水の炎

松本清張の小説 From Wikipedia, the free encyclopedia

水の炎』(みずのほのお)は、松本清張の長編小説。恵まれた環境で生きてきた女性が、生活の危機を経て、自分の生きる道を選びとってゆく、心の遍歴を描く長編ロマン。『女性自身』に連載され(1962年1月1日号 - 1962年12月17日号)、1963年7月に光文社カッパ・ノベルス)から刊行された。

日本の旗 日本
言語 日本語
ジャンル 長編小説
概要 水の炎, 作者 ...
水の炎
主人公の故郷となる伊豆長岡温泉周辺
主人公の故郷となる伊豆長岡温泉周辺
作者 松本清張
日本の旗 日本
言語 日本語
ジャンル 長編小説
発表形態 雑誌連載
初出情報
初出女性自身1962年1月1日 - 12月17日
出版元 光文社
挿絵 生沢朗
刊本情報
刊行 『水の炎』
出版元 光文社
出版年月日 1963年7月20日
装幀 伊藤憲治
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1964年1971年1976年にテレビドラマ化されている。

あらすじ

専業主婦の塩川信子は、銀行常務の夫・塩川弘治との間に心の距離が生じていた。満たされないものを感じつつ、信子は今の生活にないものを求め、大学の通信課程で学んでいたが、夏季のスクーリングで、担当教師の大学助教授・浅野忠夫と出会う。

卒論の相談を受けたことから、信子にもっと接近したい気持ちが動いた忠夫は、勇気をおこし、信子に贈り物を贈る。信子はプレゼントを送り返そうとするが、忠夫と信子の間を訝しんだ弘治は、結婚を迫られていた愛人の成沢枝理子を使い、探りを入れる。

弘治の工作に感づき、このままの夫婦でいいのだろうかと悩む信子は、一人になって自分を回復しようと、甲州方面へ旅に出る。一方、燃え上がっていた忠夫は、信子の家出を知って追うように旅に出、甲府の湯村温泉に着き、学生時代の後輩の下村永一の伝手から信子に接近しようとする。

弘治は、顧客の徳山岩雄の山梨県方面の観光開発事業への出資を足掛かりに、私鉄界に君臨する是土慶次郎との繋がりを持てるチャンスと、野心を抱いていた。伊豆長岡にある信子の実家に赴いた弘治は、信子の父に、開発事業への巨額の出資をさせようとする。信子の両親は、娘の信子の家庭を心配しつつ、婿の出資の求めに応じてしまう。

決心をつけた信子は、実家に行き、両親に離婚話を切り出すが、旧い家の両親は不賛成であった。東京に戻った信子は、自分の実家から大金を借りようとするのをやめるよう弘治に訴えたものの、事業に口を出すな、毎日遊んでいるくせにと弘治は言い、信子を従わせようとする。

是土慶次郎との対面を果たし、胸をときめかせる弘治は、枝理子を利用し、信子と忠夫の密会証拠を偽造、信子の不貞を離婚の口実にしようと計画を進める。しかし、塩川夫妻がうまくいっていないことに気づいた徳山は、策略をめぐらせはじめる。忠夫との接触を断っていた信子のもとに、電話が入り、信子は危機に立たされる。

「信子は美人で頭脳がよくてセンスがあって学問が好きで、お金持ちのご両親の家からお金持ちの旦那さんの所に嫁った。はたから見ればこれほど仕合わせなひともないだろうけど、あたしは信子が仕合わせだと思ったことは一度もないよ」。親友の言葉にかけがえのない友情を感じた信子は、自分の新しい人生を歩みはじめる。

主な登場人物

  • 原作における設定を記述。
塩川信子
裕福な家庭に育ち、知的でエレガントな雰囲気を持つ本作の主人公。T塾大を卒業後、銀行の御曹司と結婚、専業主婦となり、周囲からは幸せな女性と思われているが、夫の弘治に失望している。鷺宮に住む。
塩川弘治
信子の夫で、東都相互銀行の若手常務。銀行設立の功労者・塩川弘道の御曹司。仕事の腕も切れると評判だが、保守的な社風に満足できず、さらなる野心を抱いている。妻の信子は利口すぎて、息が詰まりそうだと思っている。
浅野忠夫
L大学経済学部助教授。これまで女性関係に縁がなく、学問一途で過ごしてきた。同居する母親の紹介で婚約者を持つが、心が乗らず、信子にアプローチをかけはじめる。
成沢枝理子
塩川弘治の大阪勤務時代以来の愛人で、弘治との結婚を望んでいる。高台の白い柵の家に住む。学問に関心を持つ信子はただの気取りとしか考えられないと思っている。
徳山岩雄
塩川弘治の顧客で、オリエント観光の専務。是土コンツェルンに接近、山梨県と東京を結ぶ高架鉄道を敷設し、観光開発計画で利益を得ようと図っている。
下村永一
オリエント観光甲府出張所の駐在員。浅野忠夫の学生時代の後輩。
青木澄子
塩川家の若いお手伝い。
平野平四郎
伊豆長岡温泉の大型高級旅館「平野屋」の経営者。塩川信子の父。女は家庭にいてこそ安全なのだと言い、信子の離婚話に反対する。
平野政子
塩川信子の母。お父さんも一時期ずいぶんわたしを苦しめたことがあると信子に語る。
草間泰子
浅野忠夫の婚約者。秘書課に勤務しながら、L大学経済学部のスクーリングに参加する。
是土慶次郎
私鉄界に君臨し、運輸、デパート、ホテル、土地関係などの傘下企業を統括する、是土コンツェルンの会長。箱根・伊豆方面の開発でも評判。
宮川
是土慶次郎の直系の腹心の一人で、片腕といわれる常務。
川田美代
信子の学生時代からの親友。メーカー勤めだが、収入の少ない生活に甘んじていると信子には映る。

