エンゲル曲線

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エンゲル曲線(エンゲルきょくせん、: Engel curve)とは、特定の財やサービスに対する家計支出が世帯所得に応じてどのように変化するかを記述するものである[1][2]。エンゲル曲線には2種類あり、ひとつは予算シェア・エンゲル曲線で、特定の財に対する所得比支出割合が所得に応じてどう変化するかを示す。もうひとつは実支出エンゲル曲線で、実際の支出額が世帯所得とともにどう変化するかを示すものである。名称はドイツの統計学者エルンスト・エンゲル(1821–1896)に由来し、彼は1857年に財支出と所得の関係を体系的に調査した最初の人物である。この研究から最もよく知られる結果がエンゲルの法則であり、所得が増加すると食料に対する支出の所得比は低下する、すなわち家計や国家の食料支出比率はその豊かさの指標になるというものである。

エンゲル曲線:需要の所得弾力性(YED)を示す図。正常財(赤=奢侈財、黄=必需財)、完全に非弾力的な財(緑)、劣等財(青)。

エンゲル曲線の形状は人口統計的特徴や消費者特性によって異なる。ある財のエンゲル曲線はその所得弾力性を反映し、その財が劣等財、正常財、あるいは奢侈財かを示す。実証的には直線に近いものもあれば、高度に非線形なものもある。

  • 正常財のエンゲル曲線は右上がり(正の傾き)である。所得が増えると需要量も増える。ただし、必需品ではX軸に近づく形状をとり、奢侈財ではY軸に近づく形状をとる。
  • 劣等財のエンゲル曲線は右下がり(負の傾き)である。所得が増えると、より良い財を購入できるため、その需要は減少する。
  • ゴーマン極形式の効用関数から導かれるマーシャル需要関数を持つ財の場合、エンゲル曲線は直線になる。

多くのエンゲル曲線には飽和特性があり、高所得レベルでは傾きが無限大に近づく。これは支出増加に絶対的限界が存在することを示唆する[3]。これは需要成長の鈍化をもたらし、経済の産業構造変化につながることが指摘されている[4]

その他の性質

複数のエンゲル曲線を考えるとき、「加法定理」により、各財の支出弾力性に対応する予算シェアを重みとして合計すると1になる。このため、全財で飽和特性が一般的に成立することはない[5]

一方で、すべての財に上限の飽和水準が存在すると主張する研究者もいる[4][6]

応用

エンゲル曲線は、等価尺度計算や厚生比較、需要体系の集計可能性や階数の特定に用いられる。また、経済成長に伴う産業構成の変化と家計需要構成の変化の関連研究にも使われる[7]。さらに、リンダー仮説に基づく国際貿易理論の検証や、インフレ測定[8]、税制設計[9]などに応用される。

加えて、農民の厚生や食料消費の比較[10]や生活費推計[11]、消費多様性の厚生効果[12]の分析など、多岐にわたる。さらに、アウトドア余暇の奢侈性の判定[13]や、消費者物価指数の高齢者偏差推計[14]なども行われている。

問題点

脚注

さらなる文献

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