旅芸人 (ゴヤの絵画)
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| スペイン語: Cómicos ambulantes 英語: The Travelling Comedians | |
| 作者 | フランシスコ・デ・ゴヤ |
|---|---|
| 製作年 | 1793年 |
| 種類 | 銅板上に油彩 |
| 寸法 | 42.6 cm × 31.8 cm (16.8 in × 12.5 in) |
| 所蔵 | プラド美術館、マドリード |
『旅芸人』(たびげいにん、西: Cómicos ambulantes, 英: The Travelling Comedians)は、18-19世紀のスペインの巨匠フランシスコ・デ・ゴヤが1793年に銅板上に油彩で制作した絵画である。画家がカディスに滞在していた1793-1794年に描いた12点の連作に含まれていた[1][2][3]。1962年にスペイン国家により購入され、現在、マドリードのプラド美術館に所蔵されている[1][2][3]。
1792年に、ゴヤはマドリードを離れ、カディスにいた友人セバスティアン・マルティネス (『セバスティアン・マルティネス・イ・ペレス』を参照) のもとに向かった。ゴヤは、完全に聴覚を失うこととなった原因不明の病気の療養のためにマルティネスの家に滞在したのである[2]。その間、画家は一連の12点の小品の絵画を制作し、1794年1月に王立サン・フェルナンド美術アカデミーに提出した[1][2][3]。
連作の絵画はすべて銅板に描かれ、ほぼ同じ大きさである[2]。これらの絵画は委嘱によるものではないため、ゴヤが自身の想像力を自由に表現したものとなっている。実際、彼は、「気まぐれや創造力が限られる委嘱作品においては、あまりすることのない観察ができた」と述べている[2]。
ゴヤは、連作絵画12点のうち7点に「国民の娯楽」という題名を与えている[1][2]。そのうち6点はすべて闘牛を主題としており[1][3]、本作『旅芸人』はいわば「前座」のような位置づけと考えられる[3]。
作品
連作の作品は上述のように銅板上に描かれており、銅板の暗赤色の地にピンク色っぽい下塗りを施している。ゴヤが仕上げをしていない絵画の部分からところどころ、その下塗りが透けて見えているが、本作ではゴヤが最初に鉛筆で下描きをした痕跡がはっきりと視認できる[2]。
画面には、仮設舞台と木の枝に結びつけられたテントが配されている。舞台の床には、時計盤や運命の車輪を想起させる同心円の文様が見て取れる[3]。後景の低い位置には観客が詰めかけている。前景左側の3つの仮面の下には、「Aleg. Men.」と読めるポスターが見えるが、これは、古代ギリシアの風刺的、道徳的喜劇の作家メナンドロス (紀元前342年-292年) の寓意 (Alegoría Menandrea) を表したものだと考えられている[1][2]。あるいは、人生の変化と不安定さを表す哲学を生んだ古代ギリシアの風刺作家メニッポス (紀元前3世紀) の寓意 (Alegoría Menipea) を表しているのかもしれない[1]。
即興劇が演じられている場面の主役は、コンメディア・デッラルテ (イタリア喜劇) の登場人物のコロンビーナ (中央)、彼女の左隣のピエロ、そして印象的な白い鬘を被っているブルジョワのパンタローネである[2]。これら3人の左側にはアルレッキーノがいる。彼は観客に語りかけつつ、頭上にワインの瓶を載せ、手で3つのカップのバランスをとっている[2][3]が、その仕草は3人の間の恋愛関係の不安定さを象徴する。画面中央前景には、踊りながら、ワインの瓶とグラスを掲げている小人の姿も見える。彼は酩酊しており、同心円の上を千鳥足で歩いている[3]。
この絵画は、マヌエル・デ・ゴドイ、王妃マリア・ルイサ・デ・パルマ、そしてカルロス4世の間に存在した恋愛の三角関係を暗示したものと解釈されてきた。研究者トムリンソン (Tomlinson) は、1793年にとりわけ熱烈になった王妃とゴドイの関係に関するうわさがゴヤの絵画に象徴的意味合いを与えたと考えている。しかし、トムリンソンはまた、こうした暗示が本作の根本的な主題をなしているのではなく、単に曖昧な印象を作品に生んでいるにすぎないと指摘する[2]。
アルレッキーノと小人は不安定なポーズで表されているが、それによって暗示される転落、あるいは破局という主題は、12点の連作全体を通じて、次第に悲劇的で陰鬱な調子を強めながら展開する。浮かび上がってくるのは、人間が時間の流れの中で遭遇する墜落の宿命である。闘牛を主題とした6点は、闘牛場で演じられる祝祭的側面と同時に、馬が斃れたり、ピカドール (馬上の闘牛士) が命を落としたりする場面が提示されている。さらに、連作の残りの5点は、「人間の破滅的状況」 (盗賊の襲撃、火災、難破) と「自由を剥奪された人間の死」 (牢獄、精神病院) を主題としているのである[4]。