エピソード

  • 本作連載開始の前年、1961年2月に発表したエッセイにおいて著者は「去年の夏のことだ。私は高野山の涼しさを楽しみにして、東京博物館主催の夏季大学に出かけた」「炎天のなか、鈴鹿市を振り出しに、松阪尾鷲の各市を今度は三重県主催の夏季大学の講師として回った」「そのついでに、話に聞いていた紀勢線を乗ってみたくて、わざわざ潮岬まで足を伸ばした」と記している[1]
  • 森村誠一は、俳人の横山白虹から「松本清張に紹介してやろう」と言われて清張邸に行ったが、目を向けても反応がなく、これでは訪問した意味がないと思い「『水の炎』という作品だったと思うのですが、その作品の中で、清張さんのホテルの描写にミスがあると申し上げましたところ[注釈 1]、それまで白虹先生とばかり話をしていた清張さんが、初めて私の方に目を向けて、あの眼鏡の底から目をすえまして、「どこがどう間違っているか言ってみたまえ」と聞かれました」。森村が説明すると「今度は完全に私の方に向き直って「フロントのシステムはどうなっているか」と聞かれ、奥様にペンとノートを持ってこさせて五分の予定が二時間弱に。微に入り細を穿って質問されました。そのとき清張さんの取材の姿勢に圧倒されました」と述べている[2]

関連項目

  • 常磐ホテル - 湯村温泉にある旅館。小説中では「滝和(たきわ)ホテル」。清張が『波の塔』の一部を執筆した部屋が現存する。
  • 堤康次郎 - 是土慶次郎のモデル。西武グループの創業者で、伊豆・箱根・軽井沢等の観光開発でも著名。

テレビドラマ

1964年版

1964年1月20日から4月18日まで(13:20-13:35→13:15-13:30)、日本テレビ系列にて全78回の連続ドラマとして放送。

キャスト
スタッフ
さらに見る 日本テレビ系 月~土13:20 - 13:35枠, 前番組 ...
日本テレビ 月~土13:20 - 13:35枠
前番組 番組名 次番組
いつの日その胸に
水の炎
(1964年1月~3月)
水の炎
(13:15 - 13:30)
月-健康増進時代
火-きものに生きる
水-お茶の間試写室
木-育児テスト
金-奥様こんにちは
(以上13:30 - 13:45)
土-土曜プレゼント
(13:30 - 14:30)
『土プレ』以外は全て15分繰上げ
日本テレビ系 月~土13:15 - 13:30枠
夜は新しく
(13:00 - 13:20)
水の炎
(13:20 - 13:35)
水の炎
(1964年4月)
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1971年版

1971年4月5日[3][4]から同年7月2日まで[5]TBS系列の「CBC制作昼の連続ドラマ」(13:45-14:00)最初の作品として放送。全65回。カラー放送[3][5]

キャスト
スタッフ
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中部日本放送制作 昼ドラマ
前番組 番組名 次番組
-
水の炎
(1971.4.5 - 7.2)
紬の女
(1971.7.5 - 10.1)
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1976年版

概要 水の炎, ジャンル ...
水の炎
ジャンル テレビドラマ
原作 松本清張『水の炎』
脚本 星川清司
演出 鈴木晴之
出演者 三ツ矢歌子ほか
製作
制作 毎日放送
放送
放送国・地域日本の旗 日本
放送期間1976年7月5日 - 10月29日
放送時間13:30 - 13:45
放送枠妻そして女シリーズ
回数85
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1976年7月5日から10月29日まで、毎日放送制作・TBS系列の「妻そして女シリーズ」枠(13:30-13:45)にて全85回の連続ドラマとして放送。

キャスト
スタッフ
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毎日放送制作 妻そして女シリーズ
前番組 番組名 次番組
女の報酬
(1976.3.1 - 7.2)
水の炎
(1976.7.5 - 10.29)
女の運命
(1976.11.1 - 1977.3.11)
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脚注

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