疑惑 (松本清張の短編小説)
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江戸城大奥の雑事方を務める伊田縫之助は、美しい妻の瑠美と同役の浜村源兵衛との間に疑惑を持つようになった。源兵衛はその妻を喪って以来、縫之助の屋敷にたびたび遊びにくるようになり、縫之助の養父の三右衛門や瑠美が話相手になっていた。源兵衛が瑠美に馴れ馴れし過ぎるのが気にいらない縫之助だったが、立派な夫と思われたい縫之助は、瑠美から嫉妬に燃える下卑な男と軽蔑されるのを恐れ、怒ることができない。
自分に辛く当たるようになった三右衛門は、瑠美を本当は幼友達の源兵衛と娶せたかったのではあるまいかと、執拗な想像に苦しむ中、1863年、勤務中に源兵衛が途中で帰ったと聞いた縫之助は、瑠美のもとへ向かったのではないかと心が騒ぎ、名目を偽って勤務から抜け出すが、その間に江戸城で大火が発生し炎上[注釈 2]、無断で部署を離れていた科で縫之助は入牢、切腹を待つ身となる。
この間に瑠美が源兵衛のものになると、入牢中も苦痛に呻く縫之助であったが、牢内に居た浪人の倉垣平馬から、脱獄への加担を持ちかけられる。