多属性効用
From Wikipedia, the free encyclopedia
ある人が二つ以上の選択肢の中から決定を行う必要があるとする。この決定は、選択肢が持つ「属性」に基づいて行われる。最も単純な場合は属性が一つだけ、例えば「金銭」である。このとき、多くの人は「お金は多い方がよい」と考えるので、問題は単純である。より多くの金額を与える選択肢を選べばよい。しかし、現実には属性は二つ以上ある。例えば、月給12,000ドルと20日の休暇を与える職(選択肢A)と、月給15,000ドルだが休暇は10日しかない職(選択肢B)を比較する場合、決定は(12K,20)と(15K,10)の二つの組み合わせの間でなされる。このとき人々の選好は異なるかもしれない。一定の条件の下では、選好を数値関数で表すことができる。序数的効用の記事は、このような関数の性質や計算方法の一部を説明している。
もう一つの要因は「不確実性」である。少なくとも4つの不確実性の源泉(属性の結果自体や、意思決定者が持つ個々の属性効用関数の形状、重み定数の値、属性効用関数が加法的かどうか)があるが、ここでは「属性レベルのランダム性」に限定する。不確実性は単一属性の場合でも生じる。例えば、選択肢Aが「50%の確率で2ドルを得るくじ」、選択肢Bが「確実に1ドルを得る」ならば、決定は〈2:0.5〉と〈1:1〉の間で行われる。一定の条件下で選好は数値関数で表せ、そのような関数は基数的効用と呼ばれる。フォン・ノイマン=モルゲンシュテルンの効用定理では、基数的効用の算定方法が示されている。
さらに一般的な状況は「複数の属性」と「不確実性」の両方が存在する場合である。例えば、選択肢Aが「50%の確率でリンゴ2個とバナナ2本、50%の確率で何も得ない」くじで、選択肢Bが「確実にバナナ2本を得る」場合、決定は〈(2,2):(0.5,0.5)〉と〈(2,0):(1,0)〉の間で行われる。このとき選好は複数変数の基数的効用で表せる[1]:26–27。
目標は、バンドルの宝くじに対する選好を表す効用関数 を求めることである。すなわち、宝くじAがBより好ましいのは、Aにおける の期待値がBのそれより大きい場合に限られる。
多属性基数効用関数の評価
可能なバンドルの数が有限であれば、u はフォン・ノイマン=モルゲンシュテルンの効用定理の手順で直接構成できる。すなわち、最も好ましくないものから最も好ましいものへとバンドルを順序づけ、前者に効用0、後者に効用1を与え、その中間の各バンドルには、それと等価な宝くじの確率に等しい効用を割り当てる[1]:222–223。
可能なバンドルが無限にある場合の一つの方法は、まずランダム性を無視し、確実な バンドルに対する個人の効用を表す序数的効用関数 を評価することである。すなわち、バンドルxがバンドルyより好ましいのは、関数 がxに対してyより大きい値をとる場合に限られる。
この関数は事実上、多属性問題を単一属性問題へと変換する。すなわち属性は である。そしてフォン・ノイマン=モルゲンシュテルンの効用定理を用いて関数 を構成できる[1]:219–220。
なお、uはvの正の単調変換でなければならない。すなわち、単調増加関数 が存在して、
が成り立つ。この方法の問題は、関数rを評価するのが容易でない点にある。単一属性の基数効用を VNM で評価する際には、「2ドルを得る宝くじと1ドル確実のどちらが等価か。そのときの確率はいくつか」といった質問を行う。しかしrを評価するには、「価値2単位を得る宝くじと価値1単位確実のどちらが等価か。そのときの確率はいくつか」といった質問をしなければならず、これは「価値」という抽象量を伴うため前者よりはるかに難しい。
一つの解決策は、各属性ごとに一次元の基数効用関数を計算することである。例えば二つの属性、リンゴ()とバナナ()があり、いずれも0から99の範囲をとるとする。VNM を用いれば、次の一次元効用を評価できる。
- — バナナが0のときのリンゴに関する基数効用(定義域の南端境界)。
- — リンゴが最大(99)のときのバナナに関する基数効用(東端境界)。
線形変換を用いて、両者が点 (99,0) で同じ値をとるようにスケールを合わせる。そのうえで、任意のバンドル について、同じ v を与える等価バンドルで、形が あるいは のいずれかになるものを見つけ、その効用を同じ数値に設定する[1]:221–222。
しばしば、属性間のある種の「独立性」性質を用いると、効用関数の構成を容易にできる。いくつかの独立性の概念については、以下で述べる。