合理的に行動する。言い換えると、各主体は単一の選好関係ではなく、選好関係(または効用関数)の確率分布を持つと仮定する[要出典]。
表現問題
H・D・ブロックとジェイコブ・マーシャックは次の問題を提示した[9]。インプットとして、選択肢集合Bからaを選ぶ確率を表す「選択確率」 が与えられているとする。エージェントの行動を、選好関係に関する確率分布で「合理化」したい。すなわち、与えられたすべての組 について、 = Prob[aがB内のすべての選択肢に少なくとも弱く選好される] を満たす分布を求めたい。このような分布の存在を保証する条件は何か[要出典]。
ジャン=クロード・ファルマーニュは、選択肢集合が有限の場合にこの問題を解決した[10]。選択確率から導かれる「Block–Marschak多項式」が非負である場合に限って確率分布が存在することを証明し、その構成的な解を示した。
BarberáとPattanaik[11] は、この結果を、エージェントが単一の選択肢だけでなく集合を選ぶ場合にも拡張した。
一意性
H・D・ブロックとジェイコブ・マーシャックは、選択肢が3つ以下の場合、ランダム効用モデルは一意(識別可能)であると証明した[9]。しかし、4つ以上の選択肢があると、モデルは一意でない可能性がある[11]。例えば、ある主体がwをxより好む確率(w>x)と y を z より好む確率(y>z)は計算できても、w>x かつ y>z である確率は求められない場合がある[12]。同じ選択確率集合を誘導するが、互いに素な台を持つ分布さえ存在する。
一意性の条件のいくつかはジャン=クロード・ファルマーニュによって与えられている[10]。Turansick[13] は、一意なランダム効用表現が存在するための二つの特徴付けを提示している。
モデル
社会的選択への応用
RUMは、単一の主体の行動をモデル化するだけでなく、社会全体の意思決定にも利用できる[23]。社会選択理論のアプローチの1つは、コンドルセの陪審定理に初めて形式化されたように「真の順序(ground truth)」が存在するというものである。社会の各エージェントは、この真の順位に対するノイズのあるシグナルを受け取る。最良の推定法は最尤推定を用いて、個人の順位集合の尤度を最大化する社会的順位を構築することである。
コンドルセのモデルは、エージェントのペアごとの比較における誤りの確率が独立同分布であると仮定している(誤りの確率はすべてp)。しかし、このモデルにはいくつかの問題がある。
- 表明された選好の強さを無視する。「aをbより強く好む」場合と「わずかに好む」場合が同一に扱われる。
- 選好の循環を許容する。すなわち、a>b, b>c, c>a という確率が正である。
- 最尤推定量(ケメニー法)は計算が困難であり、-完全である[24]。
RUM は代替モデルを提供する。すなわち、真の効用ベクトルが存在し、各エージェントは各選択肢に対して確率分布に基づく効用を引き、その平均値は真の効用となる。このモデルは選好の強さを捉え、選好の循環を排除する。また、ある種の確率分布(特にブラッドリー=テリー・モデル)の場合、最尤推定量は効率的に計算できる[要出典]。