幻華 (松本清張)
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銀座を放浪して三十年の小寺伍助は、映画プロデューサーの森園忠郎と銀座八丁目で邂逅し、一世を風靡したクラブ「ブルーボネー」の近況が話題に出る。しばらくぶりに再訪したブルーボネーは閑古鳥が啼き、ママの鳥井香津子は酒乱になっていた。
ブルーボネーは北陸の小さな町から上京した香津子が、教養ある紳士の社交場として店を持ち、財界や政界のトップに加えて文化人も一堂に集まる、銀座を代表する高級サロンとなった。関西から春子の運営する「クラブ・小春」が銀座に進出すると、香津子は小春に乗り込んで火花を散らし、うち負かしたことで絶頂となる。しかし情勢は変わり、客層は変化、高貴なエリート客の集団は散じ、芸術家・文士を厚遇したブルーボネーは、時代に対応し得ない営業方針で次第にとり残され、衰微していった。ブルーボネーにホステスとして勤めていた狩野富子、生駒桐子、片山泰子はそれぞれひとり立ちし、社用族向けの気易いクラブを持ち成功しているが、もう六年も七年もブルーボネーをのぞこうともしない。
伍助は三人のママを説得し、香津子を元気づけるためにパーティを開こうとする。しかし、Rホテルで催した開店三十周年記念パーティは盛大に開かれるも、内容は主役の香津子がかすんでしまい、ブルーボネー出身の三ママが跳梁、時代の変遷、客層の変化をまざまざと見せつけられ、大失敗に終わる。
一か月後、香津子は、伍助たちが企画した内輪の祝賀会のステージで、万雷の拍手に囲まれ、最高の幸福感に包まれる。
主な登場人物
- 鳥井香津子
- 銀座で一世を風靡した老舗クラブ「ブルーボネー」のママ。上背が高く大柄。北陸の出身。
- 小寺伍助
- 小寺誠心堂製薬の会長。会長は名ばかりで隠居同様、夜の銀座を彷徨している。67歳。
- 森園忠郎
- 東邦映画の常務でプロデューサー。
- 春子
- 北新地から銀座に乗り込んできた「クラブ・小春」のママ。京美人。
- 狩野富子
- クラブ「サンレモ」のママ。「ブルーボネー」出身。
- 生駒桐子
- クラブ「マルジュ」のママ。「ブルーボネー」出身。
- 片山泰子
- クラブ「サボア」のママ。「ブルーボネー」出身。
- 多田秀平
- 極東生命保険の会長。かつての香津子の最大のパトロン。
- 小栗芳子
- 「ブルーボネー」の現マネージャー。